罰を使うトレーニング方法が犬に及ぼす悪い影響を明らかにした研究結果

体罰など嫌悪的刺激をベースにしたトレーニング方法が、犬の福祉を損なうことに科学的に検証した研究結果が発表されました。知っておきたいその内容をご紹介します。

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犬のトレーニング方法と犬の福祉

犬のトレーニング方法には「嫌悪をベースにした方法」から「報酬をベースにした方法」まで、2つの中間にあるものも含めて幅広いバリエーションがあります。

「嫌悪をベースにした方法」とは、望ましくない行動をした時に体罰を与える、リードを強く引き続けるなど継続した嫌悪刺激を与え望ましい行動をした時にだけ解放する、望ましくない行動をした時に遊びの時間を中止するなど嫌悪的な刺激で犬に条件付けをする方法です。

「報酬をベースにした方法」とは、犬が望ましい行動をした時にトリーツを与える、遊びの時間を始めるなどの報酬を与えることで、望ましい行動を強化して条件付けをする方法です。

嫌悪をベースにした方法は犬の福祉を損なうという批判がよく聞かれますが、現在のところ家庭犬のためのトレーニング方法で主流と呼ばれるものを包括的に比較した研究がありませんでした。

この度ポルトガルのポルト大学の研究チームが、嫌悪ベースのトレーニングを受けた犬と報酬ベースのトレーニングを受けた犬のストレスレベルや認知バイアスについて調査を実施し、その結果が発表されました。

トレーニング方法の違うスクールを比較

違うトレーニング方法を比較するために、ポルトガルの7軒の犬のトレーニングスクールが選ばれました。そのうち3軒は報酬ベースの方法を採用している「報酬グループ」2軒は報酬と嫌悪の方法を混合しているが嫌悪ベースの割合が低い「混合グループ」最後の2軒は嫌悪ベースをメインに採用している「嫌悪グループ」です。

それぞれのグループでトレーニングを受けている犬が選抜されて調査に参加しました。報酬グループからは42匹、混合グループからは22匹、嫌悪グループからは28匹です。

トレーニング中の犬の行動からストレスレベルを観察するため、それぞれの犬のトレーニングセッションを3回ビデオ録画しました。また犬が自宅にいるときの唾液サンプルとトレーニング後の唾液サンプルを採取して唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)の濃度が分析されました。

調査に参加した犬たちは、トレーニングとは別に認知バイアステストを受けました。トリーツの入ったボウルと空っぽのボウルが実験室にセットされ、犬たちはボウルの位置の違いを学ぶためのトレーニングを受けました。その後、改めてセットされた2種類のボウルへの到達時間への違いによって、根底にある感情状態が判定されました。

それぞれのトレーニング方法による違い

トレーニング方法別に観察や測定をした結果は次のようなものでした。

ビデオ録画で観察された犬の行動の違い

嫌悪グループの犬は3つの中でストレスに関連する行動や動作を最も多く示しました。具体的にはセッション中に体が緊張しており、口の周りを舐める、あくびをする、ハアハア喘ぐ、うずくまる、キュウキュウ鳴くなどストレスに関連する行動が多く見られました。

混合グループでも嫌悪グループと同じようなストレス関連の行動が観察されましたが、嫌悪グループよりも低い頻度でした。また嫌悪グループと違って興奮やリラックスを示す行動も見られました。

報酬グループではストレスに関する行動は最も少なく、ハアハア喘ぐという動作については嫌悪グループの3分の1、混合グループの2分の1の頻度でした。うずくまる、キュウキュウ鳴くなど極度に強いストレスを示す行動は見られませんでした。このグループの犬たちがセッション中最も多く見せた行動は興奮を示すもので、2番目はリラックスを示す行動でした。

唾液中のコルチゾール値

犬たちから自宅にいる時の唾液とトレーニングの後の唾液が採取され、ストレスに関連するホルモンであるコルチゾールの値がどのくらい変化しているかが測定されました。

嫌悪グループと混合グループではトレーニング後のコルチゾール値が大きく増加していました。2つのグループの間に数値の大きな違いはありませんでした。報酬グループではコルチゾール値の増加はごくわずかで、ほとんど変化がないと言える程度のものでした。

認知バイアステスト

実験室にセットされたトリーツ入りのボウルと空っぽのボウルへの到達時間からの分析では、嫌悪グループの犬はこのテストのような曖昧で不確かな状況において、より悲観的に反応することがわかりました。混合グループや報酬グループのように罰を受ける回数が少ない(または罰を受けない)犬は後者になるほど楽天的な傾向が強くなりました。

これらの結果から、罰を使う方法はトレーニング中の犬の福祉を損なうだけでなく、トレーニングから離れた後にも犬の感情状態に悪影響を及ぼす可能性が示されました。特に嫌悪グループのように嫌悪的な方法が高頻度で使用されることは危険であると指摘しています。

まとめ

嫌悪ベース、報酬ベース、2つの混合タイプのトレーニング方法を採用しているトレーニングスクールの犬たちを調査したところ、嫌悪ベースの方法でトレーニングされている犬はストレスに関連する行動を多く示し、コルチゾール値も高くなり、物事の捉え方が悲観的になるという結果が示されたことをご紹介しました。

この研究はトレーニング法が犬の福祉にどのように影響するかについて体系的に調査した初めてのものです。嫌悪ベースのトレーニングが犬の福祉を損なうことがはっきりと示されたのは大きな成果です。

『嫌悪ベースのトレーニングはトレーニング中もトレーニング後も犬の幸福を損なう』これは一般の飼い主も知っておかなくてはならないことで、トレーナーやスクールを選ぶ際に慎重にならなくてはいけない点です。

《参考URL》


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