
自動車保険の「長期契約」とは?メリットとデメリットを徹底解説
ディーラーで自動車を契約した後、自動車保険の「長期契約」を勧められたことはないでしょうか。長期契約のメリットを聞かされて、ついついそのまま長期契約をしてしまったという方もいるかと思います。しかしこの自動車保険の長期契約は、実際に保険を利用する契約者にとってはメリットとデメリット、どちらもあるものなのです。今回は、通常の1年契約と長期契約の違い・長期契約のメリットとデメリット・長期契約に向いている人と向いていない人、などについて解説していきます。もしかしたらあなたにとって長期契約は、デメリットもたくさんあるかもしれません。ぜひチェックしてみてください。
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自動車保険の1年契約と長期契約の比較
通常の1年契約と長期契約は、一体どんな部分が違うのでしょうか。項目ごとに比較してみましょう。
●保険期間
通常の自動車保険は保険期間が1年であるのに対し、長期契約では3年から最長7年まで契約が可能です。
●保険料
同じ保険会社で比較すると、長期契約の場合は長期割引が効く場合があるので、若干安くなることがあります。
●等級
1年契約の場合、1年間無事故で保険を使わなければ、次年度に1等級上がります。
長期契約の場合、保険料の割引に関しては2年目、3年目と、1つずつ上の等級「相当」として扱われ、割引が受けられます。しかし実際に等級が上がるのは次に契約更新をした後で、一気に上がる仕組みになっています。
●販売チャンネル
通常の1年契約の場合は代理店型・ダイレクト型共に販売していますが、長期契約の場合は代理店型のみ、しかも一部の保険会社でしか取り扱っていません。
長期契約のメリットとデメリット
【長期契約のメリット】
●事故を起こした時の等級アップ(保険料アップ)を先送りできる
事故を起こした後に保険を利用すると、保険料の割引制度であるノンフリート等級が次年度の契約から一気に3段階ダウンします。
しかし長期契約の場合、契約中は等級が下がることはなく、契約満了の次の年から等級がダウンします。しかも契約中にダウンしていた等級は回復していますから(1年に1等級上がる)、3年契約の場合は、4年目に1等級ダウンするだけで済みます(下図参照)。
4年目が6等級なのは1年契約も3年契約も同じですが、2年目、3年目の等級がキープできる分、3年契約の方が保険料は安く済みます。
●有利な割引条件を保険期間中キープできる
1年契約の場合、事故や違反でゴールド免許でなくなってしまった場合、次の年の契約時にはゴールド免許割引が使えません。
しかし長期契約の場合、契約中の契約内容は変わらないので、ブルー免許になったとしても、次の更新時まではゴールド免許割引の恩恵を受けることができます。
また、例えば今後消費税が増税された場合も、契約中は条件が変わらないので、契約を更新するまでは影響を受けません。
●料率改定による保険料アップを次回更新まで回避できる
保険料の料率は、全国的な交通事故率が上がったなどさまざまな要因でアップすることがあります。
しかし長期契約であれば、契約を更新するまでの間は保険料がアップせずに済みます。
●毎年更新手続きをする必要がない
契約満期のお知らせは保険会社から毎年来ますが、自動車保険の更新は意外に面倒なものです。特にダイレクト系の場合は、全て自分で手続きを行わなければならないのでより手間がかかります。ですが、長期契約であれば更新手続きは数年に1回なので、更新の手間がかかりません。
【長期契約のデメリット】
●料率改定による保険料ダウンの恩恵を次回更新まで受けられない
保険料は料率改定により、アップすることだけでなくダウンすることもあります。しかし長期契約の場合、次の契約更新までそのメリットを受けることはできません。
●有利な割引条件が新設されても保険期間中は利用できない
これもメリットの裏返しなのですが、新しく有利な割引条件ができても、保険期間中はその割引を利用することはできません。
最近では徐々に装備する車が増えてきた自動ブレーキの割引が挙げられますが、長期契約の場合、割引が受けられるのは数年後となってしまいます。
●他社に乗り換える場合、「始期日」ちょうどでないと乗り換えができない
他社で魅力的な自動車保険が発売されたので乗り換えようとした場合、1年契約であればいつでも解約して乗り換えることができます。しかし長期契約の場合、保険の「始期日」でないと乗り換えができないことになっています。つまり長期契約を始めたのであれば、その後1年間は乗り換えることができないのです。
●ダイレクト系の自動車保険に乗り換えづらい
保険料が安いダイレクト系の自動車保険に乗り換えようと思っても、長期契約の場合は難しいことがあります。そもそも長期契約を解約した後、それを引き継げるダイレクト系の保険会社はほとんどありません。また引き継げる保険会社でも、ダイレクト系のメリットであるネット申し込みをすることができないことがほとんどなので、ネット割引も利用できません。
●途中解約すると等級は1年目のまま据え置かれてしまう
長期契約では、例えば6等級で始めた長期契約の場合、2年目の保険料は「7等級相当」、3年目は「8等級相当」で計算され、割引が適用されます。しかし等級自体は6等級のままで、4年目に契約した時に3等級上がり、9等級になります。そのため例えば3年目で途中解約してしまうと、次の契約はまた6等級で始めなくてはいけなくなってしまうのです。
●保険期間中に条件変更することができない
1年契約の場合、家族全体を補償するタイプから夫婦2人だけを補償するタイプに変えたり、26歳以上を補償するタイプを30歳以上の補償に変更すると保険料の割引が受けられます。しかし長期契約の場合は、結婚などで家族構成が変わったり、被保険者が年をとったりしても保険期間中に条件変更をすることはできません。
●長期契約は元々の保険料が高い
長期契約にすると若干の割引が受けられることもありますが、代理店型の自動車保険の場合はダイレクト型に比べて元々の保険料が高いので、トータルの保険料としては高くなります。長期契約のメリットと比べて、この点をどう捉えるかがポイントです。
●何度も事故を起こすと、次回更新時に一気に保険料が上がってしまう
長期契約の場合、事故を起こして保険を使ってもその時点では等級が下がらないので、ついつい気軽に保険を利用しがちです。しかし、例えば3年契約の1年目に6等級で2回事故を起こした後に保険を利用すると、4年目の更新時には3等級になってしまいます。3等級の場合は割引ではなく、保険料が「加算」される対象なので、一気に保険料がはね上がることになります。
長期契約が向いている人・向いていない人
【長期契約に向いている人】
●家族構成や年齢条件などに変更がある人
家族構成が変わったり、年を取って年齢条件が変わったりして割引が受けられそうな人は、長期契約に向いていません。特に保険料が非常に高い20歳前後の人の場合、21歳と26歳を過ぎると、それぞれ保険料がぐっと安くなります。長期契約で高い保険料を固定してしまうのは避けたほうが賢明です。
●保険料の安さを追求する人
長期契約に対応している代理店型の自動車保険は、保険料が高いのが難点です。そのため特に保険料の安さを追求する人には向いていません。
【長期契約に向いていない人】
●毎年の更新手続きが面倒だという人
長期契約の一番のメリットは「数年間更新手続きをしなくてよい」ことです。毎年手続きをするのは面倒くさいと考える人には向いています。
●家族構成や年齢条件などの変更がない人
35歳以上になると、年齢条件による割引カテゴリーがなくなります(保険料自体はその後も年齢によって変わります)。そのため結婚をしていて年齢もある程度に達している人は、長期契約のデメリットが少ないので向いていると言えます。
●現在はゴールド免許だが、次回の保険更新時にはブルー免許になってしまう人
違反をしてゴールド免許がブルー免許になってしまうことが分かっている人は、ゴールド免許のうちに長期契約をすれば、数年間はゴールド免許割引の恩恵を受けられます。
手間をとるか、保険料をとるか? 自分にあった契約方法を
補償内容が同じであれば、多くの人は保険料が安い方を選択すると思います。長期契約に対応し、更新手続きなども丸投げできる代理店型は楽ですが、ダイレクト型と比べるとかなり保険料に差があります。
契約中に割引の指標となる等級が下がらないのが長期契約のメリットですが、元々の保険料がダイレクト型に比べて高いので、ダイレクト型より保険料が安くなることはありません。結局、「更新手続きをしなくて済む」という手間を選択するか、保険料の安さを選択するかの違いということです。
今回紹介したメリット・デメリットをよく検討し、自分にあった契約方法を選んでください。
プロフィール
杉浦 直樹
AFP FP2級
元歌舞伎役者のファイナンシャルプランナー。以前ソニー生命に勤務していたため保険商品に強い。
JSA認定ソムリエの資格も持つ
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