【命のてがみ 最終回】母になるということ

フォトグラファーのHAL KUZUYAさんのフォトエッセイ「命のてがみ」、最終回です。命を授かり、戸惑い手探りで出産と子育てを乗り越えてきたHALさん。連載期間中にお子さんもいつの間にか大きくなり、ぐいぐいと歩き、成長しています。「自分はちゃんと母親になれたのだろうか?」ーーそんな素直な気持ちを込めて、最後の“てがみ”は綴られています。

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「自分の人生のスタートは、じぶんで決めてね、わたしは、いつでも待っているから」
そう語りかけた日の夜、 思い切りお腹を蹴り、弾けるように決意表明をした「君」。

またあの時の感覚を思い出す。命の確かな意思を思い出す。
天命なのか、意思なのか。
確かな何かを持ち、その命を宿し、自ら決めた運命の世界へと
自分の意思でやってくるのだと、その時確かに感じた。

そして、わたしは 預かりものをしたのだと思う。
それは、大きな喜びと愛に満ちた大切な預かりもの。
時々、その時のことを思い返したいと思う。

大切なものというのは、いつまでもこうして胸の中にしまっておけない。
大きな成長があった今日。
初めての寝返りを見届けました。
これからどんどんと、一人で立って、歩いて生きていくんだね
君のためで、何ができるか必死で考えるけど、
正しい答えなんてないわけで
とりあえず、今日を精一杯愛するのです。

たとえいつか一人で歩かなくてはいけない時を迎えても、
たとえどんなことがあっても、しっかりと前を見つめて歩み続けることができるように。
母親になるということが、どういうことなのだろうか。
今もわからない。なれているのか、いないのか。

しかし、ただ一つ、いつも願うのは、心の底から「君」の幸せだ。
君の、君自身の人生が豊かで幸せであることだ。
こんなにも切実に、何かを願ったことは、今までの人生でなかったと思う。

きっと、多くの親が誓うように
ここに誓いたい
あなたを守ること
あなたを大切にすること
そして、ずっと愛し続けること

………………………

この手紙は、私が妊娠初期から、お腹の中の子供に宛てた日記を編集し直したものだ
最初の、感情のメモ程度のところから
だんだんと娘への手紙のような形へと変化していってこの日記
そして、今回の「てがみ」から1年、
最初の日記の日からちょうど2年目となるこの日に
この連載もとりあえず一つの区切りとなりそうだ

高齢出産という年齢での出産。リスクを感じなかったこともなかった中、
なんとなく書き残しておこうと思ったそがそもそもの始まりで、
そのあとは、もしかしたら、娘が子供を産む年齢になった時
自分が助けてあげられないかもな、ということも心によぎり
何か、書き残しておきたいと思い、コツコツと続けている

もし娘が私と同じ年齢で出産したら、私はもう、ほぼ曾おばあちゃんの年だ

毎日感じる小さなこと
その時の気持ちや、感動
悩んだこと、ためになったこと
そんなことがつらつらと毎日書かれている

いつか彼女が読むことがあるのだろうか

困ったときにでも、開いてくれるといいなと思う
私が近くに居られたら、それが一番の願いではあるけれど

豆粒だった存在が、
この世に生まれて、
自分の力で動き出し
そして、今や一人で歩いている
スタスタと、歩く後姿を追いかける時
その、力強い存在は本当にキラキラと眩しい

夫は言う
僕たちはこれから老いていくばかりだけれど
彼女は成長しかない
未来しかない
なんて眩しいんだろう

素敵な、素敵な、2年間でした
本当にありがとう
そしてこれからも
見守っていきます

2018年秋 11月12日
娘さんへ、母より

●文、写真 HAL KUZUYA
フォトグラファー。東京と京都に拠点を置き、主にファッション、広告の分野で活動中。

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