
医療保険と貯蓄のどっちを選ぶべき?医療費の準備で考えたい5つの理由
日本人の平均寿命は今でも伸び続け、「人生100年時代」と言われるようになりました。ただ、健康に人生を謳歌できる“健康寿命”と平均寿命の差は男性で約9年、女性で約12年あり、その間の過ごし方が問題になっています。
問題のメインテーマの一つは「医療」。特に医療費の準備をどうするかに注目が集まっています。医療費の準備方法として考えられものには大きく分けて、「民間の医療保険」と「貯蓄」の2つの方法です。そこでこの記事では、医療費の準備のためには医療保険と貯蓄、どっちが向いているのかという問題を5つの理由とともに解説します。ぜひ参考にしてみてください。
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「医療保険に入る」「貯蓄」どっちがおすすめ?
結論から言ってしまうと、医療費の準備には「貯蓄」をおすすめします。それには次のような理由があるからです。
医療保険より貯蓄の方が万能
老後に必要な費用は医療費だけではありません。老人ホームなどを含めた住居費、生活費、介護状態になれば介護費など、多岐にわたります。
貯蓄はお金ですから、当然全ての費用に充てることができます。またいつでも銀行などからおろすことができ、手元にキャッシュとしておいておくことができます。これを資金が「流動性に優れている」といいます。
一方医療保険はその名の通り、医療費にしか使うことができません。テレビが壊れてしまったときに使いたい費用や、介護ヘルパーさんを雇うための資金に充てることはできません。
また保険は途中で解約すると元本割れすることが多く、解約手続きも煩雑なため気軽にキャッシュとして手元に置くことが難しくなっています。つまり「流動性に難がある」のです。これが医療費の準備には医療保険よりも貯蓄が向いている「第1の理由」です。
医療保険に入っていないと不安じゃないの?
医療費の準備には貯蓄の方が向いているということは分かりましたが、実際に貯蓄だけで医療費を賄うことは可能なのでしょうか。そのような不安を感じる方のために、次の項目で「ほとんどの人には医療保険は必要ない」理由を説明していきます。
貯金に比べて医療保険が必要とされない4つの理由
理由1:医療費・療養費は公的制度でカバーできる
【公的医療保険】
日本には「国民皆保険制度」があるため、日本国民であれば全員何かしらの公的医療保険制度に加入しています。会社員の方の健康保険、自営業者の方の国民健康保険などがそれに当たります。
公的医療保険のおかげで医療費の自己負担割合は、それほど高額にはなりづらいといえるでしょう。例えば、70歳未満であれば自己負担割合は3割で済みます。75歳以上では、自己負担額が1割で済むので、貯金によって十分対応できるかと思います。
【高額療養費制度】
上記の公的医療保険で100万円の医療費がかかった場合、自己負担額は30万円になりそうですが、実際に負担しなければならない金額は約9万円となります。これは、大きな病気やケガで高額な医療費がかかった場合は、高額医療制度が適用されるからです。
高額療養費制度とは、1カ月で負担する医療費に上限を設け、上限を超えた金額については公的医療保険から支給されるというものです。上限は以下のようになっています(69歳以下の場合)。
平均的な年収約370万円~約770万円の人の場合、100万円の医療費がかかっても、1カ月の自己負担額は80,100+(1,000,000-267,000)×1%=87,430円となります。
そして入退院を繰り返し、12カ月以内に3回以上上限額に達した場合、4回目からは「多数回該当」とされ、上限額が44,400円(年収約370万円~約770万円の場合)に引き下げられます。
【傷病手当金】
健康保険に加入している会社員の場合、業務外のケガや病気で仕事を休み給料が支払われなくても、1年6カ月の間は給料の3分の2の額が健康保険から傷病手当金として支給されます。
この制度のおかげで、会社員の場合、病気やケガの療養中の収入についてはある程度公的医療保険制度で保障されていると言えます。
ただ注意が必要なのは、国民健康保険に加入するフリーランスや自営業に傷病手当金は支給されないということです(制度自体はあるが、支給は任意のため)。そのためフリーランスや自営業の方の場合は、貯蓄額を増やし収入減に備えるか、収入補償型の年金保険などを検討する必要があります。
理由2:医療保険はモトを取りづらい
月々数千円の保険料を支払い続けても、医療保険の場合元を取ることが難しくなっています。
【短期入院が主流になり、通院治療や在宅療養が増えている】
医療保険で保険金が支払われるのは主に「入院」した場合と、「手術」を受けた場合です。ところが近年は国の医療費負担削減のため、入院は短期が主流となり、通院治療や在宅療養が増えています。
もちろんこのような傾向を受け、通院でも保険金が支払われるタイプの医療保険が増えていますが、入院時に比べると給付額が少なくなっています。
【医療保険も「入院60日型」が主流に】
短期入院が主流になったことにより、医療保険も従来の「120日型」(入院してから120日間まで保障される)から「60日型」に変わってきています。
【「1入院」の定義】
「60日でも2カ月あるから十分」と考えていると思わぬ落とし穴があります。それは「180日以内に同じ病気や因果関係のある病気で再入院した場合は、1入院としてカウントされる」ということです。
どういうことかというと、例えば「胃がんで30日入院しました。その2カ月後肺にガンが転移したので今度は肺がんで40日入院しました。」という場合、肺がんの入院も60日以内なので保障されそうですが、そうではありません。胃がんと転移した肺がんは因果関係が認められ、2つの入院の間は60日しか空いていないので1つの入院とみなされてしまうのです。そのため合計70日の入院とされ、10日分は保険金が支払われません。
【60日以下の短期入院では元が取れない】
入院日額10,000円の医療保険を60日型で加入すると、60日入院した場合60万円支払われます。しかし月々5,000円の保険料を30年払い続けたとしたら180万円となり、60日の入院を3回繰り返して、やっと元が取れる計算になります。つまりほとんどの場合、医療保険の元を取るのは難しいのです。
理由3:先進医療は実際に治療が行われるケースが非常に少ない
上記のような理由があっても、「治療に数百万円かかる先進医療治療の特約をつけるために医療保険に入らなくては」と考える人もいます。
ところが先進医療治療は「医師が先進医療の発展に寄与する案件」と判断しなくては適用されません。つまり実際に治療が行われるケースは非常に少ないのです。その証拠に先進医療の特約の追加保険料は数十円~数百円と非常に安くなっています。これは可能性としてほとんど無いので、保険会社としてはリスクが少ない理由からです。
結論として、先進医療治療を理由に医療保険に入る必要はありません。
理由4:本当に困るのは長期入院だが、結局貯金が必要になる
医療費がかさむのは以下のような病気で長期入院をしなければならない場合です。
●脳血管疾患(平均89.5日の入院)
●統合失調症(平均546.1日の入院)
●ガン(再発もあるため通算で長期化する)
ところが最近の短期入院保障タイプの医療保険ではこのようなケースに対応することはできず、結局は貯金が必要となります。
医療保険に入った方がいい人、入らない方がいい人。貯金と医療保険
医療保険に入った方がいい人
医療保険の加入を考えた方が良いのは以下のような人です。
●貯蓄額が少ない人
●手厚い治療を受けたい人
●貯金とのダブルの保障で安心したい人
●フリーランス・自営業の人
ただこの場合も医療保険だけに頼るのではなく、貯蓄と並行して考えることをおすすめします。
医療保険に入らない方がいい人
すでに一定額の貯蓄のある人は医療保険の加入を考える必要はありません。目安として、会社員の方であれば150万円、フリーランス・自営業の方で300~400万円くらい貯蓄があれば、公的医療保険制度と合わせ当面安心できます。
この金額が手元にあるのであれば、保険料にお金を使うのではなく、他のことに回すことをおすすめします。
医療保険と貯金、どっちがいいのかしっかり検討しよう
病気やケガで入院する時のことを考えると不安になり、より充分な保障を!と考えるのももっともです。しかし、これまで説明してきた通り、日本では公的医療制度が充実しており過度な不安は無用です。
「うちはガン家系だから」というのであればガン保険だけを契約して貯蓄と組み合わせるなど、不安と合理性のバランスを上手に取ることが重要なのです。
■プロフィール
杉浦 直樹
AFP FP2級。元歌舞伎役者のファイナンシャルプランナー。以前ソニー生命に勤務していたため保険商品に強い。JSA認定ソムリエの資格も持つ。
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