
自動車保険の保険料を確定申告で申告すると税金は安くなる?
確定申告あるいは年末調整の際、保険料控除の書類を提出した経験があるという方は多いのではないでしょうか。保険料控除の手続きをすると、その分税金が安くなったりお金が戻ってきたりするため、確定申告の際には忘れず利用したい制度です。
この保険料控除は、すべての保険が対象となるわけではありません。では、自動車保険についてはどうでしょう。今回は、自動車保険をはじめとした保険料に関する控除の仕組みについて解説します。今年の確定申告・年末調整までに確認しておきましょう。
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自動車保険の保険料、確定申告で保険料控除の対象となる?
結論から申し上げれば、自動車保険の保険料は、年末調整や確定申告の際、「保険料控除の対象」とはなりません。ただし、法人や個人事業主の方であれば、経費(損金)として、自動車保険の保険料を収入額から差し引くことができます(後述します)。
ではなぜ、自動車保険の保険料は確定申告で保険料控除の対象とならないのでしょう。
保険控除の対象とならない理由
まず所得控除は、それぞれの人の収入や家族構成、家庭の事情などを考慮し、税金を負担する力(担税力)に応じて、なるべく公平に税額を計算するため、政策や公益上の目的で設けられている制度です。
これらの目的のため、税金を計算する際の所得(課税所得)から、所得税法で定められた費用を差し引くというのが、所得控除の役割です。
しかし、自動車保険の保険料については、控除対象とする法律はありません。それはなぜなのかはっきりと理由が示されているわけではありませんが、車を運転できる人は免許を持っている人に限られること、また、生活保護を受けている人は原則自動車を保有できないことなどが関係しているようです。
つまりこれらを整理すると、国は自動車を生活必需品でないと考えているといえます。控除対象とすることは税金の優遇であり、その公益性・必要性はないという判断なのでしょう。
確定申告で、保険料控除の対象となる自動車保険以外の保険
一方で生命保険料控除(所得税法76条)や地震保険料控除(同77条)など、年末調整や確定申告の際、控除対象となる保険もあります。
万一のとき、あるいは病気やケガ、さらに老後の生活に対して、国からは公的年金や健康保険などの社会保障を受けることができます。しかし、それだけで十分とはいえないケースもあります。
この不足分を自助努力で補う方法のひとつが、生命保険(・医療保険・個人年金保険)です。これは、最低限度の生活を保障するという、憲法に定められた国の役割の一部を、私たちが負担しているといえます。
これが、生命保険の保険料が優遇される根拠と考えられます。所得などに応じて負担する年金保険料や健康保険料など、社会保険料が控除対象となっているのも同様の理由といえるでしょう。
また地震保険料は、国民に地震に備えとして保険で備えてもらいたいという、政府の意向もあり、優遇の対象となっているようです。
生命保険料控除
生命保険料控除には、(一般)生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険控除の3種類があります。控除対象となる保険の保険料を支払った場合、それぞれ最高4万円、合計12万円まで、税金を計算する際の所得から控除されます。
*契約日が平成23(2011)年12月31日以前の契約(旧契約)では、(一般)生命保険料控除と個人年金保険料控除の2種類の分類で、控除額はそれぞれ最高5万円、合計10万円です。旧契約には現在でもこの上限が適用されます。ただし、同じ分類の中で旧契約と新契約の両方で控除を受ける場合には、4万円が上限です。
確定申告や年末調整で、控除対象となる主な保険種類
1. 一般生命保険料控除
・生命保険(定期保険・収入保障保険・終身保険・養老保険など)
2. 介護医療保険控除
・医療保険・がん保険
・介護保険
・就業不能保険
・傷害保険
(契約日が平成23(2011)年12月31日以前の契約は一般生命保険料控除の対象)
3. 個人年金保険
・個人年金保険(以下の条件を満たす税制適格年金に限る)
●税制適格年金の条件
1. 保険料の払込みをする者、またはその配偶者が年金の受取人となる契約
2. 10年以上にわたり定期的に保険料を支払う契約
3. 年金受取人が原則満60歳になってから年金が支払われるもので、年金支払期間が10年以上の定期または終身となる契約
地震保険料控除
地震保険の保険料を支払った場合には、以下の金額が税金を計算する際の所得から控除されます。
●地震保険料控除額
年間保険料5万円以下:支払った保険料の全額
年間保険料5万円超:5万円
地震保険は最長で5年契約ができ、保険料を5年分一括で払った場合には、確定申告、または年末調整によって、毎年1年分に相当する保険料に対して控除を受けることができます。ただし、たとえ支払った保険料が5万円以下でも、その年にまとめて控除を受けることはできません。
自動車保険の保険料を支払って税金が安くなることはある?
冒頭でも述べたように、自動車保険の保険料は「保険料控除の対象」とはなりません。
ただし、法人や個人事業主の方が、「事業のために」使う車の自動車保険の保険料は、「経費(損金)」という形で、収入から差し引くことができます。
個人事業を営み、事業のために自家用車を使っているという場合には、事業に使用する割合に応じて自動車保険の保険料の一部を経費とすることができます。確定申告の際には、その割合(用途割合)から経費とする金額を計算するため、事業に使用するおよその日数や時間などを把握しておきましょう。
ちなみに所得控除も経費も、収入から差し引くことで課税される所得額が減り、税金が安くなる効果は同じです。経費(損金)とできる保険料については、税理士や税務署などとも相談して、適切に申告するようにしましょう。
自動車保険と保険料控除について正しい理解を
自動車保険の保険料は、年末調整や確定申告の際、保険料控除の対象とはなりません。そのため、支払った自動車保険の保険料で税金が安くなる可能性があるのは、保険料を経費や損金にできる法人や個人事業主の方に限られます。これに該当する方は、確定申告の際に申告漏れのないようにしましょう。
一方で、補償内容を見直したり、保険会社を比較したりすれば、誰にでも「これから支払う保険料」を下げられる可能性があります。保険料控除について理解するとともに、これから支払う保険料を下げることについても、一度考えてみてはいかがでしょう。
プロフィール
竹国弘城
証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナー(FP)として独立。金融商品を販売しない独立系FPとして、企業の利益ではなく相談者の利益を第一に考え、その場しのぎで終わらない、自分のお金の問題に自分自身で対処できるようになるためのコンサルティングを行う。1級FP技能士。
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