遺族の気持ちに寄り添って。意外と知らない喪服のマナー【女性編】

葬儀や通夜といった弔事は、人生で何度か体験する行事です。しかしながら、実際に参列する機会は数えるほどしかありません。特に女性の場合、バッグやアクセサリーといった小物類も気を付けるべき点があります。今回は葬儀や通夜、法事などの弔事に参加する場合の喪服のマナーをご紹介します。

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■立場で喪服の格式を決めよう! 喪服の基本マナー

喪服は基本的に黒ですが、同じ黒でも衣装によって格式が違います。遺族側なのか、参列する側なのか、また葬儀、通夜、法事のどれに参列するのかによって、着用する喪服は違います。

喪服の格式には、正喪服、準喪服、略喪服の3つがあり、最も格式が高いものが正喪服、次に準喪服、略喪服と続きます。

【正喪服】

正喪服は、葬儀や一周忌までの法事などで遺族が着用するものです。遺族よりも格式の高い喪服で参列することはマナー違反となるため、「参列者が着るものではない」と考えていただいて構いません。

正喪服には洋装と和装があります。以前は喪主は和装でしたが、近年では洋装もメジャーになってきており、正喪服として着用可能なものも多く販売されています。

洋装の場合、襟の詰まった黒のワンピースやアンサンブル、スーツが基本です。スカート丈は膝下からくるぶしほどで、黒のストッキングを履くなど、肌の露出を控えましょう。少しゆったり目のものを選ぶと、動きやすくてしわにもなりにくいです。遺族側の場合は特に動き回ることが多いため、選ぶ際には動きやすさも重視しましょう。

和装の場合は、染め抜きした5つ紋付の黒無地に黒共帯を着用します。通常の和装であれば紋付には袋帯を合わせますが、喪服の場合は「悲しみが重ならないように」と名古屋帯を合わせることが通常です。また帯揚げや帯締め、草履も黒で統一します。

ただし和装の場合は各地域でマナーが違う場合もあります。年長者に聞いて各地域のマナーに合わせるようにしましょう。

【準喪服】

準喪服は遺族側も参列者側も着られる、最もポピュラーな喪服です。葬儀や法事、急な弔問等、幅広く着用できます。

基本的には正喪服に準じていますが、地味なものであればレースや織り柄などがあっても構いません。素材もコットンボイルやベロア、ベルベットなど幅広く揃っています。

【略喪服】

略喪服は急な弔問や参列者側が3回忌以降の法事で着る喪服で、準喪服に比べて自由度が高いことが特徴です。基本的に「平服で」という指示があった場合には、略喪服を着用していくといいでしょう。通夜のときも「急に駆けつけた」ということを示すため、略喪服で弔問します。

正喪服や準喪服では黒が基本ですが、略喪服の場合にはグレーなどの地味な色でも構いません。ただ正喪服や準喪服と同じように肌の露出は少なめにし、華美にならないように注意が必要です。

【遺族側の服装に注意】

喪服は特殊な染め方をしており、リクルートなどで使うスーツとは黒の深さが全く違います。特に大勢の喪服の人が訪れる葬儀や法事などでは、その差が色濃く出ます。黒いスーツを略喪服として代用することは構いませんが、遺族側が着る正喪服としては向きません。

■結ぶ位置にも気を付けて! 喪服に相応しい髪型

【ヘアスタイルの基本】

喪服のときには遺族の気持ちに配慮して、地味で控えめな髪型を心がけましょう。髪の長い方はお辞儀をしたときになどに髪が落ちないよう、顔周りをすっきりさせておくことが基本です。前髪は顔が見えるようにし、香りのしない整髪料などで崩れない程度に整えておくといいでしょう。

【髪のまとめ方】

最も簡単なまとめ方はゴムを使って、首の付け根の辺りで髪を1つに縛ることです。このときに3回から4回ほど同じ方向にねじり、ねじり始めを起点にしてゴムを巻いて止めると簡単にお団子を作れます。

髪は地味ですっきりした印象になればいいため、難しい場合にはお団子にしなくても大丈夫です。毛先はなるべくバラバラにならない方が理想的ですが、少し散っているくらいであれば問題ありません。どうしても散ってしまう場合には、ピンなどで止めましょう。飛行機の客室乗務員を参考にすると効果的です。

髪を結ぶ位置は耳よりも低い場所にします。高い場所で結ぶことは慶事を連想させるため、華美な印象を与えてしまいます。ゴムは黒で統一し、ヘアアクセサリーもできるだけ付けない方が無難です。付ける場合には派手な飾りが付いているものは避け、地味な印象のものにしましょう。

ショートヘアの人は内巻きにしておくと、すっきりとまとまった印象を与えられます。お辞儀したときに髪が落ちてしまう場合には、ピンを使って軽く止めておくと邪魔になりません。

【髪の色】

髪を染めている人の場合、喪服に合わせて髪も黒に染め直すことがマナーです。黒に近い茶色であれば問題ありませんが、喪服を着て浮くようなカラーの場合にはきちんと染め直した方がいいでしょう。近年ではシャンプーで洗い流せるカラーリング剤も販売されているため、こうしたもので一時的に対応しても構いません。

■喪服に合わせる靴、バッグ、アクセサリー、コートのマナー

喪服のときには靴やバッグ、アクセサリー、コートにも気を配りましょう。基本的にはこうしたものは黒で統一し、飾りのない地味なものを身に付けるようにします。

【靴】

靴は金具や派手な飾りがないものが最適です。色は黒ですが、エナメル素材などの光沢のあるものは避け、布や合成皮革でできたものを選びます。キッドやカーフで作られた靴や、フォーマルな雰囲気のあるシンプルなパンプスなどが適しているでしょう。ヒールのあるものが基本ですが、ヒールは高すぎない太めのものにしましょう。

ミュールやサンダルなど、かかとやつま先が見える靴は避けてください。ウェッジソールやヒールのない靴なども、カジュアルな印象を与えてしまうことから弔事の場には向きません。またアニマル柄も殺生を連想させるため弔事には厳禁です。

ちなみに、ヒールで歩くときの「カツカツ」という音は、読経をしている静かな会場では非常に目立ちます。遺族の気持ちを考えて、ヒールの音が小さくなるように歩き方を工夫したり、なるべくヒールの音が小さい靴を選んだりといった配慮も必要です。

足元は靴だけでなくストッキングも注意が必要です。基本的にストッキングは黒か肌色のものを着用しましょう。黒のタイツはマナー違反とされていますが、寒さの厳しい地域では周囲に合わせて判断しても問題ありません。ラメの入っているストッキングも華美な印象になるため、控えましょう。

【バッグ】

バッグも前述したように、黒で飾り気のないものを持つようにします。金具が目立つものや光沢のあるものはNGです。靴と同じく殺生を感じさせるアニマル柄のものも、葬儀や法事には持っていかないようにします。

また、バッグを肩にかけることも弔事の場では相応しくないため、ショルダーバッグではなく、ハンドバッグを持つようにしましょう。急な通夜に駆けつけなければならず、ショルダーバッグしか持っていないという場合には、肩にかけずに紐を手で持つ等の配慮が必要です。

加えて、葬儀や法事の帰りなどは、香典返しなどで荷物が多くなるものです。こうしたものを入れるためにサブバッグを用意する場合には、黒で光沢のない無地のものを持っていくようにしましょう。

【アクセサリー】

基本的には、結婚指輪のみにしましょう。黒や白の真珠のネックレスや、オニキスや黒曜石などの黒の地味なアクセサリーであれば付けていても問題ありません。

ただし、真珠のネックレスは一連のみのものにします。二連や三連のものは「不幸の重なり」を連想させるものであるため、弔事の席ではNGです。ほかにもスカーフやストールなどを身に付ける場合には、黒いものを着用します。

【コート】

コートは黒などの地味でフォーマルなものを選びましょう。毛皮は黒であっても殺生を連想させるため、弔事の場に着てくることは相応しくありません。

■何なら身に付けていてもいい?OKな小物とNGな小物

喪服のときには身に付けていい小物と、身に付けることが好まれない小物があります。喪服は故人を偲び、遺族の気持ちを考えて着るもののため、弔事の場に相応しくない派手な小物を持つことはNGです。そのため身に付けていてもいい小物でも、基本的には地味で目立たないものを身に付けるようにしましょう。

【身に付けてもよい小物】

喪服の際に身に付けていいとされているものは、帽子、手袋、ハンカチです。実際の弔事の場で帽子を被っている人はあまりいませんが、洋装の場合には帽子を被ることが正式とされています。帽子は黒でつばが小さいものを着用しましょう。女性の場合は、顔を隠すために黒いレースの付いたものを被ります。

ただし、帽子の着用は宗派やTPOによって違います。カトリック信者の女性は葬儀の際にベールを被りますが、これは信者の女性のみで、参列者自身の宗派が仏教の場合には合わせる必要はありません。

手袋も黒いものを身に付けます。手袋は寒さ対策としてだけでなく、肌の露出を抑える意味もあります。ハンカチも同じく黒か白にし、地味なものであればレースが付いていても構いません。

【身に付けてはいけない小物】

NGな小物は、ゴールドなどの光沢を放つものです。また、前述したように毛皮やアニマル柄などの殺生を感じさせるものも弔事には相応しくありません。時計もNGというほどではありませんが、外した方が無難です。

どうしても付けなければならない場合には、地味なデザインのものを袖から見えないように身に付けましょう。アラーム付きの時計の場合、アラームが鳴らないようにしておくことがマナーです。

■メイクや季節ごとの服装にも気を付けよう

女性が喪服を着る際には、メイクと季節に合わせたマナーにも気を付けたいところです。

【化粧のマナー】

弔事の際にノーメイクはマナー違反です。弔事でもっともつらい思いをしているのは遺族であるため、その遺族よりも暗い表情に見えてしまうことは好ましくありません。しかし、普段通りのメイクは弔事には向かないため、薄くて控えめなメイクをしていくことが基本です。

ファンデーションなどのベースメイクはマットな質感に仕上がるものを選び、ラメが入っているものやツヤの出るファンデーションは避けましょう。ツヤ感が出ないベージュ系の化粧下地を塗り、その上にファンデーションを薄く付けていくと、マットな質感の肌を作れます。

チークやハイライトなどは顔にメリハリが出てしまうため、弔事の際は避けた方が無難です。どうしても付けたい場合には、肌色に近いベージュ系のものを使うようにしましょう。

アイシャドウは基本的に使わないことがベストですが、自然で派手にならないベージュやブラウンのものであれば使用しても構いません。ただしファンデーションと同じく、ラメの入っているものは使わないことが原則です。アイラインやマスカラは涙で落ちることがあるため、付けない方がいいでしょう。

口元にはツヤの出るグロスは使わず、ベージュやブラウンなどのナチュラルなものを使います。マットな質感が出ることが理想的ですが、難しい場合には口紅を塗った後にティッシュオフすることで、マットな質感を作れます。

【季節ごとのマナー】

季節に合わせたマナーにも気を付けましょう。訃報は真夏でも真冬でも関係なくやってきます。季節に合わせつつも、遺族に失礼にならないようなマナーが大切です。

喪服は肌を露出することが厳禁とされているため、夏であっても長袖が基本です。ただ6分丈や7分丈ほどであれば、失礼にはなりません。また夏場は裏地なしのジャケットや背抜きのものを着用することによって、暑さを軽減できます。

ジャケットのなかも、あまり胸元の開いていないカットソーなどであれば問題ありません。汗だくの格好で弔事に出る方が遺族にとっては失礼になるため、肌を見せないことが基本とはいえ、できるだけ暑さをしのぐための工夫はするようにしましょう。

冬の場合に気を付けたいことは足元とコートです。基本的にブーツや長靴は弔事では失礼にあたりますが、雪深い地域や雨の降っている葬儀や法事などでは、そうもいかない場合もあります。足元を汚してくるよりはブーツや長靴で足元を汚さずに参列した方が好印象です。

また、コートは会場に入る前に脱ぐことが基本マナーとされています。しかし屋外での葬儀の場合は寒いなかに長時間いることになるため、あまりにも早いタイミングでコートを脱ぐと、具合を悪くしてかえって迷惑をかけることになりかねません。こういった場合には周囲の様子を見ながら、脱ぐタイミングを決めるといいでしょう。

■まとめ

葬儀や通夜、法事などでは何事も控えめで地味なことが基本です。遺族の気持ちを考え、失礼にならないような服装を心がけてください。

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