【命のてがみ #7】新生児のときは一瞬。愛おしい、夢のような時間

フォトグラファーのHAL KUZUYAさんが、妊娠、出産の体験を綴るフォトエッセイ「命のてがみ」、連載第7回目をお届けします。初めて子を持つとき、「母性」は湧き上がるものなのか？　そんなことを考える間もなく始まる子育て。新生児との、貴重な、一瞬のひとときについて。

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写真提供：HAL KUZUYA

私の中で、時を同じくして、何かが生まれてきた
それは妊娠週からすくすくと大きくなって
その小さな命を抱いた途端に、不思議な膨らみを見せた

生まれたのは、赤ん坊だけではないようだ

言葉では言い表せない不思議な感覚
この小さな存在を、なんとかして守らなければという気持ちと
どうしようもなく湧き上がる愛おしさ

母性
そんなシンプルな言葉では言い表せない

三連休の初日の早朝に生まれてきてくれた娘さん
病室のソファーに泊まり込み、夫と二人揃っての０スタートの育児が始まった
慣れない抱っこも、母乳が出ない格闘も
一緒に初心者体験することができたのは、本当に幸運だった

初めての夜泣きに、どうしたらいいかわからないのも、一緒に経験した
そして、きっと父性もこの時に生まれて、じわじわと育っていったに違いない

始めての事なのに、若葉マークをつけることさえ許されず
いきなり迫られる、いろいろな判断
模擬試験なしに、いきなり本番の受験みたいなものなのか
いや、練習無しのフルマラソンか……しかもリタイアできません
とにかく予想を上回る知らない事だらけで、頭も心も、体もいっぱい

新生児の時間は短い
そう聞いていたので、本当に一生懸命、その時間を味わいたかったのに
なんだかそんな余裕もなく
自分の回復に多くの時間を費やした気がする

それでも、時間があると、あきもせずに一日中眺めて
それでも、足りなかった、もっと抱っこしておけばよかった
あっという間に過ぎていった日々に、やはり少しの心残り

愛おしい、愛しいその手を
ずっとずっと握りしめていたいのに、
新生児の時間はほんとに一瞬
幻の様に
夢の中の様な時間