自宅カフェのあるすまい
阿武隈川河口の南側、内湾状の汽水湖である鳥の海のそばに敷地はあり、東日本大震災では津波の被害のあった地域である。オーナーはこの地域で生まれ育ったこともあり、この地で再建することにした。また、地域の復興もと考え、地元の料理などを提供するため自宅でカフェを営むことにした。自宅カフェの計画である。
今後、想定される浸水被害を軽減させるため、敷地は現状より1m程高くし、道路と緩やかなスロープでつないだ。
基本的な考えとしては、引退間近の夫婦の二人暮らし、自宅でアットホームなカフェを営むということで、1階のみですべて完結できるように計画することにした。2階もあるが、予備の部屋になっている。
玄関から、みんなの集まるカフェエリアを配置し、奥に行くにしたがって夫婦のみのプライベートエリアとなるようにした。気軽にお客さんが立ち寄れるように、カフェエリアとして窓を大きく取った広めのダイニングを設けた。続く畳の居間はダイニングと建具で仕切られているが、建具を開け放つことによって、カフェエリアに取り込むことができる。ダイニングの隣にキッチンと食品庫を配置し、駐車場からの食材の搬入のしやすさ、また、自宅の家事導線への流れもスムーズになるようにした。自宅カフェではあるが、プライバシーを確保するため、回遊性のある導線を採用し、カフェと自宅の導線が交わらないような工夫もしている。
藤田渉建築設計事務所