思わず「ただいま」と言いたくなる。下町の古民家カフェ〔満寿多〕で過ごすとっておきの時間

最先端のショップがひしめく東京で、いま密かに女性たちから熱い視線を浴びている古きよき時代の場所やモノ。ただそこにいたり、見たりしているだけで、昭和の街にタイムスリップしたような気分になれる、レトロかわいい古民家カフェをご紹介します。

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築70年の料亭を改装した〔満寿多〕

日比谷線・入谷駅から徒歩5分ほどの、閑静な住宅街の中にたたずむ〔満寿多〕。台東区根岸はワンブロックおきに細い路地がはしり、人の生活や仕事が直に伝わってくるような、昔ながらの雰囲気が色濃く残る町です。うっかりすると通り過ぎてしまうほど〔満寿多〕は町の中にすっと溶けこんでいます。

壁に掲げられた看板を見つけたら、奥へと進みます。奥まった場所の庭木の上に入母屋屋根がちらりと顔をのぞかせています。そしてのれんをくぐってガラガラと木戸を開け、一歩足を踏み入れると、昭和にタイムスリップ。思わず「ただいま」と言ってしまいそうな懐かしい空間が広がります。

まずは「コウモリの窓」がお客様をお出迎え。この辺りは、関東大震災のとき被害を受けた浅草や吉原などから芸者さんたちが移り住んだそうです。その頃から芸者を置く置屋が軒を連ねるようになり「花街」として多くの人でにぎわう町になりました。

1948(昭和23)年に〔満寿田〕は料亭として開業。戦争が始まったことで一時閉鎖という憂き目にあいますが、戦後に再開。東京オリンピックの頃まで、この辺一帯の花街は大繁盛したそうです。その後、この界隈の花街は時代の流れとともにゆっくりと衰退していきました。

年季の入った窓枠や壁には趣のある絵が飾ってあり、コンロの上では鍋がコトコト音を立てています。調理場に目をやると、大きなおでん鍋が。ランチメニューの横には「たたみいわし」「うるめ干し」「モロキュー」の字が踊り、頭上には一升瓶が並んでいます。

〔満寿田〕は料亭を閉めてから、しばらくの間、住居として家の人たちが暮らしていましたが、1989(平成元)年に〔おでん 満寿多〕として新たにオープンしました。近所の人たちが集うおでん屋さんとして今に至っています。

そして今年の夏に〔満寿田〕の娘・彩子さんがカフェを始めました。

子供を送り出したママさんたちが、ランチをしに来ているようです。「今日は何にしますか?」「わたしはキッシュとコーヒー、それと食後にプリン!」「わたしはカレーとコーヒー」「わたしはカレーとハヤシのあいがけにしようかな」と、キッチンを切り盛りする彩子さんとママさんたちがにぎやかにやりとりしています。こうした光景は下町のカフェならではですね。

店内は広々としたつくりになっていて、お客さんはそれぞれのんびりと過ごしています。カウンター席の後ろには、ふすまを隔てた個室もあります。近所の会社の方などがお客様と一緒にランチをするのに利用されることがあるそうです。

テーブルの脇をふと見ると、そこには重厚感のある金庫が。料亭時代に使われていたものだそうです。神棚や引き戸も当時のものをそのままに残しています。

トイレに行く途中の廊下を歩くと、素敵な格子戸があったり、三味線掛けが柱に掛かったりしています。

「この三味線掛けに何かを飾りたいんだけど、なにがいいのかなあ?」と彩子さん。何も掛けなくとも、何十年という時を経て、ここにある。なんだかそれだけでも、とっても素敵な飾りに見えてきます。

一度食べたら通いたくなる喫茶メニュー

やわらかく煮こまれた豚肉と、控えめながら後からくる辛さがクセになる絶妙なバランスのスパイス使いの《辛口ポークカレー》(750円)がランチの名物で、ミニサラダがセットになっています。

しっかりとしたコクがあり、とても濃厚なルウが特徴の《ハヤシライス》(750円)。まさにフルボディといった味わいで、市販のライトフルーティでさらりとしたルウとは一線を画しており、こちらも人気のメニューです。

そして「両方食べてみたい」というお客さんの願いを叶えてくれるのが、カレーとハヤシのあいがけ(850円)。ピリっとした辛さのカレーと、ハヤシの味わい深い甘みが同時に味わえる、ぜいたくな組み合わせのメニューです。

キッシュとミートソーススパゲッティ、サラダなどがのった《よくばりワンプレート》(800円)は、ちょっとずつ、いろいろなものを食べたい女子心をしっかり受け止めてくれるメニュー。

そして多くのお客さんのお目当が、彩子さん手作りのスイーツです。スイーツは日替わりで、《かぼちゃプリン》(300円)や《アールグレイベイクドチーズケーキ》(400円)、《ガトーショコラ》(350円)、《アイスクリーム》(200円)などがあります。

コーヒーもスイーツもなぜかやさしい味がして、〔満寿多〕の心遣いのようなものを感じます。コーヒーを片手に、やさしい甘さのスイーツをいただいていると、ついつい長居してしまいますが、彩子さんは、みんなの憩いの場所になってくれればと「ここに来た時くらい、のんびりしていって」と言います。

何時間でも過ごしたくなる雰囲気

ランチタイムには、夜のおでん屋さんを切り盛りする彩子さんのお父さんとお母さんもサポートで出ていることがあります。若いお客さんたちと談笑する気さくなお父さん。彩子さんの後ろで、時折、声をかけ、彩子さんの仕事を見守るお母さん。

居合せる人々が自然に作りだす空気感と、そのお店ならではのメニューや空間の味わい。下町情緒とカレー。時折、飾りや小物をじっくり眺めたり。ここ〔満寿多〕では、きっと思いがけない面白さに出会えるはずです。

海外からの観光客がコアな下町の店にも足を運ぶようになった今、あらためて古き良き東京を訪ねるのも面白いかもしれませんね。


●ライター 忍章子

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