2016年01月17日更新

古材と躯体の歴史が生み出す、ブルックリンなヴィンテージ空間。

建築家の蘆田暢人氏が手がけた、元浅草のリノベーション物件。下町らしく小さなビルが立ち並ぶ街のなかにあるその物件は、商業用ビル然とした外観からはまったく想像できない、ブルックリンにあるカフェやトラットリアの様な空間に仕立てられていました。

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この記事の目次

広がりを感じさせる構造
目一杯の趣味のエントランス
在来工法によるバスルーム
素材と空間のマッチング
配管を延長し移設したキッチン
空間のつながりを重視した寝室

広がりを感じさせる構造

玄関から廊下を進み、右折した突当り正面に収納スペース。右手にバスルーム、左手に一般的な表現でいうところの1LDKの居室という作り。
建築家の蘆田氏曰く「一般的にはリビングやキッチン、寝室等は壁で区切りますが、そうすると一つ一つの部屋は狭く感じられるので、視覚的に広がりを感じられるように」デザインしたという居室は、その言葉通り解放感があり、LDKの中に寝室部分が内包されていることを忘れさせるような構造だ。

目一杯の趣味のエントランス

玄関を開けた瞬間からおしゃれな空間が広がる廊下。廊下左手には5段からなる木製の棚が備え付けてあり、「まさに期待した通りに使ってもらえている」と蘆田氏が言う様に、靴や趣味の品々が飾られている。

在来工法によるバスルーム

「元は現在のトイレから洗面台付近までの小さなユニットバスで、現在バスタブがあるスペースはキッチンでした」というバスルームは広々としており、薄いグレーの壁と茶系のタイルで構成された空間はクールな印象。その様な空間の中、木製の枠で縁取られた洗面台の鏡が温かみを与えている。

素材と空間のマッチング

居室の大きな特徴はやはり、コンクリートむき出しの天井や壁と、寝室部分を囲う古材の目透し壁。「昔のコンクリは粗いが故に味があるため、そのまま使うことにしました。壁から出ている釘も当時のもので、何かを引っかけたりできるように残しています。」という蘆田氏。

寝室部分との壁を古材とされた理由をお伺いしたところ、「新しいものにすると天井や壁とチグハグになってしまうので」とのこと。しかも「あえて真直ぐでなかったり、反りがあるような未製材の木材をそのまま」使用することで、コンクリの粗さとのマッチングが図られている。

天井も壁も躯体のコンクリート現しの仕上げにしているなか、窓に面した壁は上部を除き白い塗装が施されている。こちらは断熱効果のある塗料をコンクリートの上に塗布したそう。オーナーの今野さん曰く「冬にコンクリートの部分を触ると当然冷たいのですが、白く塗られた壁は触っても冷たさを感じないのです」。

窓側の白い壁とコントラストをなすのが、廊下側から見て入口右手の壁。壁全体が黒板となっており、レストランやカフェの様なイラストが！
「会社の同僚を招くことがあるのですが、その時に同僚が書いてくれます。何回も書き換えているので、良く見ると前の絵がうっすら残っているところも愛嬌があっていいかな（笑）」と今野さん。