
生命保険金は遺産分割の対象なの?一般的な解釈についてお話します
相続に関連して、生命保険金(死亡保険金)の話題もよく見られます。相続人の方にとっては、生命保険金が「遺産に含まれるのか」「含まれないのか」といった内容はとくに気になることでしょう。そこで、この記事では「生命保険金が遺産分割の対象になるのか」などについてお伝えいたします。この記事が相続時の疑問解決に役立てば幸いです。なお、本記事ではあくまでも一般的な情報にとどめて説明しています。
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生命保険金は遺産分割の対象となるのか?
「生命保険金(死亡保険金)は遺産分割の対象として扱われるのか」といった疑問が解消されないと、相続人の方にとっては大きな不安かと思います。そこで法律上、生命保険金がどのように扱われているのかについて確認していきましょう。
●生命保険金は原則として相続財産にはならない
生命保険金(死亡保険金)は「受取人本人の固有財産」として考えられているため、相続財産は含まれないという決まりになっています。つまり、遺産分割の対象にもならないと決まっています。このように決まっている理由は、生命保険金が受取人に直接支払われるからです。そのため、原則として生命保険金は相続財産にはならないと考えておいて良いでしょう。
なお、中には受取人を被相続人自身としている場合や受取人を設定していない場合もあるかと思います。こういった場合でも相続財産には含まれないというふうに決まっています。また、保険金の受取方法については、受取人が被相続人の場合は相続人が生命保険金請求権を取得し、受取人を設定していない場合は生命保険契約の内容に従うというのが一般的です。
●生命保険金の遺産分割について事例で考えてみましょう
ここでは父親が亡くなっている家族で、母親と子ども2人のケースを考えてみましょう。そして、母親の遺産総額は5,000万円で、長男を受取人にした500万円の生命保険も結んでいます。なお、遺言などはなく、法定相続分にしたがって遺産分割するものとします。
このとき、もし母親が亡くなってしまったら、相続財産は「5,000万円」と「5,500万円」のどちらとして考えればいいのでしょうか。結論からいうと、「5,000万円」が正しいといえます。生命保険金は相続財産に含まれないためです。このケースでは子ども2人で5,000万円を分割することになり、長男は別途、生命保険金500万円を受け取れるのです。
生命保険も遺産分割の対象になる例外とは?
原則として、生命保険金は受取人本人の固有財産であるため、相続財産に含まれることがなければ、遺産分割の対象になることもありません。しかし、例外的に遺産分割の対象となる場合もあります。それが「特別受益」の対象とみなされるときです。
●特別受益は特定の相続人だけが受けている利益のこと
まず、特別受益とは何かについて説明します。特別受益とは簡単に説明すると「被相続人から、特別に何かしらの利益を得ている」ものをいいます。たとえば、生前に被相続人から不動産を贈与されたことがあるならば、これは特別受益の対象です。このように被相続人から贈与や遺贈を受けていると、特別受益として扱われる可能性があるのです。
特別受益があると、その相続人(特別受益者)とその他の相続人との間に不公平が生じる恐れがあります。そこで「特別受益の持ち戻し」を実施するのです。これは「本来の遺産に特別受益分を加えたみなし財産によって遺産分割する」という制度です。このようにして特別受益者だけが、その他の相続人よりも多く相続されることを防ぐようにしているのです。
●生命保険金が特別受益とされる場合とは?
通常であれば生命保険金は受取人の固有財産であるため、特別受益の対象にはなりません。しかし、この保険金の金額があまりにも高額になる場合は、生命保険金も特別受益になると考えられています。たとえば「遺産総額と同額程度の生命保険金がある」といった場合です。こういった場合には生命保険金であっても特別受益になる可能性があるのです。
なお、現実問題として、生命保険金の金額だけで特別受益になるかどうかを判断することは難しいです。なぜなら、単に生命保険金の金額だけでなく、同居や介護の有無といった事情なども考慮されるからです。そのため、もし生命保険金が特別受益に当てはまるのか分からなければ、弁護士といった法律の専門家に相談することが大切だといえるでしょう。
遺言で生命保険金の受取人の変更は可能か?
被相続人が遺言書を残していき、もしかしたらその中に「生命保険金の受取人を変更する」といった記載があるかもしれません。このとき、その遺言の内容は有効なのでしょうか。そこで遺言書で受取人が変更できるのかについても確認したいと思います。
●平成22年(2010年)以降のものであれば有効
遺言で生命保険金の受取人を変更することはできます。ただし、平成22年(2010年)4月1日以降に保険契約されたものに限られるので注意しましょう。これは平成22年4月1日より「保険法」が施行されたことが関係しており、これ以降の保険契約であれば「保険金受取人の変更は、遺言によってもすることができる」という旨が適用されるからです。
●遺言書が見つかったら、保険会社へすぐに連絡する
遺言書に「保険金受取人を変更する」旨の記載があったら、すぐに保険会社に連絡すべきです。なぜなら、連絡が遅くなると、保険会社が当初の受取人に保険金を支払う可能性があるからです。こうなると遺言書があったとしても、その人は保険会社から保険金を受け取れません。もし保険金が取り戻したい場合は、受け取った人に引渡しを求める必要があります。
生命保険金は遺産分割の対象として扱われることもある
生命保険金は基本的に受取人の固有財産として扱われるため、遺産分割の対象にはならないことが分かりました。しかし、特別受益に当てはまるような場合には、生命保険金を遺産の一部として扱うこともあるようです。そのため、もし生命保険金で不公平だと感じることがあれば、弁護士などの専門家に相談してもいいでしょう。
なお、遺産分割でお困りであれば弁護士に、相続税申告でお困りであれば税理士に相談をするようにしましょう。
プロフィール
吉田昌弘
フリーライター・編集者。普段は税金や医療などの記事を執筆しています。保険に関しては「毎月1万円分でいいから加入すべき」と考えています。保有資格はFP3級、応用情報技術者など。
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