実は手軽な和紙の壁

壁に和紙を貼る なんて言うと、超高級品のようなイメージがあります。
たしかに、手漉き和紙を袋貼りという方法で貼っていくと、とんでもない金額になってしまいます。
でも私が設計する家のほとんどは、壁に和紙を貼っています。もちろん、そんな高級品ではありません。

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通常「クロス」と呼ばれる壁紙は、クロス=布でもなければ紙でもありません。ほとんどの場合が塩ビなどのビニール系の材料です。
実は、よく使われる木目のフローリングも「ウレタン」でガッツリ塗装してありますから、足に触っているのは木ではなくウレタンです。

せっかく家を建てるのに、足に触れるのはウレタン、目に入るのは塩ビ・・・・
なんか悲しいです。

そこで目を付けたのが、和紙です。
和紙を壁紙として貼れないか、と考えたのです。

撮影:平野和司
古民家再生で使った例です。

通常の「クロス」は幅90センチあまり、長さ50mがロール状になっています。
それを、クロス屋さんが糊付け機にセットして、それから貼るわけです。
(下の写真の左が糊付け機、右が貼っているところです。)
ですから、和紙といえども「クロス」と同じ形状になっていれば、簡単に貼ることができるはずです。

すると、あるんです。
それなりに大量生産されて、クロスと同じように扱えるようになった和紙が。
いくつかメーカーはあるようですが、私が使っているのは高知県いの町の「土佐わがみ」というところのものです。工場へも何度も見学に行きました。

こーんな大きな機械で紙漉きをしていますが、案外原始的だったりもします。
作り方は、こちらの会社のホームページに詳しく出ていますので、ぜひ見てみて下さい。

私より年上の人は、ガリ版をご存じでしょう。
半透明の原紙に千枚通しのような鉄筆で文字を書いていきます。コピーが普及していなかった時代は、これで印刷をしていました。
そのガリ版(謄写版)の原紙を作っていたのが、この会社なのです。原紙はごく薄い2枚の和紙を貼り合わせてできています。2枚貼り合わせる工程が、実は壁紙と同じなので応用したということだそうです。

和紙を壁や天井に貼った実例をいくつか並べておきます。

撮影:平野和司

子ども部屋です。柔らかな印象が一番マッチする場所です。

撮影:平野和司

廊下もOK。味気ない空間になりがちなので、あえて使ってみました。

撮影:平野和司

少し気をつければ、玄関でも使えます。正面にビニールコーティングが無いので、水がかからないようにだけは配慮が必要です。
正面のステンドグラスとも相性が良いですね。

撮影:平野和司

1階のダイニングです。ここで気をつけたいのは、防火性能です。
紙=燃える というイメージが強いですが、ビニールより防火性が高いこともあります。ただ、国の認定をとるためには高い認定料が必要なので、零細メーカーは認定をとっていません。
ですので、この写真のようにキッチンが区切られている場合はいいのですが、完全にオープンのアイランドキッチンのLDKなどでは使えないことがあります。

漆喰もいいですが、個人的には和紙が一番好きです。お値段も、通常のクロスよりちょっと上くらいで、自然素材としてはリーズナブルです。

元々は草や木だった和紙。やはり木の家には似合います。

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国産の木の家に魅入られた建築家です。設計デザインだけでなく、構造計算から木の産地への案内まで、木の家に関することはオールインワンでやってます。

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