
鉄筋コンクリート構造・地上3階建てなのに2000万円台!「リブハウス」という名の住宅
鉄筋コンクリート構造・地上3階建て・ホームエレベーター付き・建築家がデザインする世界に1つだけの家…。漠然と「高額なイメージで自分たちには手が届かない…」と諦めてしまいがち。しかし、これらの条件をすべて満たした住まいが、思いがけず身近な存在になるかもしれません。建築家が自らの、そしてご両親と暮らす住まいとして具現化した家づくりご紹介します。
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体が不自由な母親のために導入したホームエレベーター
「築40年くらい経った自宅を思い切って建て替えることになったとき、真っ先に考えたのは両親のことでした」と語るのは、上原和建築研究所代表の上原和さんだ。
あたりまえのことだが、上原さんが年を取るにつれて、ご両親も年齢を重ねていく。せめてもの親孝行として、"育ててくれた両親のために居心地の良い空間を提供したい"と思うのは、当然の思いだろう。そして、上原さんのように建築家という立場であればなおさらだ。そこで、まずはご両親が求める理想の住まいについてヒアリングを行ったという。
「ヒアリングしてみたんですが、両親から"こういう家にして欲しい"といった要望は特にありませんでした。自宅周辺は3階建ての家が造れる環境なんです。せっかく建て替えるのなら、日当たりが良好で、眺望が良い場所で生活して欲しいという思いがありました。しかし、母親は体が不自由で、移動には車いすが必要なケースもあります。そうなると、階段を登り降りするのは大変ですから、ホームエレベーターが設置できる家にしようと考えたのです」と上原さんは語る。
40年近く木造建築の家で暮らしていた上原さんのご両親。完成した上原邸は、コンクリートを打放し仕上げにしたモダンなお住まいへと生まれ変わった。上原さんによると「父親は、設計している段階である程度は完成した状態をイメージできていたようなんですが、母親はさすがに驚いていたみたいです(苦笑)」とのことだ。
構造フレーム(リブ)を組み合わせつつ、あえて空間を区切らない家づくり
上原邸は鉄筋コンクリート構造・地上3階建てという造りだ。袖壁と梁型で構成される構造フレーム(リブ)から"リブハウス"と名付けられた。1階から3階まで吹き抜け構造になっている。さらに各フロアが6つのエリアに区切られており、仕切る壁や扉がないのだ。その結果、驚くほど開放的な空間が広がっている。
「外部から自然の恩恵をどこまで取り込めるかという点を重視しています。室内を吹き抜けにして、上層階から光を取り入れることで、冬場は少しでも多くの日光を取り込めるようにしてあります。その反面、夏場は室内の熱気を3階にあるトップライトから排出できる構造となっており、吹き抜けでありながら、煙突のような役割を果たしているんです」と上原さんは語ります。
1階は上原さんの設計事務所である"上原和建築研究所"としての役目を果たしている。「それぞれのデスクからミーティングスペースに行き来するなど、地中の梁型をむき出しにすることで、"またぐ"という動作が生まれます。玄関を開けると、目の前にあるのがホームエレベーターです。このエレベーターは、鉄板の素地がむき出しになっています。建物自体が"素材むき出し"なので、エレベーターもあえて塗装しないで組み込んであるんです」と上原さん。
2階はバスおよびベッドルームをはじめとして、オーディオや上原さんご自身の趣味である釣り道具が置けるホビールームという構成だ。「2階はあえて天井高を低くしてあります。バスルームは、入浴時にカーテンを仕切って使います」とのことだ。そして3階はご両親のお住まいとなっている。「エレベーターから降りてすぐにあるのがベッドルームです。キッチン、ダイニング、そしてリビングルームまで、特に母親が車いすでも移動しやすいように心掛けています」と上原さん。
施主の方が打ち合わせなどで事務所を訪れる機会も多い。そうなると、必然的に上原邸がショールームのような役目を果たしているようだ。「もともと、鉄筋コンクリート構造・打放し仕上げのお住まいにご興味がおありの施主様はもちろん、そうではない方でも2階、3階のフロアにご案内することがあります。例えば、施主様がどのレベルまで開放的な空間を望んでいらっしゃるのか?実際に現物をご覧いただくことで初めて分かることもありますね」と上原さんは語ります。
一見するとシンプルに見える上原邸だが、よく見ると、実は適度な緊張感があることに気づく。上原邸全体から感じられる凛とした清々しさは、上原さんの細部に至るまで計算されつくしたこだわりがあってこそ実現しているようだ。
「私たちの表現方法のひとつに"シークエンス(連続)"というやりかたがあります。シンプルな構成のなかに、豊かな空間づくりを創りだすことを意識しました。その一方で、Pコン(プラスチックコーンの略。コンクリートの壁面にある丸い窪み)やコンセントのレイアウトなど、施主の方ですら気がつかない、あるいは気になさらないという場合でも、建築家は決して手を抜いてはならないと考えています。施主の方が、具体的には表現できないけれど"何となくいいね"と感じていただける空間が表現できたら、それだけで大成功だと思いますね」と上原さん。
施主、そして建築家の双方が、妥協したり、諦めてしまうことは簡単だ。上原さんのこだわりと創意工夫があれば、鉄筋コンクリート構造・地上3階建てとは思えないほどリーズナブルな予算で実現できる可能性を秘めている。夢と憧れでしかなかった理想の住まいは、少し視点を変えれば、意外なほど身近な存在になるかもしれないのだ。そのことを「リブハウス」という名の住まいが証明してくれている。
撮影:鳥村鋼一
上原 和
上原和建築研究所
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