築74年の元長屋に光と風を
6軒長屋が切り離され、中央部だったこの家だけが残ったが、築74年になり雨漏りが酷くなっていた。
両隣には5階建てのマンションが建ち、光も入らず過酷な環境であったが、多くの家族が育ったこの家を、クライアント姉妹が何とか守りたいというのが動機だった。
雨漏りが酷かった部分は、増築によって屋根形状が複雑になっていた箇所。対策としては、屋根を片流れとし、雨水の流れを単純なものとした。また腐食が激しい躯体は、新しいものにやり替えている。
屋根形状の変更によって生まれた壁に高窓を設け、2階中央部にも光と風を届けている。
また、玄関から最奥の和室まで、防犯を保った上で、風の通り道を確保しているのも大きな特徴である。
間口3.8mに対し奥行16mと縦長の敷地で、使いやすさを考えると、主要な生活空間を1階、道路側に集める必要があった。それらの空間にも光と風を届ける為、中央部付近に光庭を設けるプランとしている。
これによって、光と風の環境を改善したのだが、ここにイロハモミジを植えている。葉の揺らぎ、木漏れ日が、視覚的、精神的な安らぎをもたらすと事を期待している。厳しい環境がゆえ、どうしても親密な外部を創造したかったのだ。
クライアントから、長らく悩まされた雨だが、これからは葉に落ちる姿も楽しめそうという感想を貰っている。
㈱一級建築士事務所アトリエm