
生命保険の名義変更について。課税金額が変わるので要注意!
自分にもしものことが起こったときのために、大切なご家族へお金を残せる「生命保険」。全国平均を見ると、約8割の方が生命保険に加入されており、加入時には、生命保険にどんな効果が欲しいか、十分考慮して加入されることでしょう。
しかし、5年、10年、15年と月日が経つにつれ、環境は変化します。それに応じて、保険の各名義を変更しようと思ったとき、「名義変更すると、受け取るときの税金が変わるのかな? かかるとしたら何税?」と不安になられる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、生命保険の名義変更の際、気をつけておきたいことについてご紹介していきましょう。
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生命保険の機能と各名義について
生命保険は大きく分けて3種類に分類でき、定期保険・終身保険・養老保険と呼ばれています。まずは、どの種類の保険に加入しているかを確認しましょう。
定期保険はその名の通り期間の定めがある保険で、掛捨てのタイプが多く割安な保険料で大きな死亡保障を用意できます。終身保険は一生涯の保障を準備しながら、掛金に貯蓄性があります。そして、養老保険は期間の定めがある保険ですが、定期保険と違い保険の期間が満了すると満期金をもらうことができます。
各生命保険に加入する際には、契約形態を指定しなければなりません。名称については、契約者(保険料を支払う人)・被保険者(保険の対象になる人)・死亡保険金受取人(保険金を実際に受け取る人)・満期保険金受取人(積み立てた満期保険金を受け取る人)となっています。
各名義をどのように設定するかによって、さまざまな効果があります。ここでまず注意していただきたいのは、最初に設定した被保険者(保険の対象になる人)を、途中で変更することはできません。
その保険契約が続く限り、被保険者に万一があった場合において、保険金を支払う約束で契約をします。被保険者を変更するということは、保険を辞めてしまうことと同義になってしまうからです。
また、当然ですが、被保険者は死亡保険金の受取人にはなれません。ですから、名義を変更できるのは、契約者(保険料を支払う人)、死亡保険金受取人(保険金を実際に受け取る人)、満期保険金受取人(積み立てた満期保険金を受け取る人)となります。
名義変更によって考慮しなければいけない税金は、相続税・贈与税・所得税(住民税)について。いつ課税が発生するかは、ケースによって異なるので、事項ではその点について掘り下げていきましょう。
生命保険の定期保険の名義変更について
定期保険では、解約金がないかあってもごくわずかであることが多く、名義については契約者・被保険者・死亡保険金受取人の指定を行って契約をします。一般的には、AAB型と呼ばれる、契約者:夫、被保険者:夫、死亡保険金受取人:妻、という形態が多いといわれています。
ここで注意したいのは、契約者と受取人の関係について。万一があった場合、夫の掛けてきた生命保険の保険金を妻が受け取ることになり、夫は亡くなっているため死亡保険金は相続税とみなすことになります。
これをBAB型に名義変更し、契約者:妻、被保険者:夫、死亡保険金受取人:妻、としたとしましょう。その場合は、万一があった場合は妻が受け取る保険金を妻が掛金を支払ったことになり、所得税(住民税)の課税対象となります。
別の形としてBAC型に変更し、契約者:妻、被保険者:夫、死亡保険金受取人:子、とした場合は、妻が払った掛金で子が保険金を貰ったこととなり贈与税の課税対象となります。死亡保険金が支払われる際、いままで誰がどれだけ掛金を支払ったのか、その割合に応じてかかる税金の割合が決きまります。
ここまでが、名義変更の基本形。この部分をしっかりと認識することで、将来ご自身が亡くなったと仮定した場合、誰に渡したいのか、どんな課税がかかるかをコントロールすることができます。
また、死亡保険金の受取人には、複数の方を設定したり、複数設定した死亡保険金受取人を1人にまとめたりすることも可能です。保険証券の分析をするなかで、まれに死亡保険金受取人を法定相続人としている方もおられますが、ご遺族が保険金をめぐり、争いあう原因となる可能性があるため、必ず個人名を指定するようにしましょう。
生命保険の終身保険・養老保険の名義変更について
終身保険の場合、万一が発生したときの課税区分については定期保険と同じです。しかし、定期保険と異なり貯蓄性を備えていますので、解約返戻金というものが存在します。
たとえば、AAB型のまま変更せず解約した場合、支払った保険料よりも解約金が上回ったときには、支払った保険料を差引いた部分に所得税(住民税)が課税されます。支払った保険料より解約金が下回った場合は課税されません。
ただし、保険料の払込期間中にAAB型からBAB型に名義を変更し、保険契約を途中で解約してBが解約金を受け取った場合は、Aが支払った保険料の割合に応じた解約金を贈与により取得したと判断され、贈与税の課税対象となります。
この場合、名義変更後に保険契約を解約せずに継続すれば、課税されません。ただし契約者が死亡した場合の名義変更については、契約者死亡時の解約金評価が相続税の課税対象となります。
続いて、養老保険の場合。終身保険と同様に貯蓄性を備えていますので、こちらも解約返戻金が存在します。解約返戻金の名義変更については終身保険と同様です。終身保険と違うのは、保険の終了と同時に満期保険金がある点。
一般的にはAABA型が多く、契約者:夫、被保険者:夫、死亡保険金受取人:妻、満期保険金受取人:夫、という形態です。たとえば、途中でBABA型に名義変更をしてAが満期保険金を受け取った場合、Bが支払った保険料部分については贈与税の課税対象となり、Aが支払った保険料分に対して、満期保険金が上回れば所得税(住民税)の課税対象となります。
貯めたお金は誰が支払って、誰が受け取ったのかを明確にし、かかったコストと受取ったお金の差額が、各種課税の対象となります。名義変更の際は、これをきちんと見極めることが重要といえるでしょう。
生命保険の名義変更では、課税区分に注意!
最初に決めた契約形態のままで、保険契約を継続できればいいのですが、出産、離婚、受取人の早期死亡、心境の変化など、さまざまな要因で保険契約の名義変更が想定されます。
そういった場合には、契約者と受取人の関係で課税区分が変わるということを覚えておいてください。お金に名前を付けることができる保険の機能を有効活用して、将来の不安を解消していきましょう。
プロフィール
松田 俊一
通信インフラ設計会社、インターネット通販会社を経て、2010年より保険代理店FPとして勤務。個人・法人を問わずリスクマネジメント、福利厚生、資産形成、資産運用について相談・提案を行っています。お金にまつわる様々な悩みの相談役になれるよう、社会的使命を持って自己研鑽に努めています。
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