
意外にカンタン!自宅でおいしく乳酸菌が摂れる、ぬか床の作り方
発酵食品のなかでも最近注目を集めているのが、日本の伝統食である「ぬか漬け」。興味はあるけれど、いざ始めるとなるとハードルが高い……という人のために、ぬか床の作り方をプロに聞いてきました♪
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実はアバウトでいい! ぬか床の作り方って?
取材したのは千葉県船橋市にある漬け物専門店の佐々木社長。10代の頃から漬け物に関わってきたという佐々木さんは、80歳代とは思えないほどお肌ツヤツヤ。毎日ぬか漬けを食べて、年間10日ほどしか休みがなくても毎日元気いっぱいだそうです。
「身体にいいぬか漬けを、次の世代に伝えたい」という強い思いを抱いている佐々木さんに、ぬか床の作り方を教えていただきました。
<用意するもの>※ぬか床 約3キロ分
・生ぬか
お米屋さんで譲ってもらうか買うのがベスト。1kg50円程度からわけてもらえます。自宅用なら1kg用意すれば充分です。
・塩
ぬかの1割から1.5割の量。食塩よりも岩塩などミネラル豊富なものがおすすめだそうです。佐々木漬物店では岩塩を1kg500円で販売しています
・水
水道水ではなく、湯冷ましなど、塩素がふくまれていないもの。ミネラルウォーターもいいそうです。
・切り昆布
ひとつまみ。切ってなくてもよいそうです。
・唐辛子
ひとつまみ。種ごとでもOK。
・容器
今回は100均で購入した大きめのタッパーを持参しました。混ぜることを考えると、5リットルくらい入る容器がおすすめです。高さがあるもののほうが食材を漬けやすいそうです。
<作り方>
1.ぬかを容器に入れる
佐々木さんはざくっと全部入れましたが、初心者は調整用にぬかを少し取っておいたほうがよいそうです。入れたら手で全体をざっくりかき混ぜます。
2.唐辛子、切り昆布を適当にパラパラ入れる
表面にバラバラと散る程度に唐辛子と切り昆布をまぶし、手で全体に行き渡らせます。水を入れる前のほうが混ぜやすいのだとか。
3.塩を入れる
塩を入れて手で混ぜます。1kgぬかに対して100~150gが目安ですが、「入れたらちょっとなめて、好きな塩加減に変えて」と佐々木さん。自分好みでアレンジすることで、家庭それぞれの味ができていくんですね。
4.水を入れる
水を入れます。水道水は含まれている塩素で乳酸菌が死滅してしまうのでNGだそう。ぬかに含まれている水分量によって変わるので、分量ははっきりいえないそうです。(※取材後に自宅で再現してみると、ぬかカップ1杯に対して、水はカップ2杯くらいでした)
5.全体を手で混ぜ、固さを調整する
水を入れたら全体を混ぜて、ぬか床の固さを調整します。固さは自分の好みでいいそうですが、ボソボソとした状態はNG。空気が混ざってしまっているため、腐敗菌が入って発酵しなくなってしまうそうです。固さは耳たぶくらいがベスト。
「これなら漬けられるな、っていうくらいに調整してください」と佐々木さん。固すぎる場合は水を、柔らかすぎるかなと思ったら、ぬかを少しずつ足しながら調整します。ちょっとなめて味を見るのもいいそうです。
6.表面をならす
ぬか床の表面を手のひらでなめらかにならします。佐々木さんのぬか床は表面をならしてうっすら水がしみ出るか出ないかぐらい。底なし沼みたいな感じと言えば伝わるでしょうか。「好みによって自分で感覚をつかんでほしい。水の量が多くても少なくても、それなりにうまくいきますから」と佐々木さん。
7.発酵させる
仕込んだぬか床は、密封せずに軽くフタをして、そのまま風通しのいい室内に置いておきます。直射日光を避けて、寒い季節は暖かいところ、暑い時期は涼しいところ。おすすめの温度は人間が快適だと感じる24℃くらいだそうです。
「混ぜなくていいの?」と思いがちですが乳酸菌を増やすためにはかき混ぜないほうがいいそうです。夏場は2~3日、冬場は1週間から10日おき、表面に白いカビのような産膜酵母が出てきたら、ぬか内部に乳酸菌が増えてきた証拠。ここではじめてかき混ぜます。「白い部分は酵母菌なので混ぜ込んでください」。
ぬか床作り成功のコツはこちら!
「発酵するとぬか床の味がしょっぱいから酸っぱいへ変わります。その変化を自分で確認することが大事」と佐々木さんは言います。発酵したぬか床はきれいな黄色、決して不快ではない、ぬか漬けの匂いがします。今回は、作り方のコツも伝授いただきました。
・冷蔵庫はNG
ぬかを冷蔵庫に入れるといつまで経っても乳酸菌が活性化してくれません。最適な温度は24℃くらいです。
・発酵させている間は密封しない
乳酸菌は酸素が苦手なのでぬか床が発酵してから密封するのはかまわないのですが、発酵を待っている間は、産膜酵母が活動できるよう密封しないでおきます。「自然の状態にしといてください。自然発酵ですから」。
・必ず「生ぬか」を使用する
佐々木さんは「ぬかを炒ったほうが、ぬか床はいたみやすいのですよ」といって「炒りぬか」ではなく、「生ぬか」を推奨しています。炒りぬかは生ぬかを炒って乾燥させ、保存性をよくしたものです。香ばしい風味が魅力ですが、加熱することでぬかのなかにいた乳酸菌が殺菌されてしまい、生ぬかを使うより発酵しにくいそうです(発酵しないわけではなく、野菜に付着した乳酸菌に頼るため、管理が難しいのだとか)。
・ほかの発酵食品を混ぜない
ビール、日本酒、パン粉などを混ぜる人もいますが、ほかの発酵食品を混ぜると、乳酸菌とほかの菌が拮抗して、発酵が遅れたり腐敗してしまう原因になります。
・発酵したら漬けてみよう
発酵したぬか漬けはぬか特有のよい匂いがします。発酵したらさっそく漬けてみましょう。佐々木さんのぬか漬けは、最初からほどよい塩分にしてあるため、いわゆる「捨て漬け」は不要です。
野菜の漬け方、基本はこちら!
1.野菜は必ず水洗いし、水分を拭いてから漬けます。容器に収まらないときは適当にカットしてOKです。
2.ぬか床のなかにズブッと入れて、野菜を埋め込んで表面を平らにならし、半日から1日放置します。
3.食べる前に取り出し、サッとぬかを洗って、食べやすい大きさに切ってできあがり。
漬かり加減は漬け時間で調整します。急ぐ場合は表面を塩もみして、塩を水で流してから入れると早く漬かります。あまり長時間漬けると酸味が出てしまいます。「柔らかくなったなと思ったら食べてみる、どのくらいの漬かり具合がいいかは、その家庭の好みです」と佐々木さん。
上手な漬け方、野菜別のポイントを伝授♪
・きゅうり
ぬか漬けのなかでも人気のきゅうりは、洗って端を切って、そのままつけ込むだけ。
・かぶ
しっぽを落とし、実の部分に大きく切り込みを入れてつけ込みます。佐々木さんは葉つきのまま漬けているそうです。
・だいこん
漬けやすい大きさに切り、ところどころ皮をピーラーでむいて漬け込みます。
・にんじん
彩りのいいにんじんのぬか漬けもおすすめ。ピーラーで皮をすべてむいて漬け込みます。皮が残っていると黒く変色してしまうそうです。
・なす
ぬか床に色が付いてしまうため、佐々木さんは別の容器にとって漬け込んでいるそうです。なすの色がよく出るように鉄なすなどを入れます。なすはちょっと難易度が高いのでほかの漬け物で慣れてからがおすすめだそうです。
作ったぬか床を大切に維持するために
せっかく作ったぬか床、大切にしたいですよね。ぬか床を維持していくコツも聞いてみました。
・混ぜる
ぬか床といえば混ぜるもの、というイメージ通り、できあがったぬか床は「とにかく『かく拌』すること、混ぜること」と佐々木さんは言います。混ぜることで、表面に出てきた産膜酵母をぬか床の下に、底のほうにある酪酸菌を表面に出し、いつまでもフレッシュなぬか床になるのだとか。ただずっと混ぜていたのでは、酸素が苦手な乳酸菌は増えません。乳酸菌を増やすためには、「混ぜすぎないこと」も大切です。
・常温保存
この作り方のぬか床は、冷蔵庫に入れず、佐々木さんのお店でも常温で保存しているそうです。佐々木さんによると「常温で保存することで、乳酸菌が元気に働き腐敗しにくい」のだそうです。直射日光の当たる場所では暖まりすぎてしまうので、日陰の室内に置いてください。
・変色したらその部分を捨てる
表面がうっすら白い、あるいはうっすら黒ずんでいるときは混ぜ込んでも大丈夫。黒、赤、青など、はっきりと変色している場合は、変色している部分とその周囲を、思い切って捨ててください。混ぜ込むと腐敗の元です。
・長期間外出するときは
中の野菜を全部出して冷蔵庫に保管します。大きな容器の場合は、ぬか床の表面に塩をまぶし、ラップなどで空気を遮断して常温で保管します。
・水が出てきたら
「野菜から出たきれいな水なので、そのなかには乳酸菌がたっぷり入っていますから、捨てずに生ぬかを足すことで濃度を調整してください」と佐々木さん。
・乳酸菌を育てる
「1gのなかに5億から10億の菌がいます」という佐々木さん。ぬかの中の乳酸菌を生かす、という気持ちでぬか床に接するといいそうです。
いざやってみると本当にカンタン♪
野菜を漬け込んで、しばらく置いて取り出すだけでおいしくなるぬか床。難しいと思い込んでいましたが「普通の日本人が忙しい暮らしのなかで続けてきたものですよ。難しいわけがない」と佐々木さんが言うとおり、実はシンプルでカンタンなものだったのです。ぬか床さえ作ってしまえば、毎日の手間はちょっと混ぜたり漬け込んだりする程度。思っていたほど手間がかかりません。
これからの季節、いつもの食卓に小鉢に入ったぬか漬けを添えてみてはいかがでしょうか。
●ライター 曽田照子
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