エアコン1台で冬を暖かく、夏を涼しく暮らせる住まいとは何か? 温熱環境を考える「快適空間ラボラトリー」

夏は涼しく、冬は暖かく過ごす。エアコンをたった1台使うだけで、家全体が1年を通して一定の温度に調整できたら、これほど快適なことはありませんよね。もちろん”快適さ”だけでなく、住まいの温度管理は、冬の寒い時期に起こりやすいヒートショックや、夏の暑い時期の室内での熱中症など、健康被害の軽減にも大変効果的と言われ始めています。そんな”住まいの温熱環境”とはどのようなものか、を学べて体験できるのが「快適空間ラボラトリー」です。

旭化成建材

四季のある国土に住む私たちが求める「温熱環境」が住まいの快適性を決める

日本には”四季”というものが存在しています。夏は暑く、冬は寒い。私たちにとっては生まれてこのかた親しんできた気候ですが、世界的に見るとこれほど四季がはっきりしている国は非常に稀なのだそうです。本州では、40度以上の気温差(夏は40℃、冬は氷点下)があるような地域も珍しくありません。加えて夏は多湿、冬は乾燥。考えてみると私たちは相当厳しい気温と湿度環境の中で生活しているのです。

そんな気候である日本は、しばしばクルマのテストなどにも使われるそうです。日本のメーカーのみならず海外メーカーまでもが、灼熱の首都高速道路や雪深い北海道などで最終テストを実施しているという話も耳にします。つまり地球環境の最大公約数的な気候が、日本には集約されていると言えるのです。

快適に、健康に暮らせる”空間”を考える「快適空間研究所」

”夏を涼しく、冬を暖かく暮らす住まいづくり”とは何か、を共に考え、学んでいくという活動を推進しているのが、旭化成建材が運営している「快適空間研究所」です。50年以上に渡り住宅建材を扱ってきた旭化成建材が考える”快適に暮らせる温熱性能”を体感できる場所として「快適空間ラボラトリー」をオープン。先日、こちらの施設で一般参加者に向けて「快適空間体験ツアー」が開催されました。このツアーはすでに行われていた”住まいの温熱環境ワークショップ”を受けて開催されたもの。ワークショップで温熱環境とはどういうものなのかを学んだ参加者が、その環境を体験するために行われました。

「快適空間ラボラトリー」とは

体験ツアーが行われた「快適空間ラボラトリー」とは、快適空間研究所が考える温熱環境とはいかなるものなのかを実際に体験してもらうための体験型施設です。ではツアー参加者とともに、実際に体験していきましょう。

ラボラトリーは展示棟と体験棟で構成されています。展示棟は”環境を良くすることの大切さと”温熱環境における断熱性能の重要性”などを理解していただくための場です。体験棟は理想とする温熱環境を実現した約40坪の木造2階建住宅です。ツアーはまず展示棟で温熱環境の考え方を学ぶ所からスタートします。

茨城県にある「快適空間ラボラトリー」。温熱環境を実現するための素材や空間を実際に体験できる施設です。

温熱環境をコントロールする発想と技術が学べる展示棟

様々なパネルや展示物を展示することで、より分かりやすく温熱技術を解説する展示棟。

ワークショップで学んだ”温熱環境がいかに大切か”ということを理解できるパネルやサンプル展示の他、様々な温熱技術を体験できる実験装置などが満載。その他には断熱材とはどういうものなのかが理解できるゾーンなどもあり、楽しく温熱環境や断熱性能について学べる工夫がされています。

実際に触って体験できる展示物も。こちら断熱材が木やコンクリートに比べてどれだけ熱を通さないか、を体感できる展示物。

こちらが上記の比較をサーモカメラで見た画像。一番手前が断熱材で、ほとんど熱を通していないのが分かります。

2層のガラスと3層のガラスの熱の通しにくさを比較できる体験装置。並べることで、性能の違いを体感できます。

エアコン1台で理想的な温熱環境を実現した「ネオマの家」

体験棟は「ネオマの家」という理想の温熱環境を、断熱材や設備、工夫で実現した”高気密、高断熱”の住宅。屋根や壁、基礎に至るまで断熱材で包んでいます。優れた断熱性能に加え、省エネルギーの発想が最大限発揮されているのがその冷暖房システム。1階と2階、そしてロフトスペースからなる延床面積130.1㎡という一軒家としては一般的な面積ですが、この家全体の気温調節を行っているのは暖房用のエアコンが1基、冷房用のエアコンが1基の計2基のみ。暖房と冷房で用途を分けてあるので、実質稼動させるのは1基のみ。空間をどのように1基のエアコンで調節しているのか、それが「旭化成建材」の知恵なんです。

ロフトスペースには冷房用の家庭用エアコンと、冷気を下階に送るための通気口があります。

展示棟にもサンプル展示されていた、樹脂サッシ&3層構造のガラスで気密性を高めた窓。

温熱環境発想を取り入れたネオマの家は、その効果を充分に発揮できるオープンな構造を採用しています。

2Fフロアを吹抜けとすることで一定の温度に保ちやすい構造を採用。

熱交換システムを導入することで、温度を下げずに新鮮な空気を循環させることが可能となっています。実際に一般参加者がその効果をチェックできるように住宅の至る所に室温計と湿度計を設置。参加者の皆さんもキッチンや廊下、寝室で計器をチェックすることで納得していました。これらのアイデアはいまだ試験段階のため実地投入はまだ先とのことですが、厳しい温度・湿度環境の日本には必要な考え方ではないかと感じました。

参加者のみなさんもそれぞれ計器類を自らでチェックしていました。

実際に各部屋をチェックすることで、家全体の温度環境を確認。温熱環境という発想と技術を肌で感じていたようです。

生活にどのように「温熱環境」を取り入れればよいのか?をディスカッション

さてネオマの家を存分に体験し、最後の座談会に参加した皆様。参加した方々は全員女性だったのですが、女性らしい様々なご意見が出ていました。そのいくつかをここでご紹介していきましょう。

「凄く良く考えられていて素晴らしいなと。ただ、例えばオープンではない、仕切りの多い間取りには向かないとか、床下に通気口があったりすると家具の置き方だったりとか、どうしても制約が出てきてしまうのがあるのかな、と感じました。実際に暮らしていくにはその制約をしっかり理解しておかないと、と思いましたね」

「昔ながらの和風の家と比較して窓が少ないな、というのは感じました。快適性はもちろんですが、耐震性なども考えると壁が多い方が良いというのもあって、今までの考え方とは違う考え方が必要になるのかな、と思います」

「どうしても今の生活と重ね合わせて見てしまうのですが、今の家は暖房は一部屋単位なのですが、乾燥してしまうのが悩みの種。でもこういう家であれば、その悩みが解消できるんじゃないか、もっと快適に住めるな、と前向きに考えられましたね」

「最初、個人的には、家全体が同じ温度、湿度環境というのが良いと思えなかったんですよね。家族それぞれ快適な体感温度というのは違いますし。でもそれぞれのお部屋で調整できるということが分かったので、非常に勉強になりました」

「私が今回参加させていただいた目的というのが、実家が秋田にあって、将来そちらに住む時に温熱環境の整った家というのはどうなのか? を自分で考えてみたかったんですね。非常に参考になりましたし、より興味も湧きました。だた、今回のこの家は関東圏という設定だったので、希望としてはもう一つ、寒い地域の環境に合わせたモデルハウスというのも見てみたいです。是非お願いします(笑)」

メーカーとユーザーの”キャッチボール”こそがラボラトリーの役割

「快適空間研究所」の役割の一つは、”快適な温熱環境”とはどのようなものなのか、を工務店や生活者などの多くの方に理解していただくこと。そしてそのための活動から生まれた意見を活かして、さらなる技術の発展と発想に生かしていくこと。と白石真二所長は言います。

「やはり資料や話だけでは伝わらない部分を体験していただくことで、想像以上に理解を深めていただいたようなのでホッとしています。ただ、現在の暮らしとのギャップもあったようで、最後のディスカッションではそこからのご意見、ご質問が多数出ていましたね。意表を突かれたご意見もありました(笑)。」

「快適空間研究所」は今後もこのようなワークショップや体験ツアーなどを通して”ヒト基準のあたたかい暮らし”を浸透させていく様々な試みを行っていくそうです。興味のある方はホームページで開催情報をチェックしてみてはいかがでしょうか。

ヒートショックや熱中症など健康面でのリスク対策としても効果のある快適な温熱環境。実は”住”環境にとって最重要因子の一つと言っても過言ではありません。それは、季節によって気温や湿度の差の激しい国土に住む日本人にとって、今後必須と言えるものなのではないでしょうか。

Photo:木下誠
Text:藤川経雄

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