まるで避暑地の別荘のよう! 地域からも愛される、雑木の庭が気持ちいい住まい
平和公園にほど近い、閑静で緑豊かな住宅街に佇むKさん邸。「大きな窓から緑を感じたい」という施主の希望通り、敷地の南側に広がる庭には落葉樹と常緑樹がバランスよく植樹され、周辺の環境とも美しく調和しています。設計を手掛けたのは森建築設計室の森さん。「別荘地のような雑木の庭のある、住まう方からも、周りからも長く愛される家」をテーマに、果たしてどんな家が誕生したのでしょう。
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森さんがかつて建てた住宅を見て設計を依頼
家は、そこに暮らす方のものであることは間違いない。家を建てるとき、施主の夢や希望が第一に尊重されることはある意味当然だろう。「住まう方に長く愛着をもってもらえる家ということが何より重要なことだと思います。ただ、設計を専門でやっている立場からすると、もう少し広い視点でアドバイスができたらいいかなとも。周辺環境を読み取り、地域からも愛され誇りとなる、そんな家をつくりたいと常々考えています」と森さんは語る。家は自己表現、つまり住む人そのものだ。しかし、家を取り巻く環境や景観は、地域みんなのものという側面もある。「家を建てたことで周りの住環境がよくなれば、地域全体のポテンシャルは上がります。より暮らしやすい街、より素敵な街になります。それがひいては、自分たちの快適な暮らしにつながります。施主の要望を叶えながら、そういう住まいを提案したいですね」と。
施主であるKさん夫妻は、ある住宅街で「素敵だな」と思わず見とれてしまったお宅に出会ったそうだ。傾斜地に立つ家の南斜面に木々が茂る庭が広がり、木製の窓も何ともいえない良い雰囲気を醸し出していた。Kさんは(家づくりは)一生に一度のことと思い切ってそのお宅の呼び鈴を押し、設計した建築家を紹介してもらったという。その建築家こそが森さんだった。「10年ほど前に、庭づくりを含めて家を建てたいという方の住宅を設計させていただきました。緑豊かなそのお宅をKさんが見て、ウチにご依頼されたんですよ」。そのような経緯もあり、Kさん夫妻とは初めからある程度同じ価値観を共有できていたという。別荘地のような雑木の庭のあり、暮らしの中で緑を感じられる家。そんな家づくりがスタートした。
Kさん夫妻が購入したのは、敷地面積225㎡という広々とした土地。土地の南側の間口が広く、南と西が接道している。第一種風致地区に指定されるため建蔽率は3割、緑化面積は3割以上という制約はあるが、「条件に恵まれたため、逆に選択肢があり過ぎて絞り込むのが大変でしたね」と森さん。どう庭を配置するか、車庫の位置はどうするか、玄関はどちら側にするかなど、さまざまな選択肢に頭を悩ませつつ計画を練った。
「どの住宅も同じだと思うのですが、設計に正解はありません。どんな敷地でも、どんな住宅でも無限に可能性があります。初めからプランをひとつだけに決めつけるのはもったいないですよね」。今回も手書きのラフスケッチを3案ほど描き、それを見ながら施主と話し合いを重ね、プランを形にしていったという。施主の具体的な希望は「部屋の中にいながら緑を感じ、心地よく長く住める家」。厳しい建蔽率の中で施主の要望を満たすには「平屋に近い形状の2階建てとする。1階に庭と続いた空間をつくることを基本的な方向としました。また老後も考え、長く住んでいただくためにも生活の中心は1階にある方がいいと思います」。
庭の緑を通じて地域の人々とつながる家に
暮らしの中心となる1階LDKの広さはおよそ20畳。南側に全幅5.3mという大きなガラス窓を4枚設け、4枚のうち中2枚はフィックスで、両サイドの2枚がスライドする。窓の木製サッシは隠し框を採用。窓を開けても閉めても窓枠が目立たず、すっきりとした視線の広がりと庭との一体感を高めている。網戸は蛇腹スライド式で、収納すると壁に隠れてうるさくない。一番外側には木製ルーバーがあり、春や秋といった気持ちのいい季節の夜には、網戸&ルーバーで外気を取り込みつつ外からの視線も緩和する役目を果たしている。
2階には寝室とゲストルームを東西に配置し、2部屋をつなぐ廊下部分をワークスペースとした。ワークスペースとゲストルームは1階から吹き抜けとなっていて、ゲストルームは吹き抜け部分を障子で仕切ることができる。寝室のスライドドアを閉めるとクローズした空間となりプライバシーを確保。寝室の隣には納戸を設けた。
窓の外にはタイルを敷いた広々としたテラスが続く。タイルほぼメンテナンスフリーで、ウッドデッキに比べタイルの方が床がしっかりしているのが特徴だ。イスやテーブルを置いてもがたつきが少ないので、テラスで過ごすときにもストレスが少ない。テラスのうえに張り出した軒の深さは約1.5m。「雨による木製サッシの劣化を防ぐ役割を果たすとともに、夏は日差しを遮り、冬には室内へ光が届くよう、軒の深さと高さを計算しています」。
屋根は差し掛け屋根を採用。ファサードの高さを抑えるとともに、2階部分の居住空間も十分に確保する狙いだ。また、屋根が切り替わる壁にはハイサイドライトを設え、2階の採光と通気にも考慮。LDKの大きな窓から入った風が2階へと抜け、心地よい室内環境をつくり出している。「屋根は南側を4寸、北側を3寸と勾配を変えています。南側を4寸勾配としたのは屋根を見せたかったからです。やはり日本の家屋は屋根が見えた方が街の景観がよくなると思います」と、周辺環境の影響にもぬかりない。
大きな窓の向こうにはKさん夫妻が望んだ通りの庭の緑が広がっている。LDKの北西角に配置したキッチンからも庭がよく見えるのも魅力的だ。「造園は専門業者さんにお願いしました。夏は木陰ができ、冬は光が届くように落葉樹と常緑樹はバランスよく配置されています。また木々が程よいブランドとなり、昼間はカーテンがなくても外の視線が気にならないそうです」と森さん。
「これだけ大きな庭は水やりや雑草抜き、落ち葉拾いなど維持管理も大変です。ただ、Kさん夫妻さんはそれを厭うどころか楽しんでおられるご様子です。そういうお施主さんに出会えたことには感謝するばかりですね」と森さん。夫妻が庭の手入れをしている際には、道行く方から『いいお宅ですね』と声をかけられることもままあるそうだ。庭の木々が大きく生長していくにしたがって、別荘地のような雑木がある家は地域のオアシス的な存在になるはずだ。そして、Kさん夫妻はもちろん、周りからも長く、長く愛され続けることだろう。そう、きっと。
森 哲哉
森建築設計室
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