部屋に!リゾート感を盛りあげる観葉植物「ヤシ」の育て方
真っ白な砂浜と紺碧(こんぺき)の海、澄んだ青空に向かってまっすぐに伸びるヤシの木……「南国リゾート」と聞いて真っ先にイメージする風景ではないでしょうか。南の島のイメージが強いヤシですが、主に亜熱帯から熱帯にかけて世界中の広い地域に生息していて、日本国内にも自生している種が存在します。また、小型のものは観葉植物としても親しまれているのです。お部屋にリゾート感を演出するヤシの種類や育て方など、まとめてみましょう。
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【目次】
・南の島に限らず、世界中に約2400種ものヤシが存在
・おすすめの観葉植物ヤシの種類は?
・南国生まれで寒さに弱い?ヤシに適した環境は?
・ヤシの水やり、肥料、剪定(せんてい)など日常管理は?
・種類別ヤシの増やし方
・まとめ
南の島に限らず、世界中に約2400種ものヤシが存在
➢ 世界中に広く分布しているヤシ
ヤシは「ヤシ目ヤシ科」に属する単子葉植物で、熱帯から亜熱帯の地域に広く分布しています。一般に「ヤシの木」というと、数十メートルの高さにまでまっすぐに幹を伸ばした大型な「ココヤシ」を思い浮かべがちですが、実はその他にもさまざまな品種があります。
その数や189属約2400種ともいわれ、卓上に飾れる小型サイズの「テーブルヤシ」から「ココヤシ」まで、サイズも樹形も多岐に渡っています。多くのヤシが鳥の羽根のような、あるいは手のひらのように広がった形の葉を展開していて、独特の樹形をしているのが特徴です。
➢ 日本国内にもヤシは自生している!
ヤシといえば、街にリゾート風のテイストを加える街路樹として、国内でも広く採用されています。こうした街路樹のヤシは、耐寒性の外来種である「カナリーヤシ(フェニックス)」であることが多いようですが、「シュロ」が採用されているケースもよく見かけます。
このシュロをはじめ、ヤシの中には「クロツグ」や「ビロウ」「ニッパヤシ」のように、日本国内で自生している種もあるのです。日本国内に自生しているヤシの種は7種あるといわれています。
➢ ヤシは幅広く利用されている
「ココナツ」や「ナツメヤシ」などの実は、食用に利用されます。その他にも、「サトウヤシ」や「ニッパヤシ」の樹液を煮詰めたパームシュガーや「油ヤシ」の果実から採取するパーム油などがあり、ヤシは幅広い用途で古くから人類に活用されてきた歴史があります。
熱帯の島嶼部(とうしょぶ)では大型のヤシの葉が家屋の屋根を葺(ふ)くのに使われたり、丈夫な繊維を生かして縄やホウキ、傘やうちわなどに加工されたりしています。また、古代のインド、ビルマ(ミャンマー)、タイ、セイロン(スリランカ)などでは、ヤシの葉を短冊状に切ったもの(貝葉、貝多葉、貝多羅葉)が紙代わりに使われており、鉄筆で経文を写したものなどが残っています。古くからヤシは人間にとって身近な存在の植物だったのです。
➢ 観葉植物としても人気を集めるヤシ
世界中に多数の種類があり、さまざまに活用されているヤシですが、観賞用の観葉植物としても一定して高い人気を誇ります。高さ2メートル程度を超えて大きくならない品種が鉢植えとして多数流通しているほか、庭に植えられる園芸品種や卓上で鉢植えを楽しめる小型な品種など、さまざまな品種が幅広く流通しているのです。
おすすめの観葉植物ヤシの種類は?
さまざまな種類が存在するヤシですが、観葉植物として栽培するのに適しているのは比較的小型で樹高も高くなりすぎないものでしょう。現在、定番として市場に流通しているものを中心に、観葉植物としておすすめのヤシの品種をご紹介してみましょう。
➢ 小型で栽培しやすい「テーブルヤシ」
メキシコから南アメリカにかけて、約100種が分布するヤシの仲間です。「テーブルヤシ」は属名の和名で、正式な学名は「チャメドレア属」となっています。「チャメドレア」は「小さなプレゼント」という意味で、何れにしてもその小型性を感じさせる命名です。数ある「テーブルヤシ」のなかでも、もっとも広く流通しているのは「エレガンス種」という種で、単に「テーブルヤシ」というとこの種を指すことが多くなっています。
小型とはいえ、あくまでヤシの仲間内では小型という意味で、樹高は「エレガンス種」で2メートル、種によっては3メートルほどにまで育つことがあります。とはいえ、あまり大きく育ちすぎた「テーブルヤシ」は見栄えが悪く、観葉植物としての価値は損なわれます。ヤシの仲間にしては強い光を嫌う種類で、0度くらいまでの耐寒性も備えています。
➢ インテリアグリーンとして人気の「アレカヤシ」
細長い葉を優雅に広げた「アレカヤシ」は「コガネタケヤシ」とも呼ばれ、ヤシのなかでもインテリアグリーンとして最も広く親しまれている種類なのではないでしょうか。卓上サイズの小鉢から大鉢で仕立てたものまでさまざまなサイズの「アレカヤシ」が流通しています。
アフリカやマダガスカルの熱帯に自生する種で、野生では樹高10メートルにまで生育します。葉色は淡緑色ですが、肥料不足や根詰まりになると黄色味を増してしまいます。
➢ 戸外で越冬可能な日本の自生種「シュロチク」
細い葉が涼やかな雰囲気を醸し、南国ムードが強く感じられる他のヤシとは一線を画すスタイルが特徴の「シュロチク(棕櫚竹)」。江戸時代に中国から日本に入ってきたとされる種で、和風や中華風のインテリアにもよく合うことから、旅館や飲食店などにも広く採用されています。葉に黄色の斑(ふ)が入る「フイリシュロチク」も人気です。
寒さに強く、暖かい地域であれば戸外での越冬も可能。日陰にも強いので、室内でも十分丈夫に育てることができます。
➢ 実を割って伸びる幹がユニーク!「ココヤシ」
いわゆるヤシの木としてイメージされがちな「ココヤシ」で、本来は樹高10〜30メートルになりますが、1メートル未満の若い苗が観葉植物として親しまれています。ココナッツの実から芽を出した苗が夏ごろに市場へ出回りますが、鉢土の上に乗せられたココナツの実から殻を割って伸びる幹がユニークで、インテリアグリーンとしても人気を集めています。
鉢植えで育てる際にはあまり根を張らず、極端に大きくなることもありません。日本国内ではひと夏かせいぜい3〜4年楽しめれば十分といわれていますが、これは「ココヤシ」が寒さに弱く、日本の気候に合わないためです。長く育てたい場合は真冬でも温度を15度以上に保った暖かい室内で栽培するのがおすすめです。
➢ 丈夫で強く元気な「ケンチャヤシ」
見た目は「アレカヤシ」と似ていますが、「アレカヤシ」より丈夫で育てやすいヤシが「ケンチャヤシ」です。水平に葉をつける「ヒロハケンチャヤシ」や「メキシコケンチャヤシ」がありますが、寒い場所や日陰でも元気に育つので、オフィスなどで見かけることもよくあります。
➢ 「竹」ではなくヤシの仲間の「カンノンチク」
「カンノンチク(観音竹)」という名前から「竹」の仲間と思われがちですが、実はヤシの仲間です。福を呼ぶ縁起のよい植物として知られており、新築祝いや開店祝いなど、お祝いごとのギフトとしてよく贈られます。
➢ うちわのような葉が個性的な「ビロウヤシ」
うちわのような形の面積の広い葉が特徴的な「ビロウヤシ」。寒さや日陰に強く、室内でも十分に育てることができる「ヤシ」として、人気を集めています。葉柄に棘(とげ)があるので、手を触れる際には注意が必要です。
南国生まれで寒さに弱い?ヤシに適した環境は?
➢ 多くのヤシは寒さ、日陰が苦手!
おもに熱帯、亜熱帯の暑い地域に分布するヤシは、当然のことながら寒さに弱い品種が多くなっています。品種によっては0度まで耐えるものもありますが、多くは15度程度の気温は必要で、冬の霜にあたると枯れてしまいます。また、日陰でも栽培することはできますが、丈夫な株を育てるためには日光にあてることが必要不可欠。室内でも日当たりの良い場所に置くようにしましょう。
➢ 同じヤシでも耐寒性、耐陰性が高い、育てやすい種も
ヤシのなかでも「テーブルヤシ」や「ケンチャヤシ」は特に耐寒性・耐陰性ともに優れていて、日本の気候でも育てやすい種類です。明るい室内で鉢植えを楽しむことが可能となっています。また、「シュロチク」のように、暖かい地域であれば戸外で越冬させることができる種類もあります。逆に寒さに弱い「ココヤシ」などは、日本国内では長く育てることが難しいようです。ヤシを育てる際には、お住まいの地域の気候に合わせて、適した種類を選ぶことも大切です。
ヤシの水やり、肥料、剪定など日常管理は?
ヤシは水はけの良い用土に植えつけ、鉢土が乾くたびにたっぷり水を与えます。水切れすると枯れてしまうので、特に春から秋の成育期には土の状態をよく観察して、適切な頻度で水やりを行いましょう。
冬になり、気温が下がるとヤシは休眠状態となるので、たっぷりの水は必要ありません。むしろ乾燥気味に育て、根腐れさせないようにしましょう。葉の色つやをよくするために、年間を通して葉水を施すこともおすすめです。
➢ ヤシの肥料は成育期に2ヶ月に1度
5〜10月の成育期の間は、2ヶ月に1度のペースでゆっくりと効く緩効性化成肥料をヤシの根元に与えます。下葉が茶色味を帯びて枯れてきたら、そのままつけておかず早々に根元から切り取り、鉢底から伸び出た根は早めに切り落としましょう。
➢ 成長にあわせて植え替えを!
生育が盛んなヤシを鉢植えで育てる場合、成長ペースに合わせてひとまわり大きな鉢に植え替えて、成長を妨げないようにするとよいでしょう。鉢の底から根の先が伸びてきたり、水を与えても土が水を吸い込まなくなったりしたら、鉢内に根が張りすぎていないか確認し、植え替えに適した5〜8月を待って植え替えます。
種類別ヤシの増やし方
ヤシは種まき、株分けや取り木、挿し木によって増やすことができます。種類ごとに向いている増やし方は異なります。
➢ 種まき
一般的なヤシの増やし方が種まきです。5 〜8月あたりの時期に種をまき、暖かい場所に置いておくと発芽します。ある程度大きくなったら用土に植え替えましょう。
➢ 株分け
アレカヤシなど複数の株が株立ちする種類のヤシでは、株分けで増やすのもおすすめです。鉢をはずし、根についた土を落としてから、数本ずつに茎を分け、手やナイフで根を分けていきます。分けた株はそれぞれを用土に植えつけ、暖かい日陰で管理します。新芽が出てきたら、徐々に日なたへ移動させましょう。株分けに向くのも5〜8月あたりの時期です。
➢ 取り木・挿し木
テーブルヤシのような種類では、大きな株に育つと幹や葉柄の部分に根が出てきます。この部分を切り取ることで取り木や挿し木を行うことができます。取り木や挿し木も春から夏にかけてが最適期です。
まとめ
濃い緑の葉をいっぱいに広げた姿がリゾートならではの開放感を演出してくれるヤシ。熱帯の植物だから日本での栽培は難しいと思われがちですが、ポイントをおさえれば自宅でも十分に育てることができる種類も多くあります。ひと株でお部屋のムードをガラリとトロピカルに変えてくれるヤシをインテリアに取り入れて、ぜひ南国ムードを味わってみてください。
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