
日当たり良好な2階はすべてが特等席!富士山も見える、都心の絶景注文住宅
Fさんご夫婦が、それまで住んでいた社宅から近い場所で出会った、見事な眺望を誇る土地。「見晴らしが良く、シンプルな家にしたい」というご夫婦の思いにこたえたのが、建築家の木名瀬佳世さんだ。Fさんご夫婦と木名瀬さんがつくりあげた、理想の家づくりをご紹介します。
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「ご縁」に恵まれた土地、そして建築家との出会い
それまでお住まいだった社宅から転居することを検討していたという、Fさんご夫婦。「それまで社宅があった土地の雰囲気が気に入っていたこともあり、周辺で新たな住まいを探すことにしたんです」とFさんの奥様が語る。当初は数軒の建売住宅を見てまわっていたが、せっかくなので土地も探してしてみることにした。
それからほどなくして、Fさんご夫婦に運命の出会いが訪れる。
「売りに出されたばかりの土地があると不動産屋さんから連絡があり、現地に行ってみて驚きました。南から西方向の視界が大きく開けた坂の上の土地だったんです。まさに一目惚れ。ほとんど即決でした」。こうして、Fさんご夫婦の決断力の早さが功を奏して、都心ではめったに出会えない絶景さを誇る土地を手に入れることができたのだ。
そして、Fさんご夫婦の理想の家づくりは、建築家である木名瀬 佳世さんに託されることになった。
「Fさんの奥様のオフィスを手掛けたことがご縁で、ご自宅の設計も担当させていただくことになりました」と木名瀬さんは語る。オフィスを設計するにあたり、奥様と木名瀬さんは打ち合わせで顔を合わせる機会も多かったようだ。その際、木名瀬さんのクライアントのニーズを敏感に察するセンサーが冴え渡った。奥様は「現在の土地を契約した時点で、私たちの家は木名瀬さんにお願いしようと決めていました。木と白い壁面をシンプルにまとめていただいた弊社のオフィスのイメージがあったので、その雰囲気に似たテイストにしてくださると思っていたんです。それに木名瀬さんは、こちらの“こんな感じ”といった微妙なニュアンスを汲み取ってくださるんです」と語る。
際立つインナーバルコニーの存在、Fさんご夫婦の理想を叶えた家づくり
取材時には、周囲の家が完成前だったこともあり、通り沿いからF邸の全景を眺めることができた。「現在は周囲に家がありませんが、F邸は通りから少し奥にあるので、いずれ通りからはほぼ外観が見えなくなります。そこで、その立地を活かして、徹底的に隠れ家の雰囲気を出したいという思いがありました」と木名瀬さんは語る。通りから見える外壁にはガルバリウム鋼板が用いられ、クールな印象を与える。門扉から玄関までのアプローチには、Fさんご夫婦の趣味だという植物が植えられ、クールな外観とは対照的に柔らかな印象を与える。
1階はサブリビングとFさんご夫婦の寝室、そしてウォークインクローゼットとトイレがある。一見すると白い壁面にしか見えない箇所も、よく見ると収納スペースになっていることに気づく。「せっかく注文建築にするのだから、収納スペースを自分たちの希望する場所につくっていただき、棚や家具を買い足さずに済むようにしたかったんです」とFさん。らせん状の階段を上がっていくと、手すりにあたる部分の壁が手作業で削り込まれているようだ。木名瀬さんによると、「手すりや天井の造詣を含めた階段の部分は、幼馴染み同士の大工さんとペンキ屋さんが苦労してつくってくださった力作なんです」とのことだ。
階段を上がると、2階は洗面室と浴室、そしてリビングダイニング、その奥にはインナーバルコニーがある。リビングのブラインドを上げてキッチンカウンターに立つと、東京の西側の空が見渡せる。その奥には電子レンジなどが置かれる整理棚が備えつけられている。さらにその左手奥には窓があり、門扉から玄関までのアプローチを見下せる設計だ。「プライバシーに配慮した設計になっていますが、キッチンの奥にある窓の位置は、玄関の真上にあるんです。来客時にいらっしゃった方が分かりますし、風通しを良くするための役割も担っているんですよ」と木名瀬さんは語る。
天井が高く、開放的なリビングや棚には、Fさんご夫妻がこれまで大切に育ててきた植物が置かれていることに気づく。Fさんによると「2人とも植物が好きなので、あちこちに置きたかったんです。新たに買い足したものは1つか2つくらいです」とのことだ。そして、リビングの奥にはインナーバルコニーが備えつけられている。
「Fさんご夫婦からは、眺望や家事動線など、一見するとシンプルでありながらも機能的にしたいというご要望がありました。それに加えて、この見晴らしの良さを活かした屋上が欲しいと言うリクエストがあったんです。しかし、それなりに費用が掛かりますし、一般的なベランダやバルコニーだと、洗濯物を干した場合、天候のことを気にする必要があります。お二人ともお仕事をしていらっしゃいますし、日照や天候を気にすることなく洗濯物を干すことができた方が便利だし、安心だろうと考えました。さらに眺望を楽しみつつ、ご趣味の植物を置くこともできるスペースということで、結果としてインナーバルコニーをご提案させていただきました」と木名瀬さん。Fさんご夫妻も「天候を気にしなくていいことはもちろんですが、昼夜関係なく洗濯物を干せるのも嬉しいですね。ブラインドを降ろしたり、角度を調整することで、外から見られることも気にしなくていいですし、急な来客にも対応できるので、とても便利なんです」とのことだ。
日当たりの良好な窓から広がる景色を目の当たりにしたら「ここはマンションの何階だろう?」と錯覚しても不思議ではない。それほど見晴らしの良い景色がF邸の魅力のひとつだ。天気の良い日には、西の空に富士山の頂上付近が顔を覗かせるし、日が傾いてきたら、思う存分、都心の夕暮れの景色を堪能できる。この見事な眺望を、リビングやインナーバルコニーのどの位置からでも楽しめるF邸の2階部分は、すべてが特等席と言えるほど魅力的な住まいだ。
「Fさんご夫妻は決断が早いんです。そして優先順位をすぐに決めることができるので、本当にスムーズにプランを立てることができました。正直、私も驚いているんです(笑)」。
自分たちが求めている理想の立地、住まい、そしてライフスタイル…。これらの要素をスピーディに決断し、木名瀬さんという建築家との出会いを大切にする。その結果、シンプルかつ隠れ家的な要素を持ちつつ、都心の戸建てとは思えないほど見事な眺望を楽しむことができるF邸をつくりあげることができたのだろう。
撮影:アトリエあふろ(古川公元)
木名瀬 佳世
木名瀬佳世建築研究室
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