お金を払えば「科研費」がもらえる? 研究者気分を味わえるサイエンスバーにワクワクが止まらない

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人文学、社会科学から、自然科学に至るまで、全ての科学分野のあらゆる学術研究の発展を目的として文部科学省が行っている「科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金・科学研究費補助金)」。通称、科研費。

研究者にとってはさまざまな思いが呼び起こされるものらしいが、一般人にはあまり馴染みのない制度だ。そんな「科研費」をモチーフにしたカクテルがツイッターで話題になっている。

オリジナルカクテル「カケンヒ」を提供するのは科学をテーマにしたコンセプトバー「Science Bar INCUBATOR」(東京都新宿区)。

スミレのリキュールベースを使用しているという美しい紫色のグラデーションは、科研費のロゴをイメージしたもの。もちろん文科省非公認のカクテルだが、

「実際のカケンヒと同じく甘くない仕上がり」

になっているそう。

バーの公式アカウントで2021年4月21日に投稿され話題となり、1万2000を超えるいいねを集めている(5月19日夕現在)。

このカクテルにツイッターでは、

「飲んだら科研費通りますか?」
「これ頼む時『科研費下さい』って言えるの楽しすぎるやろなぁ......」
「飲む申請、飲んでる途中の報告、飲み終わってからの報告などを書かないとならない」
「前の年から徹夜して並ばないと飲めないね」
「頼んでも20%くらいでしかもらえない、とかだとよさそう!」

といった反応が寄せられている。

このユニークなカクテルには、いったいどのような思いがこめられているのか。

また、そもそもこのカケンヒを提供している「サイエンスバー」とはどんな場所なのか......。

気になったJタウンネット記者は、その詳細を知るべく「Science Bar INCUBATOR」に取材を申し込み、オーナーの野村卓史さん(37)に話を聞いた。

白衣を着てビーカーでお酒が飲める

元々は大学で研究員をしていた野村さんが、14年3月にオープンした「Science Bar INCUBATOR」。

科学を肴にお酒を楽しむ(画像は編集部撮影)

「研究をされている方とそうでない一般の方が気軽にお話できるような、砕けた場を作りたいなと思いで、開業しました。あとは、私自身がこういう場所で遊びたかったんです。
ずっと科学を、サイエンスを肴にお酒を飲みたいな、と、そんな思いもありました」

とオープンの経緯を話す。

店内には、科学にまつわる器具や標本、雑誌などが、たくさん置かれている。

見覚えのある(?)器具たち(画像は編集部撮影)

壁際には、お客さんが着ることができるという白衣までかかっている。

なんだか、まるで理科室や研究室にきたかのようだ。

誰でも科学者気分が味わえる(画像は編集部撮影)

店内に展示されているだけではなく、ドリンクは実験用ビーカーで、フードも蒸発皿等を使って提供されるこのお店。

野村さんによれば、全て本物の実験器具を使っている。

「うちのは全部業務用のものです。本物に触れて面白がっていただきたいな、と思って。
顕微鏡とかも本物で、値段も高いんですけど、やっぱり皆さんに実際に触って楽しんでもらいたくて置いています」(野村さん)

顕微鏡もある(画像は編集部撮影)

ちなみに、お客さんの文系理系の比率は、「ほとんど変わらない」そう。むしろ、どちらかといえば文系出身の人の方が多い、とのことだった。

「科学者の頑張りを知っていただきたい」

店のことを知ったところで、あらためて今回話題となったオリジナルカクテル「カケンヒ」について話を聞いた。

紫のグラデーションが綺麗(画像は「Science Bar INCUBATOR」提供)

すみれリキュール、ジン、白ワイン、レモンジュース、ソーダをあわせて200ミリリットルのトールビーカーに入れて提供されるこの「カケンヒ」。アルコール度数は10.0%、1杯のアルコール量は18ミリリットル。科研費と同じく「それほど甘くはない」ということだが、実際はどのような味なのだろうか。

野村さんは

「スミレが香るすっきりとした味わいです。アルコールもそれほどキツくはないので、飲みやすい仕上がりになっています」

と説明する。

「完全に辛口ではなく、ほんのり甘いので、まさに『それほど甘くはない』カクテルとなってます。
このそれほど甘くはない、ところと、科研費のロゴと同じく紫色のグラデーションをしているというところが、『カケンヒ』のこだわりですね」(野村さん)

ユーモアと皮肉がよく効いたこのカケンヒ。誕生の経緯はどういったものなのだろうか。

記者が尋ねると、

「皆さん、普段は科学者との関わりがない方がほとんどだと思いますので、科学者が普段どんな感じで頑張っているのか知っていただきたい、との思いがありました。
科研費って、皆さん一生懸命書類を書いて申請する研究費なんですよ。これを取るために、みんなすごく頑張って書類を書いて、頑張って研究するんです。
だから科学者にとっては酸いも甘いも入り混じったいろんな感情が思い起こされるものなんです」

と野村さんは答える。

オーナーの野村卓史さん(画像は編集部撮影)

このカケンヒの楽しみ方については、

「一般の方には、科学者がそういうものを頑張ってやっているんだなというのに思いを馳せながら飲んでもらえたらな、と思います。
当事者の方にもカケンヒくださいって言ったらカケンヒがくるのを楽しんでもらいたい、それを面白がってもらいたいですね。うちはお金を払ってもらえればカケンヒがもらえるというすごく怪しい感じになってますので」

と笑顔で語った。

試験管でワインを飲み比べ

「Science Bar INCUBATOR」にはこれ以外にも、生物学専攻の野村さんの知識をふんだんに盛り込んだ個性豊かなメニューがたくさんある。

コンセプトだけでなく、「味」にもこだわる野村さんにドリンクとフードのオススメメニューを聞いてみた。

「バーとしての質も高くありたい」との思いで、ワインソムリエの資格も取得した野村さんが

「見た目的にも面白く、飲食店としても合理的かと思います」

としていたのが、このワインの飲み比べセットだ。

楽しそう(画像は「Science Bar INCUBATOR」公式ツイッターより)

赤か白か好きな方を選び、4種類のワインを飲み比べられるこのセット。

試験管を立てる器具を使うことで、より比較しやすくなるのだという。

「こういうのを使うと、微妙な色の違いとかも分かるんですよ。ワインも、見比べると結構色が違っていて、そういうのが楽しめます。
無理に使うわけではなくこういう必然性を持って、器具を使っていきたいなとも考えてますね」(野村さん)

ちなみに、飲むときはおちょこのような小さなビーカーを使う。そちらの方が香りもとりやすいから、とのことだ。また、

「中には、面白がって試験管を直接嗅いだりされる方もいらっしゃいますね。そういうときは、じかに嗅いじゃダメなんだよ、なんて言い合ったりしています」

とのこと。皆さんも中学校の理科の実験の時に、「薬品のにおいは直接嗅いではいけない」と言われたことがあるのでは?そんな思い出もよみがえってきそうだ。

フードのおすすめは「アルコールランプ炙り」。

スルメイカやほたて貝ひも、エイヒレ、ゴーダチーズ、マシュマロ串を、アルコールランプを使い、自分で炙って食べることができるというまさに実験気分を味わえるメニューだ。

アルコールランプで炙る(画像は「Science Bar INCUBATOR」公式ツイッターより)

「自分の加減で、好みにあわせて炙れるので楽しいです。炙りたての柔らかくて美味しい状態で食べられるという合理性を求めたメニューになっていると思います」

と野村さん。

また、燻製の煙でシャーレを満たしたインパクト抜群の「バニラアイス けむり味」もオススメ。

実験っぽい...!(画像は「Science Bar INCUBATOR」公式ツイッターより)

「燻製の香りって燻製を食べたことあるひとはだいたいイメージがつくと思うんですけど、これは香りとは別にちゃんと味がつくんです。実際に食べていただけばわかると思うんですが、これがすごく美味しいのでオススメですね」(野村さん)

他にも、科学をモチーフにしたオリジナルカクテルや、実験気分を味わえるドリンク、フードが多数揃っていた。また、専門家を招いたサイエンストークイベントも不定期で行っているそう。

これは何度でも通いたくなってしまう......!

世の中が落ち着いたらぜひ文系も理解も関係なく楽しめる「Science Bar INCUBATOR」で、科学を肴に飲みたいものだ。

なお、現在は東京都の緊急事態宣言を受け、5月末まで営業を休業中。今後も要請に従う方針とのため、詳しい営業状況については公式ウェブサイトかSNSをチェックしてほしい。

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