認知症の義父との楽しかった日々を漫画に。笑って泣ける介護の記録

認知症になった義理の父「ひろぽ」さん(享年84歳)との思い出を漫画にしている、三丁目いちこさん(@3choumeichi...

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認知症になった義理の父「ひろぽ」さん(享年84歳)との思い出を漫画にしている、三丁目いちこさん(@3choumeichiko)。時に戸惑いながらも楽しかった日々の記録が、「優しい気持ちになれる」「時に微笑ましく、時に泣ける」とInstagramを中心に話題だ。今回は三丁目いちこさんに、ひろぽさんへの思いや、特に思い出深いエピソードなどを聞いてみた。

住職からの言葉が漫画を描くきっかけに

そもそも三丁目いちこさんが「ノンフィクション漫画を描こう」と思ったきっかけとは、なんだったのだろう。

「Instagramに漫画を投稿し始めたのは、2018年3月からです。その半年前に義父『ひろぽ』が他界し、後悔や悲しみにくれていたところ、法要の時に住職が『供養の仕方は色々あるけれど、故人を思い出してあげることが何よりの供養』と、おっしゃっていました。その言葉がきっかけとなり、今まで記録していたひろぽのメモなどを確認している内に、『このことを何かの形で残したい』と思ったのです」

お寿司の食べ方1
お寿司の食べ方2
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住職の言葉から、ひろぽさんとの思い出を形にしたいと思うようになった三丁目いちこさん。しかし意外なことに、漫画を描くのはこれが初めてだったそう。

「最初は文章でまとめていましたが、細かい動作などは絵で表現した方が伝わりやすいと思い、今まで描いたことはなかったものの、思い切って漫画にしました。Instagramを選んだのは、元々別のアカウントでキャラ弁を投稿していて、そこでイラストを漫画のように投稿されている方を見かけたからです。この方法なら漫画を描いたことがない私にもできるのでは?と、初めてみました」

お寿司の食べ方5
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お寿司の食べ方8

予想外の出来事への興味や感謝の気持ちで、介護も楽しく

「認知症の介護」と聞くと、想像できないほど大変なのでは?と思ってしまう。しかし、三丁目いちこさんの漫画に重苦しさはなく、どこかユーモラスでほのぼのとした空気が流れている。

「私とひろぽは出会った時から妙に気が合いました。現役時代、新聞記者だったひろぽは話題も豊富でしたし、一緒にいる人を飽きさせない人でした。私自身も実家が商売をしていたせいか、人と話したり話を聞いたりするのは好きなので、そのあたりが気が合うポイントだったのでは?と思います。そのせいか、認知症になってからのひろぽを疎ましく思うことはなく、『次はどんなことが起こるのだろう?』という興味が先に立ち、あまり大変だったと思うことはありませんでした」

誕生日1
誕生日2

最初から気が合ったという、三丁目いちこさんとひろぽさん。さらに、ひろぽさんへの思いについて聞いてみた。

「夫(ひろぽの長男)やチャコさん(ひろぽの妻)に話を聞くと仕事に一筋すぎて、とてもいい夫・いいお父さんだった訳ではなかったように思います。しかし孫が生まれてからは今までの仕事人間を払拭するように、とてもいいおじいちゃんでした。よく遊んでくれましたし、行事にも必ず参加してくれました。夫が子供たちと休日が合わないため父親代わりもしてくれて、子供たちもひろぽが大好きです。認知症になってからも孫のことをいつも心配し、かわいがってくれたので、ひろぽにはいつも感謝していましたし、尊敬もしていました。そんなひろぽへの恩返しの気持ちもあって、介護も楽しめたように思います」

辛かったことよりも、楽しかったことを漫画に

また、三丁目いちこさんが漫画を描く際のこだわりやルールからも、多くの人が漫画を読んで「癒やされる」とコメントをする理由が見えてきた。

「記録に残すと言うことは、記憶にも強く残ることを頭に置いています。家族の話なので、辛かったことや嫌だったことを赤裸々に描くことに抵抗がありました。なのでまず、おもしろかったことや、楽しかったことを中心に描こうと思いました。介護で苦しんでいらっしゃる方や悩んでいらっしゃる方にとっては、共感できない内容かもしれませんが、1人でもクスッと笑ってくださったり、ほっこりとした気持ちになっていただけたら、うれしいです」

ちょびとひろぽ1
ちょびとひろぽ2
ちょびとひろぽ3
ちょびとひろぽ4

三丁目いちこさん厳選!お気に入りの5作品

これまで投稿された漫画のなかでも、特にお気に入りのものを5作選んでもらった。思い出と共に紹介しよう。

まず1作目は、「じじの時事問題」。

「脳梗塞で倒れるまでは、孫のテスト前に時事問題の例題を作るのが新聞記者だったひろぽの役目でした。認知症になってからは頼ることもなくなったのですが、時事問題をせがむ孫にふと呟いた例題が、見事的中したというエピソードです。フォロワーさんからは『ひろぽすごい!』『むぎゅがかわいい』などのコメントをいただきました」

じじの時事問題1

2作目の「ひろぽは準備万端」は、ひろぽさんのかわいさと三丁目いちこさんの優しさが伝わる作品。

「脳梗塞の影響か認知症のせいなのか、言い間違いはよくありました。そう言う時は訂正したり聞き直したりせず、心でおもしろがって聞き流すようにしていました。また、推理することでこちらも頭の体操にもなりますので、win-winだったように思います」

ひろぽは準備万端1

続く3作目の「ひろぽのお願い」も、チャーミングなひろぽさんと家族の温かさにほっこりする。

「孫に構ってほしいひろぽは、部屋を訪ねるよう懇願したり、『おじいちゃんと言ってくれ』と何度も呼ばせたり、薬を飲むのを忘れたふりをして『お薬飲んだ?』と言われるのを待っていたりと、様々な手段でコミュニケーションを取ろうとしました。ただ、喜びすぎて次女に『もうやめとく』と言わせてしまったのは、失敗でしたね」

ひろぽのお願い1

4作目は、ひろぽさんらしさを感じるという「誕生日の抱負」。

「ひろぽの場合、認知症を発症してから数字がちんぷんかんぷんになりました。日付や時間はもちろんですが、年齢だけはなぜだかいつも若めに申告するので、年寄りだと思われたくない気持ちが強かったのか、その年齢の頃がいい時代だったのか。今となっては分かりませんが、ひろぽらしいなと思います」

誕生日の抱負1

そして5作目はちょっぴりジーンとくる「会いに来たよ」。

「時々、ひろぽの使っていたポマードの香りが漂うことがあります。そんな時は『会いに来てくれているのかな〜』と、周りを眺めたりしています。このエピソードに共感していただける方がすごく多かったので、びっくりしました」

会いに来たよ1

介護で悩む人が気持ちを切り替えられるような活動も、機会があれば

今後の目標や活動について聞いたところ、介護を行う人たちへの気持ちに寄り添いたいと教えてくれた。

「私がしてきたことは介護と言えないかもしれませんが、今後機会があれば、介護で悩んだり困ったりしている方に、少しでも気持ちの切り替えができるようなご案内ができるといいなと思っています。漫画も絵も見よう見まねできちんと習ったこともないですが、介護を題材とした絵本や、読み物などに携わることができたら素敵だなと思っています」

ぐるぐるの反省会1
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最後に、ファンの方々へのメッセージももらった。

「たくさんのコメントやメッセージに励まされ、泣き、笑い、感謝する日々です。介護の漫画ですが私自身、皆さんに誇れるような介護はしていません。いつも、『ひろぽが何かやらかさないかな〜』と観察するような、ひどい嫁でした。そんな私の描く拙い漫画を温かくご覧いただき、本当にありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます」

家族を愛し、家族に愛されたひろぽさん。かけがえのない思い出の数々を描く三丁目いちこさんの漫画はほっこりできるだけでなく、認知症に対する気持ちをも少し明るくしてくれるように感じた。これからも愛にあふれたエピソードを、楽しみにしたい。

ひろぽ天使になる?1

取材・文=石川知京(関西ウォーカー編集部)


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