昭和モダンなSOHOスタイルがおしゃれ!築37年の倉庫兼住居物件をリノベーション
築30年以上の物件を、その風合いを生かしたままリノベーション。リノベーションのプロである〔howzlife(ハウズライフ)〕とグリーンプランニングのプロがコラボした、昭和モダニズム溢れる「古くて新しい」空間演出とは?
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昨今、個人での独立起業が増えているそう。つまり、会社に縛られず、自らのライフスタイルにフィットさせた働き方を望んでいる方も多いということではないでしょうか。そんな時流もあり、近年ではワークスペースと住居を兼ねる「SOHOスタイル」が人気を博しているそうです。
一言で“SOHO”と言っても千差万別。おしゃれな今どきのSOHO物件をイメージされる方も多いと思います。でも、ひとたび視野を広げれば、例えば近所にも家族経営の小さな町工場のような物件があったりするものです。それらの物件は昭和の時代から続く古い建物がほとんどですが、リノベーション前提で考えれば、むしろ新しい建物よりもカスタマイズする自由度が高く、しかもリーズナブルなので実は掘り出し物だったりするのです。
まさにそんな発想で、都内の倉庫兼住居物件を購入したのが、植物を使った空間デザインをプランニングする〔STEOR(ステア)〕の代表、星野ひろみさん。もともとはとある倉庫スペースを間借りして運営していたのですが、手狭になったとのことで一念発起。住居と事務所、そしてアトリエを一括したい、との想いでこの物件を購入したとのことです。
「仕事柄、創作作業が多いので、住居と一体になっているアトリエのある社屋がいいな、とは考えていたんです。加えて、お客様が打ち合わせにいらっしゃるので、グリーンプランニングのサンプル空間としての機能も持たせたかったんです。そのためにはある程度、自分のイメージ通りの空間が作れるように、リノベーションができる自由度の高い物件が良いな、と考えてここに決めました」(星野さん)
とはいえ、購入したのは築37年というかなり古い物件。昭和の香りただよう木造建築です。星野さんはどんなリノベーションイメージを抱いていたのでしょうか?
「今回、物件に合わせてリノベーションプランを立てながら、自分の気に入った家具や建具を購入していた私。それを生かしたリノベーションをと考えていたので、デザインセンスも私好みの〔howzlife〕さんに迷わずお願いしましたね。イメージ通りのおうちができあがったので大満足です」
星野さんも大変気に入っているという“昭和モダン”なリノベーションスタイル。さっそく覗いてみましょう!
古い家屋の風合いを生かした“木の温かみ”と白壁のコンビネーション
1階がアトリエとなっていて、2階部分が住居兼事務所となっている星野さん宅。住居部分の全体のトーンは、木の柱と白い壁、そして天井の白と、ウッディかつ清潔感のある白が際立つシンプルな色合いでまとめられています。
この事例は必要な柱のみを残し、他は全て新しく作り替えるという方式が取られているのですが、37年前に建てられたこの物件に合わせ、壁紙などの新建材は一切使わず、昔からある建材のみにこだわってリノベーションが進められたそうです。
例えば壁は漆喰、床はパインの無垢材、またキッチンには外壁材で使われるタイルを貼ってみたりという遊びも盛り込まれていますが、それらは全て古くからある伝統的な建材のみ。全体が醸し出す温かみは、そんなこだわりから生まれているのかもしれませんね。
さらにポイントなのは、使える柱や木材部分などはそのまま活用しているので、経年変化による色合いがとってもいいのです。ですから、これらを上手に生かすため、新しく使った建材、特に木材にはシャビーなトーンを持たせるために着色オイルで施工。もともとある古い柱としっかり色合わせをしているのだそうです。このあたりは〔howzlife〕ならではのこだわり!
また、最近DIYで使われることの多い漆喰も熟練の左官職人ならではの丁寧な仕事ぶりが見て取れる、清潔感のある仕上がりとなっている点にも注目して欲しいですね。
アンティークの家具やドア、ランプが醸し出す昭和モダニズムな香り
星野さんがお話しをしていた通り、家具やドアなどの建具、そして使われているランプは全てリノベーションプランが固まる前に星野さんの好みでチョイスされたアイテムばかり。お気に入りのアイテムを使う想定でプランが練られたので、実は引き戸のサイズが微妙に違っていたりはするのですが、その分、とっても統一感のある仕上がりとなっています。
星野さんの好みのテイストとは、’60〜’70年代のアメリカのスタイルなのだそうです。POPカルチャーと呼ばれるポストモダニズムが台頭する前の、欧州の影響がいまだに香る時代。この時代に作られたアメリカのインテリアアイテムは素材感があり、手の込んだ作りだから星野さんのお気に入りなのだとか。
これらのアイテムのアンティークな風合いを考慮に入れて、あえてシンプルにまとめたリノベーションプランとなったのだそうです。
家具や建具を最初に選んで、それに合わせてリノベーションするなんて、実はかなりのぜいたく。一度はやってみたい手法なのではないでしょうか。うらやましいですよね!
部屋数を削り、さらにオープンな作りに見えるようガラス戸を多用
このおうちのレイアウトはエントランスを入ると左手がダイニングキッチン、右手前側が応接室になっているのですが、その応接室に隣接するように右手奥にベッドルームがあります。実はこのベッドルーム、プライベートルームらしからぬ造りで、引き戸や室内窓部分は全てガラス。なかなか大胆ではありますが、これもオープンな造りにしたいという星野さんの希望でこういったカタチに落ち着いたのだとか。
実際、ダイニングキッチンと応接室は完全に分割されているので、間取りだけで見ると少し圧迫感が出てしまいそうです。しかし、応接室ともダイニングキッチンとも隣接するベッドルームがガラス戸によって抜けの良さが演出できているので実際はまったく狭苦しさは感じない、絶妙な設計となっているのです。
部屋の造りを工夫することで、仕切られていても広さを感じさせてくれる設計は〔howzlife〕の真骨頂! とも言えるポイント。限りあるスペースをより広く感じさせるテクニックを持っているのです。
キッチンや洗面にもおしゃれなこだわりと見えない工夫が
キッチンもこだわりの対面式なのですが、壁部分には外壁用のタイルを使用したり、アイアンフェンスをインテリアにしたりとアイデア満載! しかも目隠しされた奥に冷蔵庫を置くスペースも。人を呼ぶスペースでもあるために、見た目にも気を使った造りは参考にしたいですよね。
さらに洗面&浴室にも一工夫。「洗面スペースは広い方が良い」という要望のもと、拡張。柱が残ってしまいましたが、これもまた風合いがあっていいですよね。この柱を活用して物を置く棚を増設することだってできます。
部屋数を減らし、仕切り感も無くしたオープンな間取り
【リノベーション前(before)】
【リノベーション後(after)】
キッチンや水まわりスペースを拡張した他は、右側の2部屋を1部屋に減らし、エントランスと地続きの応接室に変更。リノベーション前と比べるとよりシンプルな間取りとなっていますが、実際の使い勝手にも支障が出ないように、図面上で10cm単位で幾度もトライ&エラーを繰り返した結果なのだそう。実は非常にこだわった間取りとなっています。
1階部分はボタニカルな空間が広がる〔STEOR〕アトリエ
1階部分は星野さんが代表を勤める〔STEOR〕のアトリエとなっています。もとは工場として使われていたため、リノベーションをしたのはトイレ部分の増設のみなのですが、どうですかこのアトリエとしての完成度! たくさんの植物に囲まれた、マイナスイオンを全身で感じられるようなとっても心地よい空間が広がっています。
星野さんはここで創造力溢れる創作活動を行っているのです。それってとってもぜいたくですよね。
空間のプロ同士がコラボした、センス溢れる心地よい生活空間
今回の〔STEOR〕星野邸、いかがでした? グリーンプランニング〔STEOR〕の星野さんと〔howzlife〕、空間デザインのプロ同士が出し合ったアイデアが詰まったリノベーションは、特に空間演出の面において、とても参考になるものだったのではないでしょうか。
【物件情報】
●築年数 37年
●リノベーション形態 フルリノベーション
●リノベーション面積 50㎡ ※2F
●間取り 2LDK→1LDK ※2F
●リノベーション価格 830万円(税別・物件価格除く)
●施工 howzlife
【取材協力】
STEOR
●電話 03-3474-2100
●URL http://www.steor.com/
◎書き手 藤川経雄
◎写真 塩谷佳史
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