やわらかな陽射しが差し込む漫画家&イラストレーター・おぐらなおみさんの自宅アトリエ【我が家の暮らし #6】
広い作業台に、道具や資材を収納するスペース……。ハンドメイドを楽しむとき、ワークスペースをいかに確保するか、その悩みは尽きないはず。今回は、漫画家&イラストレーター・おぐらなおみさんのお宅を訪ねて、仕事場を見せていただきました。
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リビングが仕事場。部屋のコーナーを上手に使って
閑静な住宅街に佇む3階建ての一軒家。おぐらさんは、ここで2人のお子さん、そして2匹の愛猫と暮らしています(編集部注:旦那様は現在海外赴任中とのこと)。一軒家の間取りは、1階が駐車スペースとご夫婦の寝室、2階にキッチンやリビングと水回りがあり、3階はお子さんたちの部屋。
以前はマンションに住んでいたというおぐらさんが、ここに越してきたのは2018年の3月。家族のライフスタイルの変化に合わせて家探しをし、引っ越してきたのだそうです。
「子どもたちが大きくなって、それぞれ生活の時間帯が変わってきたし、プライバシーを分けたいなと思って一戸建てにしました。私はリビングの一角に作業できる場所を作って、ここで仕事をしています」とおぐらさん。
おぐらさんがパソコンで仕事をするときは、この窓際の机で行います。机は同じものをI字型に2台並べ、壁に沿わせるように配置。机がカクカクとしていて、角が丸くないところが気に入っているのだそう。
「シンプルですっきりとした机なので、掃除がしやすくていいですよ」
このように、部屋に沿わせて家具を置くと、空きスペースを広くとることができます。「I字型に机を横にならべると横の移動もスムーズなので、この配置は気に入っています」。空いたスペースにはもう1台、おぐらさんの作業机が置かれています。
描く作業をする時は、この広々とした机で。この机は、朝と夜の食事時になると、ダイニングテーブルへと変わるのだそうです。漫画家さんのお仕事というと、自分の部屋にこもって、描くことに没頭するというイメージがあるのですが……。
「私は、仕事と家を完全に分けるよりも、生活に属した感じで仕事をするのが好きです」
「没頭したい、集中したい、というよりも、描くという作業を持続させたい」とおぐらさんは言います。「集中し続けるということが私には難しいので。たとえば、鍋に火をかけている合間に絵を描いたり、洗濯機をまわしている間にネームを書いたりして作業を続けています。感覚的には“自分専用のワークスペース”というより、リビングで仕事をしているという感じですね」
目に入るところに好きなものを置く
おぐらさんが“一軍”と呼ぶデスク脇の棚には、本や小物、植物などが置かれています。
「仕事をしているとき、目に入るところに自分の好きなものがあると気分が良いんですよね。ここは私の“聖域”みたいな感じで(笑)。この棚だけは、私の好きなものを置かせてもらっています」
置いてあるものは、どれもおぐらさんの好きな本ばかり。棚の上段には生活雑貨や暮らしに関する本や、写真を眺めて楽しめる本が置いてあります。雑貨好きというおぐらさん。猫の置物をブックエンドにしているところにキラリとセンスが光っています。
下段には、ぬいぐるみやリフレッシュグッズ、そして漫画本が並んでいます。
「デスクワークは肩がこるのでコレでほぐしています。娘がお友達からプレゼントされたものですが、ときどき使わせてもらってます。それと、仕事の合間などに好きな作家さんの作品をパラパラと眺めて『うーっ、うまい! くやしい! こういうのが描きたい!』って思ったりします(笑)」
黙々とひとりで仕事をし続ける漫画家さんのお仕事。この棚には、おぐらさん流の気分転換と、モチベーションアップのワザが詰まっています。
一軍の棚の隣にはオリーブの木と、もうひとつ棚が置かれています。リビングに時折やって来るという愛猫の食事場所や爪とぎもここに。
「猫たちは気ままに、好きな場所でお昼寝していますよ。仕事中は外にほとんど出ることがないので、グリーンが少しあるだけで癒されるんですよね」
モニターの脇にはスピーカーを置いて、お気に入りのラジオや音楽を聴きながら仕事をするそうです。「仕事をする時は必ず、ラジオをつけるか、音楽を流しています。何か音が鳴っていないと集中することができないんですよね」とおぐらさん。
モニターから目線を上にずらすと、インテリアのアクセントにもなっている黄色い時計とカレンダーが掛けられています。カレンダーには、おぐらさんの手書きで黒い文字と赤い文字が。聞けば、仕事の予定を赤色、家族の予定は黒字なのだそう。仕事と家事と、おぐらさんに関わる予定がひと目でわかるように工夫がされています。
デスクの脇のサイドボードにも、近所のお花屋さんで見つけたというグリーンが飾られていました。
カゴでまとめる収納術
おぐらさんのワークスペースには、たくさんの“カゴ”が置かれています。「カゴが大好きで、雑貨屋さんで見つけては買ってしまいます」というおぐらさん。
電子機器が並ぶと無機質な印象になりがちなワークスペースですが、一つひとつ、それぞれに表情の異なるカゴがあることによって、温かみのある心地よい空間になっています。
1軍の棚に置かれたカゴをのぞくと、中にはメモ帳が入っていました。“あっ! もしかしてこのオレンジのメモ帳は!?”と思い尋ねると、やはりそうでした。おぐらさんの絵日記ブログ『中身はつぶあん。』(http://oguranaomi.blog.jp/)で、おぐらさんが日々のことを書き綴る際に使っているメモ帳でした。
こちらのカゴには、ポシェットやポーチなど、おぐらさんのおでかけグッズが収納されていました。ゴチャゴチャとしがちな小物類をカゴに入れてひとまとめにし、上手に隠してしまうおぐらさんの収納術。カゴを用いることで、自然の持つ温かい色合いが目にも優しく、ホッとする安らぎをもたらせてくれます。
おぐらさんが描きものをしている脇にもカゴが置かれています。中には紙の束が入っているようです。
おぐらさんは、このカゴに、進行中の仕事を入れ、まとめています。
「今日はあの仕事をしよう、というときにここから取り出して作業をしています」とおぐらさん。ここに1ヶ月分程の仕事を入れ、終わったものは別の場所へ移動して整理をしているのだそうです。
「机に紙をワーっと広げちゃうと、ごはんのときにパッと片付けられないんですよね。でも、こうやってカゴにまとめておけば、ササっとカゴを移動して片付けることができます。サイドボードには、ティッシュや布巾などを入れた食事時用のカゴがあって、ごはんの時間になったら、この仕事用カゴと食事用カゴを入れ替えるんですよ」
カゴにまとめ、パッと瞬間移動させるおぐら流片付け術。明日からでもマネしたいですね。
ダラダラしない。おぐら流仕事モード切り替え術
おぐらさんが“仕事の時間”と決めているのは10時から16時までの時間なのだそう。仕事が立て込み、忙しい時などは夕飯が終わってから再び机に向かうこともあるそうですが、無理をしても次の日に響いてしまうので、昼型にするよう心がけているのだとか。
「自宅で仕事をしているとダラダラし放題ですからね(笑)。仕事と普段の生活とをしっかり分けるために、朝、子どもたちを送り出したら8時から9時の間に、家の掃除と洗濯をします。それが終わったら着替えてお化粧をして、身支度をする。これで気持ちを切り替えています。私にとってこの一連のことが“通勤”になっているんだなと思います」
おぐらさんの仕事モード切り替え術はもうひとつありました。“指輪をつける”というのもあるそうです。
「仕事をするときは指輪をつけます。仕事が終わったら、料理をしたり家事をするので指輪をはずします。指輪をしていないとなんとなく手元が寂しいというのもあるのですが、指輪をしていると『私は今、仕事中だぞ!』っていう意識になります」
そういえば、気になっていた液晶モニターの下に鎮座する鳥の置物。ペーパーウエイトかなと思い聞いてみると、おぐらさんが仕事モードに切り替えるための大切なアイテムでした。
「仕事が終わったら、指輪をはずして、ここにしまいます」
なるほど! 雑貨好きのおぐらさんが、お友達が営むアンティークショップで見つけたというこの鳥は、アクセサリーケースでした。
連載に執筆、イラストの仕事、育児に家事と、たくさんの“仕事”を掛けもつおぐらさん。さぞや忙しい日々を過ごされているのだろうと想像しますが、まったくそのような慌ただしさを感じさせない、穏やかでゆったりとした雰囲気がとても印象的でした。
自宅にアトリエを作り、家のなかで黙々と作業をしなければならないときなど、好きなものや癒し効果のあるものを置いて、リラックスできる環境を作ることがとても大切なのかもしれませんね。
最後に、おぐらさんにとってのいちばんのリラックス方法をお聞きしてみました。おぐらさんの著書やブログ、ツイッターなどを読んだことがある方なら、きっとピンと来ると思います。
「泡がしゅわしゅわするお酒が大好きです。仕事が終わったら飲みますよー」
●取材協力:漫画家・イラストレーター/おぐらなおみ
レタスクラブ『私の穴がうまらない』、サンキュ!『働きママンビギナーズ』、読売新聞『オヤコ、だもの…』など連載中。著書に『こんな息子に母がした』『育児バビデブー』(辰巳出版)、『働きママン1年生』『新 働きママン 谷のぞみ(32) ワーママデビューします!』(小社刊)。最新刊は、『母娘問題 オトナの親子』(中央公論新社)など多数。
●写真・文 忍章子
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