ごはんもローストビーフも簡単おいしい♪話題のバーミキュラの秘密とは?
大人気の国産鋳物ホーロー鍋《VERMICULAR(バーミキュラ)》。昨年発売された《ライスポット》は、炊飯機能はもちろんのこと、野菜や肉料理にも応用でき、なによりも格別においしくなると話題になっています。今回はそんな《バーミキュラ》のものづくりへのこだわりや、《ライスポット》を使ってできるおすすめのメニューを、社長の土方邦裕さんと副社長の土方智晴さんに伺いました♪
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町工場から発信する“世界一”の鍋《バーミキュラ》
——《バーミキュラ》は密閉性の高い国産鋳物ホーロー鍋として、今や日本にとどまらず世界で人気がありますよね。この《バーミキュラ》を作ろうと思ったきっかけはなんでしょうか?
社長(邦裕さん):もともと、うちの会社(※)はドビー機という繊維機械のメーカーでした。やがて繊維機械が売れなくなってきたので、事業形態を変え、職人の技術を生かして船舶の部品や建設材の部品を作る鋳造メーカーとしてやっていました。
副社長(智晴さん):その中で、兄が鋳造の技術者として会社に入ったあと、僕も機械加工の技術者として会社に入りました。会社に入ってわかったのは、かつてあった“職人の誇り”が失われていたことでした。職人の技術を活かすためには、下請けの仕事だけでは満足できない。地方の町工場から、なにか世界一のものを作れないかという考えから開発が始まりました。
※愛知ドビー株式会社
何を作ればいいのか考えていると、ある日、本屋でたくさんのフランス製鋳物ホーロー鍋のレシピ本が並んでいるのを見つけました。
当時は鋳物で作っている鍋があることを知らなかったので、普段僕たちが産業機械の部品だとしか考えていなかった鋳物が調理に向いているということに、衝撃を受けました。
とはいえ、鋳物ホーロー鍋の密閉性が低いということは、鋳物メーカーである僕らはわかっていて、ただおいしいというだけでは「世界一の鍋」じゃないと思ったんです。
じゃあ「世界一の鍋」はどんなものがあるのかと調べていくと、ステンレス多層構造鍋があがりました。その理由は密閉性の高さ。ならば、我々が「密閉性の高い鋳物ホーロー鍋」を作ればめちゃくちゃおいしい料理ができるのでは?と考えました。
そこから、「世界一、素材本来の味を引き出す鍋」をテーマに鍋作りを始め、ふたと本体の密閉性が0.01mmの鍋《バーミキュラ》を作り出したんです。
——そうして《バーミキュラ》が生まれたんですね。開発の段階で、どのようなところが大変だったのでしょうか?
社長:まず、日本製の鋳物ホーロー鍋が世の中にあまりないと思うんですけれど、それには理由があって、鋳物にホーロー加工を施すという技術が日本になかったからなんです。そんな全くノウハウがない中で、自社で加工技術を開発していったのがまず苦労した点ですね。
もう一つは、鋳物というのは砂でできた型に、1500℃で溶かした鉄を流し込んで作るのですが、その中で冷えて固まるまでに、ぐねぐねと歪んでしまうんです。だから鋳物ホーロー鍋は密閉性が悪いと言われるんですけど、そこに精度を持たせることも、難しいポイントでした。
——そのためにはどのような技術がいるのですか?
鍋を0.01mmの精度で非常に手間をかけて削ることで、密閉性を高めています。トライアンドエラーを何度も重ねて、10,000個以上試作し、密閉性の高い鋳物ホーロー鍋を生んだんです。
こうして、約3年をかけて《バーミキュラ》が誕生しました。一時期、15ヶ月待ちの状態になるほどでしたが、技術を持つ職人の養成に力を入れ、今では発売当初の200倍の生産量になりました。
《ライスポット》開発時の想い
——それでは、昨年発売された《バーミキュラ ライスポット》はどのような開発秘話があるのでしょうか?
副社長(智晴さん):開発のきっかけは、《バーミキュラ》が人気商品になるにつれて、“料理が得意な人が使うもの”という印象が強くなっていると感じたことです。
——料理が得意な方が、普段から使っていると。
副社長:はい。《バーミキュラ》は無水調理が得意なお鍋なので、材料を入れて火にかければすごくおいしい料理ができるシンプルなものなんです。でもどうしても火加減にコツが必要になってしまう。その点が、料理が苦手な人にとっては重要で、だんだんと料理が得意な人が使うものとして捉えられていっているような気がしたんです。
——料理が苦手な人にもっと広く《バーミキュラ》の性能を味わってほしいと考えた時、一番の難問が「火加減」だったんですね。
副社長:一般的にも、プロと素人の差は火加減に出ると言われているくらいなんです。なので、最適な火加減も一緒にセットしてお客さまに提供すれば、絶対に失敗せず、なおかつ想像を超えた味を出せるような調理器具ができあがるんじゃないかと考えたんです。
——ひとことで「弱火にして」といっても、とろ火に近い状態にする人もいれば、中の弱にする人もいますよね。
副社長:そう、そのわずかな差でできばえが変わってしまうんです。なので、《バーミキュラ》でおいしくできる料理はもちろん、一番火加減が難しいと言われるごはんも、どんな炊飯器よりもおいしく炊けなければいけないというコンセプトで《ライスポット》を作りました。
——《ライスポット》はその名の通りごはんを炊くというのがメインの機能ですが、ほかにも調理モードの機能をいくつか搭載されていますね。
副社長:もともと僕たちは、世界最高の鍋を作ろうとずっとやってきた結果《バーミキュラ》ができました。さらにそれを進化させようと考えた時に、繊細な温度管理の機能がついた熱源もセットしようと考えたんです。僕たちのものづくりは、「世界最高のものを作ろう」という点では変わっていなくて、さらなる進化を目指してできたのが《ライスポット》だったんです。
——料理が苦手な人でもプロ顔負けの料理が作れるということですね。
副社長:そうですね。一方で、《ライスポット》はトップシェフも意識していて、特に低温調理の多いフレンチのシェフにライスポットを使っていただいています。一流シェフの厨房って色々な調理機器を入れなければいけないので、すごく狭いんですけど、《ライスポット》はコンパクトなボディで色々な料理に応用できるので、料理の幅が広がると、とても重宝されています。
——《ライスポット》は大きく感じられますけど、意外と省スペースなんですよね。ガスも使わないので、キッチン以外の場所でも調理できます。熱源を電気にしたことで苦労したことはありますか?
副社長:《ライスポット》は開発当初から、家電製品にしようと考えていたんです。最初はメーカーに丸投げしてしてしまおうとしたんですが、そうすると僕たちの「世界最高の調理器具を作りたい。炊飯も調理もおいしくできなければいけない。」という思いが共有できなかった。最終的には、自社で新しい技術者を入れながら開発していったんです。
一番苦労したのは、「電気はガスよりもおいしくできない」というところでした。ガスで調理すると、周りの空気が温まることで、対流が生まれ立体的な調理ができる。IHヒーターなどの電気で調理する場合は、鍋の底が発熱して熱伝導が起こりますが、周りの空気が温まらず、スムーズな対流が起きないんです。
この差によって、「電気はガスよりもおいしくできない」という状況が生まれるんです。《ライスポット》ではこの問題を解決しなければいけなかった。そこで、ポットヒーターの開発に力を入れました。
実は、ガスにも弱点があって、直火の大敵が「風」なんです。クーラーや窓、換気扇からの風によって、火が揺れてしまって、火加減が変わってしまうんですけど《ライスポット》では断熱性のカバーをつけることによって、直火よりも安定感を持って最高の調理ができるようにしたのです。
——《ライスポット》は料理経験が少ない人や、機械の操作が苦手な人でも使いやすいように設計されていますね。
副社長:《ライスポット》は複雑な設定がなくて、できることはすごくシンプルなんです。僕らが重視しているのは、「道具」の感覚で、自分の思い通りに使いこなせるものであること。ポットの中で、何が行われているかがわかることが大事だと思っていて、そういったところが操作設計に反映されています。その点が、料理が苦手な方や、機械操作が苦手な方にもわかりやすくて、支持を得ているのだと思います。
——デザインもすごくおしゃれですよね。《ライスポット》のふたにつまみがないのも洗いやすくてうれしいです。
副社長:《ライスポット》はグッドデザイン賞・特別賞もいただきました。毎日使うものなので、より洗いやすくなるように完全に一体成型でデザインしています。もともと僕は炊飯器を使うのがすごく嫌で、何が一番嫌かっていうと、洗い物をする時だったんです。分解しなければいけないし、パッキンなどの衛生面や臭いも気になる。
開発段階で、実は多くの人があまり保温機能を使わないということがわかって、炊き上がりのおいしさに特化するためにも思いっ切って保温機能をなくし、分解しなければ洗えないという状況をなくしました。僕たちは、手料理の楽しさを伝えるのが一番の使命だと思っているので、料理を失敗しなくなったというのはすごく大きなことだと思うんです。
社長と副社長の一番好きな料理は?
——おふたりが好きな料理はなんでしょうか?
社長:僕はローストビーフですね。低温調理機能を使ってできるんですけど、失敗せずに絶妙な火加減で火が通っておいしいんです。なかなか家庭ではできなかった料理なので好きですね。
副社長:僕はごはんです。《バーミキュラ》で炊くごはんもおいしくて好きなんですが、吹きこぼれが心配でつきっきりにならなきゃいけなかったんです。《ライスポット》はワンタッチで目を離しても大丈夫なので、たくさんごはんを炊いています。よくやるのが、テーブルのど真ん中にごはんを置いて、その周りにごはんに合うおかずを置いてみんなで食べるのが好きですね。
——社内の隠れた人気レシピはありますか?
副社長:ごはんをよりおいしく炊ける方法というのがあって、東京にあるミシュラン2つ星の料理屋さん直伝の方法なんですが、水で15分浸水した後、15分ザルにあげておくんです。その後《ライスポット》に入れて、いつもの90パーセントくらいの水で炊くんですよ。いつもは浸水する水と、ごはんを炊く水って一緒なんですけど、浸水後の水を変えることで、より澄んだ味になるんです。ちょっとした手間ですけど、ぜひ試してみてほしいです。
《バーミキュラ》の場合、カレーやポトフを作るとき、まずコップ一杯の水を沸かしてお鍋を温めてから野菜を入れて弱火で調理すると、オーブン効果が高くなって、均一に火が通るので、よりおいしくなります。より甘みが引き出されるんです。寒い冬場は特に試してみてほしいですね。
社長:社員の間で人気なのは、ポトフを作って、次の日余った具材でカレーを作るんです。これがむちゃくちゃおいしいんです。1日目にポトフを作って、2日目に水を足してルーを入れるだけ。それと、ごはんのお供にぴったりの「なめたけ」もおすすめですよ。
——ほんのひと手間でおいしくリメイクできるのは魅力的ですね。なめたけも作れるとは意外です! これは食べたくなってしまいます。
ということで、オススメのローストビーフとごはんを試食してみました!
まずはローストビーフを一切れいただきます。凝縮された肉の旨みが口いっぱいに広がり、ソースと相まって豊かな味わいです! 肉汁も閉じ込められているからか、しっとり柔らかい食感。こんなにおいしくできるの⁉︎ と感激しながら、続いてはごはんをパクリ。
これは......想像を超える弾力。副社長・智晴さんが実践する「ごはんをメインに食事を楽しむ」は過言ではないほどのおいしさです。おかずなど必要がないほど、歯ごたえもよく甘みと旨みのあるごはんですが、ローストビーフと一緒に食べるとまさに天国。こんなレストラン級の料理が家庭で作れたら......。家族の笑顔が浮かびます。
お2人の熱い《バーミキュラ》と《ライスポット》の開発秘話を聞き、料理を食べてみると、どれだけ製品の精度が高くいいものかということが実感できました!
日常の料理をワンランクあげてくれる《バーミキュラ》の製品たち。副社長いわく、現在も新商品の構想を練っているのだとか。一体どのような商品が生まれるのでしょうか⁉︎ これからも目が離せません♪
●ライター・写真 宇治田エリ
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