実録! バラがメインの庭づくり第9話 バラからの注意信号~待ち遠しい秋のバラ
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長い長い夏を乗り越え、10月の秋バラの開花シーズンも目前の時期。今、庭を見回ると葉や株元にバラの不調の兆しを発見することもあります。神奈川県在住で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんによる庭づくり奮闘記第9話。今回は、9月から秋バラ開花までの時期に気を付けたい、観察ポイントと解決策、そして、秋バラが美しい品種を6つご紹介します。
秋バラ開花前に株の状態をチェック!
酷暑の夏、残暑の秋を乗り越え、10月の秋バラの開花シーズンも目前となりました。
しかし、庭を見回っていると、よいことばかりとは限りません。黄色くなってしまった葉を見つけたり、株元にオガクズのようなものが見つかったりと、この時期も油断できないと感じます。
今回は、今、バラからの注意信号を察知して手入れしたい、主な原因と対策をご紹介したいと思います。
バラからの注意信号「葉が急に黄色くなり、落葉してしまった」 その原因と対策
バラの葉が黄色くなったり、さらには落葉してしまったことには以下の6つの原因が考えられます。
これらの原因に対して、すぐ対処できるものと、これまでの栽培方法を思い出してみて見直すべきこともあります。葉の不調がもしあったら、すぐ解決できることは行い、今後注意すべき点は、忘れないようにメモなどに書き残しておきましょう。
バラからの注意信号1.水分不足
今の時期は、秋の長雨が続いたり、夏よりもだいぶ気温が下がってきたことから、つい安心して晴天が続いても水やりを怠ってしまうなど、水分不足が第一に考えられます。
特に、軒下にあるバラは、雨が少し降った程度では、水分が根に届かず、水分不足になりがちです。
【水分不足の対策】
晴天が2日以上続いたら、水やりを行い、軒下のバラには雨が降っても気を配り、水やりを怠らないこと。ただし、水はけのよいバラに適した用土に植えられていることが前提です。
バラからの注意信号2.根を切って傷めた
夏の元肥や中耕を行った際、シャベル等で深く堀り過ぎたために、水分や栄養分を吸い上げる大切な根を切って傷めてしまい株が弱ってしまった。
【根を傷めてしまった対策】
冬以外の生育期は、根を切らないよう夏の元肥、中耕を行う時は浅めに行うこと。
バラからの注意信号3.不適切な施肥
小さな粒状の化学肥料を一度にたくさん施してしまった場合など、水やりや降雨によって、その肥料がバラの用土の中に潜り込み、濃い肥料として根を傷めてしまうことがあります。また、液肥を多く与え過ぎてしまった場合や、希釈倍率を間違えて濃い液肥を与えてしまったなども根を傷める原因です。さらに、化学肥料ばかり長年使用し続けると、バラには吸収されない塩類(ナトリウム、塩素、炭素、硫酸等)が、土の中に残り、塩害が起きて、最初は葉が黄色くなり、次第に元気がなくなり生育が悪くなってしまいます。
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【不適切な施肥の対策】
肥料は、なるべく有機質肥料を選び、急激に根に負担がかからないようにします。ただし、未発酵の有機質肥料は、根に触れると根を傷めてしまうことがあります。
特に、鉢植えのバラの用土の中に、油かすなどの未発酵の有機質肥料を混ぜ込んでしまうと、用土の中で発酵し、その際生じる発酵熱によって根が傷んで、あっという間に葉が黄色くなり落葉。さらには、枯れてしまうことがありますので、根に触れても安全な発酵済みの固形有機質肥料を使用するか、未発酵の有機質肥料は、固形のものを選び、根に直接触れない地表に置き肥することなどが必要です。
また、即効性のある液肥は、パッケージに記載されている使用・用法・用量を必ず守りましょう。
長年の化学肥料の使用により、塩害が考えられる場合は、塩類を吸着させ薄めるために、完熟堆肥などの有機繊維質を軽くすき込むとよいですが、本格的な改善策は、冬に行います。
【現在時点での施肥】
開花目前の9〜10月は、夏の元肥と追肥が効いて、バラも開花準備に入っている時期です。
この期間は、花肥であるリン酸分が多めの肥料を追肥で与えますが、即効性を期待するなら液肥をおすすめします。しかし、雨天続きの場合は、固形肥料を撒くのも一つの方法です。
いずれも、使用・用法・用量を守り、与え過ぎには注意しましょう。
なお、つぼみが色付き始めたら、全ての施肥はストップしてください。いつまでも施肥を続けていると、奇形や汚い花が咲くことにつながります。
また、チッ素分の多い肥料をこの時期に与えると、チッ素過多により、黒点病やうどん粉病にかかりやすく、花もつぼみのままボーリングしやすくなってしまいます。
バラからの注意信号4.ハダニによる被害
ハダニは、高温乾燥時に発生しやすいので、秋の長雨の時期には、被害が少なくなるのですが、南側の軒下等の雨が当たらず乾燥しやすい場所にあるバラや、風通しの悪い場所にあるバラには、この時期でもハダニが発生し、被害が出ることがあります。ハダニは、葉の裏にクモの巣のように白っぽく覆うように付いていることが多く、放置していると、葉がすすけたように黄色くなり、徐々に落葉していきます。
【ハダニの対策】
ハダニの被害が見られたら、シャワーの水で勢いよく洗い落とします。
バラからの注意信号5.濃い農薬の散布
特に、自分自身で希釈して農薬を作る場合、希釈倍率を規定量よりも濃くして散布してしまうと、葉や根を傷める原因となります。また、小粒状の農薬を多量に撒いてしまい、水やりや降雨によって、地中に農薬成分がいっきに入り込むと、根を傷め、株が弱ってしまいます。
【濃い農薬の散布回避の対策】
農薬は、希釈倍率と、散布する回数や量のほか、使用・用法を守りましょう。新芽や新葉には、少し薄めにするくらいから散布を始めるとよいでしょう。
バラからの注意信号6.台風後の塩害
海水等を巻き上げて雨を大量に降らす台風の後は、海から遠くても塩害を起こすことがあります。
【台風後の塩害対策】
台風の後は株全体に真水をかけて洗い流します。
その他、水はけの悪い場所に植えられていたり、黒点病や癌腫病、テッポウムシなどの害虫による被害等でも葉が黄色くなり落葉し、ひどい場合は枯れてしまうことがあります。
いずれも、「葉が黄色くなる」のは、バラからの信号であり、まさに「注意」するよう訴えかけてきているのです。
今年、被害が多く聞かれるテッポウムシ
現在、多くの方より、「今年は、テッポウムシの被害が多い」という声を聞きます。
私の庭でも見周り中に、大切にしてきた‘ブーケ・パルフェ’(CL/ベルギー Lens 1989年作出)の株元に、オガクズのようなものを見つけました(上写真)。
これは、ゴマダラカミキリムシの幼虫のテッポウムシが、幹の中で食害し、穴から木くずの混ざった糞を排泄したものです。
株元に小さな穴がないか探し、穴を見つけたら、薬のノズルを差し込み、薬剤を噴射します。そしてその後、数日間は、オガクズがまた出ないか(テッポウムシがまだ存命中か)観察します。
テッポウムシとゴマダラカミキリムシの幼虫とは
ゴマダラカミキリムシの成虫は、7月に太い株の地際の樹皮の下に産卵します。テッポウムシと呼ばれるのは、主にゴマダラカミキリムシの幼虫のことで、1~2年間に渡り幹の中をトンネル状に食害し、穴から木くずの混ざった糞を排出します。
テッポウムシに食べられた木は、水の通り道である道管が傷つけられたことで水分を運ぶことができなくなり、最悪の場合枯死してしまいます。被害にあったか調べる方法は幹の株元付近をよく観察し、小さな穴やオガクズ状の糞がないか調べることが大切です。
被害にあう前に成虫を退治したり、卵を産み付けられる前に対策することも大切です。
成虫は、バラの幹や枝の樹皮を食害し、その部分が茶色くなって、枝先をしおれさせます。成虫のカミキリムシは光るものを嫌うことが解ってきましたので、株元にアルミホイル等の光を反射するものを巻きつけると効果があると言われています。
秋バラの開花まであと少し。引き続き、お手入れを頑張りましょう。
私が心惹かれてきた秋バラをご紹介
さて以下は、これまで私が出合った秋のバラの中から、朝、晩、日中の気温差が織りなす、秋ならではの美しさが印象に残った6品種をご紹介させていただきます。
‘アンナ・ユング’
四季咲きのバラですが、特に秋の花色は光沢が加わり、外側の花弁の縁に、濃いピンクがはっきりと乗り、とても美しい花を咲かせます。
‘マダム・アントワーヌ・マリー’
こちらも、春よりも花弁の花色の濃淡がはっきりと浮き出て、ほっそりとした茎に、中輪の整った剣弁の花を美しく咲かせます。
‘ジェームズ・ギャルウェイ’
秋に、よりいっそう日持ちする花は、その間、ゆっくりと花弁を広げながら花色をピンクから薄く退色させるまで優雅に咲き誇ります。
‘フラゴナール’
桃色ピンクの中心に、秋は、よりはっきりとオレンジ色が帯びてくるのが解ります。
豊かなフルーティー香も、秋の静けさの中でより際立って感じられます。
‘ライラック・ビューティー’
シルバーがかるライラック色の花弁に、赤紫の覆輪の花を咲かせますが、秋は、ゆっくりと退色し、全体が淡い優しい色合いへと変化します。
‘マンダリナ・コルダナ’
もともと日持ちに優れた品種ですが、秋はさらに長く楽しめて、明るく光沢のある花色が、時間の経過とともにいっそう輝きを増していくような美しい花を咲かせます。
菊を背景に、秋のバラを活けて
一年の中でも、最も花色が冴える秋バラのシーズン、本当に待ち遠しいですね。
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