話題の新電力(PPS)ってなに?失敗しない電力会社選びの5つのポイント
新電力(PPS)とは、電力自由化により電気の小売業に新規参入した電力会社のことです。私たちの生活に大きなメリットを生む可能性もある新電力(PPS)。今回はそんな新電力について、既存の大手電力会社と比較しながら理解を深めていきましょう。
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■電力会社の種類
【一般電気事業者】
一般電気事業者とは、電力の小売自由化以前から各家庭に電力を供給している地域の電力会社のことです。
北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の10社があります。
【特定規模電気事業者(新電力、PPS)】
2016年4月に一般家庭や個人商店なども含め、電力の小売りが全面的に自由化されました。
これにともない、新しく電力会社となった電気事業者のことを特定規模電気事業者、または、新電力やPPSといいます。特定規模電気事業者と名乗るには、
1.資源エネルギー庁へ「特定規模電気事業開始届出書」を提出する
2.「電力広域的運営推進機関」へ加入する
という2つの条件を満たす必要があります。とはいえ、特定規模電気事業開始届出書を提出する際に、資源エネルギー庁の認可を得る必要はありません。
また、電力広域的運営推進機関とは、消費者が安定して電力の供給を受けることができるように電力供給のバランスを調整する役割を担う機関です。
つまり、電力の小売業をはじめるのに電気事業の実績などは必要なく、言い方を変えればこの2つの条件さえ満たせば、誰でも電気の小売事業者になれるともいえます。
現在、特定規模電気事業者として電気事業に参入している企業も、通信会社やガス会社、石油会社、自動車会社、商社など、多岐にわたります。
【小売電気事業者】
電力会社のことを小売電気事業者という場合もありますが、これは電気小売業を行っているすべての電力会社の総称です。
そのため特定規模電気事業者はもちろん、これまで各地域の電力供給を担ってきた一般電気事業者も含まれます。
より厳密にいえば、一般電気事業者のすべての部門が小売電気事業者に含まれるわけではありません。
電気事業は大きく、発電部門・送配電部門・小売部門の3つに分けられますが、全国10社の一般電気事業者はこれまで3つの部門を一手に引き受けていました。しかし電力自由化後は10社すべてにおいて、2020年をめどに3部門がひとつひとつの事業会社として分割されます。
つまり、今後1つの会社として分離する一般電気事業者の小売部門と、新たに電気事業に参入する特定規模電気事業者を合わせて「小売電気事業者」と呼ぶことになります。
■新電力(PPS)とは?大手電力会社との違い
PPSとは特定規模電気事業者のことで、「Power Producer and Supplier」と英語で表したときの略称からきています。
最近では既存の大手電力会社(一般電気事業者)と区別する意味で新電力と呼ばれることが増えており、新電力の名称のほうがなじみのある方も多いことでしょう。
では、新電力と大手電力会社にはどのような違いがあり、どちらを選ぶかによって消費者にはどういったメリットがあるのでしょうか?
以下で具体的に見ていきましょう。
【発電設備】
新電力と大手電力会社には、主に2つの大きな違いがあります。その1つが発電設備の違いです。電気事業の中でも発電部門に関しては、小売自由化以前からすでに自由化がはじまっていました。
そのため大手電力会社以外の企業も自由に電気を作ることができていたのですが、新電力の中には自社で発電設備を持たないところも多くあります。
自社に発電設備を抱えていない企業が電気事業を展開するには、大手電力会社や発電設備を保有している他の企業から電気を買い取って販売する方法があります。
しかし、「大手電力会社から新電力に切り替えれば、電気料金が安くなる」と聞いたことがある方も多いことでしょう。
他の電力会社から電力を買い取りつつ電気料金も安くするとすれば、その電気事業者に利益は生まれるのでしょうか?
結論からいえば、発電設備を保有していない企業が電気事業を行っても、利益を得ることができます。その仕組みを理解するにはまず、電気の特性を知っておく必要があります。
電気はたとえばダムに溜まった水のように、どこか1ヶ所に集めて溜めておくといったことができません。そのため発電しても、使われなければムダになってしまうのです。
この使われずに余ってしまった電力のことを、余剰電力といいます。余剰電力は需要がない限り捨てられてしまうも同然なので、通常の電力よりも安い価格で購入することができます。
新電力は大手電力会社などから余剰電力として電力を安く仕入れることでコストを抑え、利益を得ているのです。加えて自社に発電設備がないために、設備にかかる維持費などのコストも削減できます。
そのため、より低価格で消費者に電力を提供することができます。
一方で大手電力会社は、原子力や火力、水力を利用した、新電力にはない大規模な発電設備を自社で保有しているのが特徴です。
現在、原子力発電所のほとんどは運転を停止していますが、その分の電力の多くは火力発電で補っています。
そのため、日々大きな電力を必要とする企業や工場に対しても高電圧で十分な電力を供給することができますし、一般家庭に対しても常に安定的な供給が見込めます。
その代わり、発電に必要な燃料費や設備の維持費といったコストも大きくなります。
【送配電線の有無】
2つ目の違いは、自社で送配電線を所有しているかどうかの違いです。
電気事業のうち、発電部門と小売部門は自由化となっていますが、送配電部門は引き続き大手電力会社が担うことになっています。
新電力が自社で発電した電力を供給する場合も、大手電力会社が所有する既存の送配電線を借りて各家庭へ電力を届けることになります。
いくら発電力があっても、消費者のもとに届かなければ電気を使うことはできません。そのため、電力の安定供給を確保するという意味で送配電部門は非常に大きな役割を担います。
言い方を変えれば、送配電部門を引き続き大手電力会社が管理してくれることで、私たち消費者は新電力からであっても安定して電力を受け取ることができるのです。
【電力の質や信頼性は?】
前述の通り、契約する電力会社が新電力か大手電力会社かにかかわらず、すべての電力は同じ既存の送配電線を通って消費者のもとに届けられます。
また、契約した電力会社が十分な電力を確保できなかった場合は、大手電力会社が不足分を補うシステムが整えられています。
そのため、選択する電力会社によって電力の質や信頼性が低下することはありません。
■失敗しない電力会社選び5つのポイント
新電力(PPS)と大手電力会社(一般電気事業者)では、このように電力を供給する仕組みに大きな違いがあります。
そのため、両者の違いも把握したうえで、今より生活の質が向上するような電力会社を選ぶことが重要です。
私たち消費者にとって新電力に乗り換える最大のメリットだといえるのは、電気料金が安くなる可能性が高いことです。
電気料金は生活費に直接関わってくるものであり、もちろん価格が安ければそれに越したことありません。しかし、価格だけで安易に切り替えると後々後悔することも。
気になっている部分があればクリアにし、すべてに納得したうえで契約するようにしましょう。
以下に、電力会社を選ぶ際に比較したい5つのポイントをまとめています。切り替えを検討する際はぜひ参考にしてみてください。
【ポイント1】基本料金で選ぶ
電気料金は通常、基本料金と従量制料金を基本とし、これに燃料費調整が加わった金額が請求されます。
従量制料金と燃料費調整の金額は発電にともなうコストが関係しているため、新電力と大手電力会社で大きな差はありません。
しかし、基本料金の場合は選択する新電力によっては、現在契約している大手電力会社よりも大幅な値下げとなる場合があります。
電力自由化以前は、たった10社の大手電力会社のみで国内すべての電力供給をまかなっていました。そのためそれぞれの大手電力会社が抱える顧客数は非常に多く、しかも広い地域に分散しています。
また前述の通り、大規模な発電設備を維持していく必要もあります。そのため、人件費や設備費といったコストがかかり、必然的に基本料金も高くなります。
一方で新電力の場合は、発電設備にかかる費用はありません。自社で発電設備を保有している場合も、大手電力会社に比べればずっと小さなコストで済みます。
加えて、大手電力会社と比べると自社で対応できる顧客数・地域が限定されるため、人件費も最小限に抑えることができます。
このような理由から、大手電力会社よりも基本料金を低く設定している新電力が多くあります。
【ポイント2】電気料金プランで選ぶ
前述した従量制料金について、もう少し詳しく説明しましょう。従量制料金とは、1kWh当たりの電力量の単価で電気料金を計算する料金制度です。
電力会社との契約が1kWh当たり25円だとすると、ある月に200kWhの電力を使用した場合は、その月の電気料金は5,000円ということになります。
先ほどもご説明した通り、1kWh当たりの単価そのものが大きく変わることはあまりありません。しかし、各新電力は独自の電気料金プランを提供しており、いくつかの時間帯ごとに区切ってそれぞれに異なる単価を設定しています。
つまり、1日で平均すると単価が変わることはなくても、ある時間帯に限っていえば単価そのものを安く抑えることができます。
まずは1日のうちでもっとも電力を消費している時間帯を把握し、その時間帯において電力量単価が低く設定されている料金プランがないか探してみましょう。
【ポイント3】セット割で選ぶ
セット割とは、現在契約しているガス会社や携帯会社、ネット会社などと同じ会社から電力の供給を受けることにより、それらと電気料金トータルの金額から割引を受けることができるサービスです。
基本料金や電気料金プランが今よりも安い電力会社であれば、セット割も加えることで大きな減額が見込めるでしょう。
また、基本料金や電気料金プランではそれほど安くならない場合でも、生活費としてのトータルの支出で見るとおトクになる場合があります。
しかし、電力以外の契約期間も関わってくる場合があり、自分の好きなタイミングで電力会社を切り替えられなくなる可能性には注意する必要があります。
契約を結ぶ前に、それぞれの契約期間と解約金や違約金の発生の有無などをしっかりと確認しておくと安心です。
【ポイント4】電気事業の実績で選ぶ
前述した通り、電力自由化後も電力の安定供給を確保するシステムが整えられているため、選択する電力会社によって電力の質や信頼性が変わることはありません。
もちろん、自分が契約している電力会社だけ停電が頻繁に起こるなどといったこともありません。
とはいえ、万が一予期せぬトラブルが起こった場合には、やはり電気事業者としての経験とノウハウを持っている大手電力会社のほうが迅速かつ適切に対応してくれることが予想されます。
安心できることを最優先し、大手電力会社と契約することも1つの選択肢ではあるといえるでしょう。
また、一般家庭に対しても電力の小売りが自由化されたのは2016年4月以降ですが、企業や工場などに対してはそれ以前から自由化が進められていました。
そのため、新電力の中にも電力の販売実績を持つ企業があります。
届け出を出しているだけで未だ電気事業に着手していないという企業も少なからずあるので、「名前も聞いたことがない電力会社と契約するのは心配」という方は電気事業の実績を確認してみるとよいでしょう。
【ポイント5】発電方法で選ぶ
セット割と並んで電力自由化ならではのメリットといえるのが、どのような方法を用いて発電している電力を購入するか消費者側が自由に選択できることです。
発電設備を保有している新電力には、環境にやさしい再生可能エネルギーを資源としているところが多くあります。
エコへの関心が高い方は、そのような視点で電力会社を選ぶことも可能です。
■電気料金プランの比較サイトを有効に活用しよう
電力自由化により、現在、数百通りもの電気料金プランが存在するといわれています。
ここまで5つの選び方のポイントをご紹介してきましたが、これらをひとつひとつの電力会社と照らし合わせ、その中から自分に最適なプランを選ぶのは、時間も労力も必要とする大変な作業になるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、電気料金プランの比較サイトの活用です。現在の電力の使用状況、契約内容などいくつかの項目を記入するだけで、自分に合った電気料金プランを提示してくれます。
ぜひ一度試してみてください。
■まとめ
いかがでしたか?ここまで、新電力(PPS)と大手電力会社(一般電気事業者)の違いや、電力会社を選ぶ際のポイントなどについて解説してきました。2つの電力会社の違いを把握していると、より自分に合った電力会社や電気料金プランを探しやすくなります。ぜひ参考にしてみてください。
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