じっくり対話で叶えた 施主の思いと抜群のゾーニング

建築家に家づくりを依頼する醍醐味は、「自分たちの思い通りの家」を作ってくれることではなく、自分達の想いを自分達以上に理解し、想像を超えた提案をしてくれることだ。
川島建築事務所の川嶌さんは、その醍醐味を味わわせてくれる建築家の1人。川嶌さんの真のお客様ファーストの家づくりに迫る。

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じっくりと対話を重ねることで提案したプランの大幅変更がなくなる

コンクリート打ちっぱなしの威風堂々たる佇まいのO様邸
傾斜地に建つO邸。建物の一部が土地の傾斜にせり出すような設計

愛知県豊明市。名古屋市に隣接し、緑豊かな自然環境と古い歴史に育まれる住宅都市として発展を遂げる街。そこに威風堂々と佇むO様邸がある。

この住宅を設計したのは、愛知県を中心に30年以上に渡り、木造、RC、混構造と多彩な素材で数多くの住宅を作り続けてきた建築家、川島建築事務所の川嶌さん。

「名古屋地域は、ハウスメーカーが強い土地柄なのです」と川嶌さん。名古屋圏は、東京圏や大阪圏よりも戸建て志向が強く、とりわけ新築の注文住宅を好む傾向が強いという調査結果がある。さらに、価格にシビアという名古屋人の気質もあり、建築家にとっては厳しい地域といえるかもしれない。

実際O様も、ハウスメーカーも検討されていたのだとか。それでも、川嶌さんに自邸を依頼したのは、川嶌さんの豊富な実績と、真のお客様ファーストな姿勢を評価されてのことなのだろう。

「お客様の要望をただ叶えることは、実はそれほど難しくないのです」と川嶌さん。

施主の要望を、よく吟味せずそのまま受け入れたことで、デザインのバランスを崩したり、せっかく導入した設備が、ほどなくして使われなくなってしまったということは、よくある話。施主や家族が本当に叶えたいことは何なのかという「本質」を捉えた上で、ときにはプロの目線でアドバイスをし、さらには施主の予想を超えた提案を行うことこそ、真の建築家であり、お客様ファーストにつながるのだ。

川嶌さんは、その姿勢を大切にしてきたからこそ、名古屋圏という建築家泣かせの地域で30年超に渡って仕事を続けてこれたのだろう。

そんな川嶌さんが、重視しているのが施主との「対話」だ。建築家が施主の望みを捉えるには、いくつかの方法がある。要望を紙や文書に書き出してもらうヒアリングシート方式をとる建築家もいれば、近年ではSNSで連絡を取り合って関係性を深める人もいるという。川嶌さんは、施主と実際に会ってじっくりと対話を重ねることで、文字には現れない、施主の表情や雰囲気、他愛も無い会話なども情報として取り入れ、イメージを膨らませるのだという。

「ご提案したプランが大幅にやり直しになることは少ない」と川嶌さんは語る。

真の要望を捉える確かな感性をもち、豊富な実績やアイデア力から導き出される提案力があるからこそ、施主の要望を叶え、さらにそれを超えるプランが出せるのだ。

玄関へは、長いアプローチを進む。訪れたゲストは、特別な場所に来たかのようなワクワク感を感じられることだろう
広々としたLDK。ダイニング部分には、O様たっての希望により、換気扇付き照明を設置した

夫婦の部屋をあえて離す定石を疑い、最適解を導く

コンクリートの外壁とは打って変わって、ウッディーで温かみのあるキッチン。パントリーや納戸、水回りも隣接し抜群の家事動線を実現
O様の趣味の音楽を存分に楽しめるよう、専門業者とともに設えた音楽室

建築に際し、O様の要望は大きく3つ。1つ目は、快適な家事動線。2つめは、O様の趣味の音楽を楽しめる防音室を作って欲しいということ。また、将来的にO様のご両親が同居できるような場所もほしいとのことだった。

このような要望に対し、川嶌さんはどのような家をプランニングしたのか見ていこう。

O様邸の外観は、コンクリートの打ちっぱなしの重厚感ある佇まいだ。川嶌さんは、コンクリートだけでなく、木造や混構造の家も数多く手掛けているが、O様邸においては、防音性の観点からRC構造を採用した。

広い敷地を活かし、建物と駐車スペースをコンクリート塀で隔てることで、プライバシーを確保しているせいか、高級レストランのような雰囲気を感じる。駐車スペースからダイレクトに玄関に入るのではなく、あえて長いアプローチを進んでいくつくりにしたことで、訪れたゲストは、特別な場所に来たかのようなワクワク感を感じられることだろう。

玄関を入ると、そこは吹き抜けとなっており、上階から光が降り注ぐ。ややもすると冷たさを感じてしまいがちなコンクリート壁を、光が照らし明るく開放的な空間へと変貌させた。

LDKに入ると、そこには広々とした空間が広がる。フローリングの床、ウッドテイストのキッチン、モザイクタイルなど、温かみのある雰囲気をもたせている。家族が集い、語らい、寛ぐ憩いの空間。

LDKの周りには、パントリー、バス・トイレ洗面といった水回り、ランドリー室や収納用の納戸といった家事に関するものを集約。少ない移動で家事が完結できる、抜群の動線を実現させた。

O様の希望だった音楽室は、寝室や書斎と同じゾーンに集約した。行きたくなったらすぐに目的の部屋へいけるという利便性の高さを重視。一方、奥様がプライベート時間を過ごす個室は、日頃の家事で使う場所からほどよい距離感をもたせた位置とした。奥様が気持ちの切り替えができるようにという川嶌さんの配慮だ。

もともと、夫婦別室を希望されていたO様ご夫妻。別室とはいえ、夫婦の部屋は隣同士とすることが多い中、川嶌さんは「夫婦の部屋は隣同士にあるべき」という定石を疑い、この夫婦にとって最適な解を導き出した。顧客ファーストな川嶌さんだからこそ、なし得たゾーニングだろう。

また要望の1つにあった、同居予定のご両親が住まうスペースは、同じ建物内に収まりながらも、離れのような独立感をもたせた。専用庭も設けてあり、親世帯との程よい距離感も実現させてみせた。

この家の出来栄えにO様も「楽しく住まわせていただいています」と感謝のコメントを寄せてくれたという。

「家は20年30年、場合によってはもっと長い時間残るものです。そういったものを作っている責任を感じながら仕事をしています。まだまだ完成形ではないんです」と川嶌さん。

30年以上の長きに渡り、様々な経験を積んできた川嶌さんは、まだまだ進化し続けるのだ。そして、真のお客様ファーストな家が、生み出されるに違いない。

個室への動線は、長いアプローチとすることで、気持ちの切り替えができるよう配慮
玄関上部の吹き抜けに設けた窓。玄関へのアプローチの屋根が光の通り道のように感じさせる

撮影:toru写真事務所 鈴木将平

川嶌 守

川島建築事務所

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