松屋フーズ、”拡大版”配達無料キャンペーンは業績復活の足がかりになるか

牛丼チェーン「松屋」やとんかつ「松のや」を展開する松屋フーズHDは、8月12日より「Uber Eats」や「出前館」など複数のデリバリーアプリからの注文で配達料が無料になるキャンペーンを実施しています。同社の業績面は確かに昨年より回復しているものの、コロナ以前の水準には届いていません。感染拡大の収束はいまだ見えていませんが、配達料無料デリバリーは功を奏するでしょうか。キャンペーン内容および近年の業績を見ていきます。

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牛丼チェーン「松屋」やとんかつ「松のや」を展開する松屋フーズHDは、8月12日より「Uber Eats」や「出前館」など複数のデリバリーアプリからの注文で配達料が無料になるキャンペーンを実施。新型コロナ第5波で緊急事態宣言等が続くなか、実店舗の売上減少分を補う意図があるのでしょう。

同社の業績面は確かに昨年より回復しているものの、コロナ以前の水準には届いていません。感染拡大の収束はいまだ見えていませんが、配達料無料デリバリーは功を奏するでしょうか。キャンペーン内容および近年の業績を見ていきます。

夏のキャンペーンは太っ腹!?

8月12日より松屋フーズは複数のデリバリーサービスで配達料無料キャンペーンを実施しています。対象は「Uber Eats」「出前館」「DiDi Food」「menu」「松弁デリバリー」導入店。

これまでも他社を含め同様のキャンペーンが実施されていましたが、対象のデリバリーサービスが一つに限られるケースが多いことを考えると、この”拡大版”キャンペーンは太っ腹という印象です。

また、対象はデリバリー対応店舗のみですが、「松屋」「松のや」「すし松」「マイカリー食堂」「松軒中華食堂」など、同社が展開する多くのチェーンで実施されています。

一例として、Uber Eatsの場合は税込み1000円以上の注文でプロモーションコード「mfd2108」を利用すると配達料が無料になります。

ちなみに同社は、GW期間中に松弁デリバリーで、Uber Eatsでは6月をはじめ複数回の無料キャンペーンを実施していました。今回はこれまで以上に感染拡大が厳しくなっている環境での売上確保につなげるべく、対象を拡大しての実施に至ったと推察されます。

事業拡大はコロナで頓挫

前述のように、松屋フーズは牛めしの松屋のみならず多様な外食チェーンを展開しています。直近の2022年3月期・第1四半期決算報告では、1193店舗(FC店5店舗、海外11店舗)のうち、牛めし業態955店舗、とんかつ業態197店舗、鮨業態10店舗、その他の業態31店舗となっています。

近年の業績を見ると、2018年3月期から2021年3月期までの推移は以下の通りで、2020年3月期までの業績拡大がコロナ禍の2021年3月期に大きく落ち込んでいることがわかります。

売上高:930億円⇒982億円(5.5%増)⇒1065億円(8.5%増)⇒944億円(11.4%減)
営業利益:41.2億円⇒38.8億円(5.7%増)⇒50.8億円(30.8%増)⇒▲16.8億円(---)
当期純利益:23.8億円⇒22.0億円(7.7%減)⇒26.0億円(18.0%増)⇒▲23.8億円(---)
店舗数:1127⇒1181⇒1207⇒1192

2020年3月期までは安定した店舗拡大に加え、牛鍋や定食、期間限定メニューなどの販売促進策により売上高が伸びていきました。利益面については、2019年3月期には原材料高や店舗改装費など人件費以外の費用が利益を圧迫した一方で、2020年3月期は食材費と人件費の合計が売上高に占める比率(FL比率)の低下に伴い利益が改善した形です。

しかし2020年4月からの2021年3月期は、当然ながらコロナの影響を受け減収減益となりました。外出自粛や緊急事態宣言下での時短営業などが影響していますが、それでも牛丼チェーンは元からテイクアウト需要があった分、ファミレスや居酒屋チェーンに比べれば打撃は大きくなかったようです。

なお、7月末に発表された2022年3月期・第1四半期の業績は売上高225.4億円、営業利益▲8.9億円、最終利益10.7億円。コロナ禍が始まった前期第1四半期の売上高212億円を上回ってはいますが、前々期第1四半期の255億円には達しておらず、コロナ以前の水準までの回復には至っていません。

株価については、2018年末に3600円台であったものが、2020年3月期の好調により2020年1月に5000円目前まで上昇。しかしコロナショックによって同年3月には3100円台まで下落し、その後は大きく回復することなく、直近の8月後半は3500円台〜3600円台で推移しています(2021年8月24日15:00時点)。

回復は来期に期待

対象デリバリーサービスを拡大して配達料無料キャンペーンを実施した背景には、終わりの見えないコロナの感染拡大があると思われます。ただ、現状では業績回復への道は険しいと言わざるをえません。同社も今期末の業績予定を未定としています。

やはり復活の肝となるのは実店舗の集客ですが、ワクチン接種率の上昇で感染状況が目に見えて改善されるまでは以前の水準には戻りそうもありません。業績回復は来期に期待したいところです。

参考資料

以下、出所はすべて株式会社松屋フーズホールディングス。

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