一枚の板の上に家族が集う「板の家」 (東京都大田区)
家族といかにして住まうのか。これをとことん話し合って考えた住宅がこの「板の家」です。ご主人は、いかに住まうかの構想として、大きなワンルームを望みました。個室にこもるような生活ではなく、家族が集まって暮らしているような住宅を。しかし間取りを考えていくうちに、まったくのワンルームでは居心地が悪いので、単なる箱でもなく、でも、箱が集まっただけの一般的な間取りでもないものを探求しました。
そんな打合せを繰り返す中で、靴脱ぎベンチや下駄箱、勉強机、読書ベンチ、本棚、キッチンカウンター、ダイニングテーブルが、一枚の板で連続しているスケッチをお見せしたところ、オーナー様のイメージが固まり、このようなユニークな住宅が出来ました。
一枚の板が高低差のある住宅をぐるっと巡ることで、緩やかに仕切り、住まうための拠り所を作り出すので、ワンルームではあるのですが、何気なく居心地を高めています。
さらに隠れアイテムとして、最上階の屋上では白く塗られた壁が夜には夜空に浮かぶ屋外シアターとして機能します。(プロジェクターは天井にビルトイン)
また、モダンな住宅を希望しておられましたが、その反面、家相を反映するという課題もあり。ユニークなアイディアを盛り込みつつ家相に乗っ取った間取りを進めていくことが一見すると解らない苦労した点として上げられます。
小さな住宅ではありますが、写真で見てもらってもわかるように、非常に変化に富んだ広がりのある住宅です。
※1Fが倉庫+駐車場、2Fがオフィス、3Fより住宅。
鈴木貴詞【スズケン一級建築士事務所】