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築40年経つヴィンテージ・マンションの改修デザイン。

既存仕上を剥がして現れたコンクリートの躯体は、
肉眼でも水平・垂直が取れていないことが容易に見て取れるほど強烈に歪んでおり、
バルコニー側から長細く掘り込まれた洞窟のようだった。
天井梁底に埋まる、40年前の職人のポイ捨てタバコが、まるで鉱物のようにも見えてくる。
「ブルータル」という言葉では済まされないほどに野性的な自然環境であった。

リノベーションは通常、下地の厚みで歪みの帳尻を合わせ、
内法寸法を少しづつ苛めながら仕上材を覆うことで生活の体裁を整える。
つまり最も部屋内側へねじり出ているポイントから数十mmオフセットした面まで空間を浸食することになるが、
この躯体の歪み具合では、床・壁・天井でバカにならない量の気積が殺されてしまう。

限られた気積をわずかでも大きく残すべく、下地を排し、仕上げを排し、
岩肌、もといコンクリートの肌に抽象的な閾(いき)を一筆引くことで領域を示す内装とした。
躯体の歪みを物ともせずに走る白と素地のメタ・ボーダーラインは、
なにか内部空間を遥かに超える次元のものが介在しているような拡がりを感じさせる。
最深部の領域が白く明るくなることもあいまって、
面積は既存とほとんど変わらずとも、気積は約1.15倍に、体感的拡がりはさらに大きいものとなる。

ゼンパーが唱え、ロースが展開した「被覆の原則」が加速する現代において、
テクスチャをレイヤードしていくのではなく、
手を加え、物を加えつつも、躯体、果ては洞窟というテクスト(原本)へと還元すること -
テクスチャ以前の、「テクストの空間」の"後天的"な創出を試みた。

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photo Takumi Ota jparchitects.jp
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