満期前に自動車保険会社を乗り換えるとデメリットが多い!?
自動車保険の乗り換えどきは、今加入している保険を高いと感じたとき。しかし、いざ乗り換えようと思うと気になってくるのは、いま加入している自動車保険の解約です。実は保険が満期を迎える前に乗り換えると、思いがけないところで損をすることがあります。
そこで今回は、自動車保険を満期前に解約する際の注意点と、ベストな乗り換えタイミングについて解説していきましょう。
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自動車保険を途中解約すると返戻金はある?
任意加入の自動車保険は、1年間まとめて前払いする契約で加入している人が多いのではないでしょうか?加入から1年経っていない満期の前に保険を解約すると、一般的な保険ではお金が返ってきます。これは加入していない保険期間の前払い分が返金されるものであり、「返戻金」と呼ばれています。
新しい保険に加入するときの元手にもなるため、保険乗り換えのタイミングでお金を受け取れるのは嬉しいところです。しかし、払戻金は「月割り計算」にはなりません。
例えば、年間100,000円の自動車保険に加入した6ヶ月後、満期まであと半分のところで保険を解約する場合は、月割りで半分の50,000円が戻ってくるはずです。しかし、実際に払い戻しされる金額は30,000円程度になるでしょう。
これには、自動車保険の中途解約にかかるペナルティ「短期率」が関係しています。
短期率とは
短期率とは、全ての自動車保険で適用される中途解約に対する返戻金の計算方法です。満期前の解約の際、保険会社は前払いされた金額から短期率をかけた分を取り、残りを保険加入者に払い戻します。
短期率は加入期間に合わせて、階段式にパーセンテージが上がります。掛け率は保険会社によって変わりますが、全ての保険会社で共通するのは「早く解約したほうがより損をする仕組み」になっていることです。
加入7日後の解約の場合、短期率は10~15%であることが多くなっています。6ヶ月後の解約の場合は、70%程度。11ヶ月後には90~95%になります。例えば、年間100,000円(1日あたり保険料274円)の保険に加入すると、返戻金は以下のようになります。
・加入の7日後(短期率15%)に解約する場合…返戻金85,000円、保険会社への支払い金額15,000円、1日あたり保険料2143円
・加入から6ヶ月(短期率70%)で解約する場合…返戻金30,000円、保険会社への支払い金額70,000、1日あたり保険料383円
・加入から11ヶ月(短期率95%)で解約する場合…返戻金5,000円、保険会社への支払い金額95,000円、1日あたり保険料285円
携帯電話の2年縛り契約を解約するときなどに請求される「違約金」とはお金の流れが異なるため、負担している実感がわきにくいのですが、「予想より返ってくる額が小さい」ということは「予想外の出費」を意味するでしょう。自動車保険の中途解約には、金銭的なペナルティがあると考えることが大切です。
さて、ここで短期率だけを見ると「満期が近づけばいつ解約しても構わない」ような気がしてきませんか?しかし、「ほとんど満期」のタイミングでの中途解約には、短期率以外のデメリットが見られます。
自動車保険を途中解約するデメリット
返戻金の短期率以外にも、自動車保険の満期前解約にはデメリットがあります。以下で詳しく見ていきましょう。
【その1】新保険に加入できない可能性もある
具体的な例としては、現在の契約中に等級ダウンとなる事故を起こしていた場合です。特に直近で事故を2回以上起こした人や、3等級以下の「割増等級」になっている人の場合、保険会社から引き受けを断られる可能性があります。
割高でも現在の保険契約を継続し、無事故での満期更新を何年か繰り返して、等級が6以上まで戻ってからの乗り換えを検討しましょう。
【その2】保証内容の変更に注意
過去に入っていたお得な特約が、現在の保険で販売されていない場合があります。過去の契約を継続している期間中は特約も適用されていますが、保険の乗り換えによって新しく契約するときに、廃止された特約をつけることはできません。
具体的な例をあげると、事故を起こしても等級が下がらないようにする「等級プロテクト特約」や、同居する子どもに合わせて運転者全員の年齢制限を引き下げなくても済むようにする「子供特約」などです。これらはかつて人気の高い特約でしたが、保険会社にとって収益性が悪いため、現在では販売が終了している可能性があります。
【その3】等級アップが遅れる
自動車保険料の負担額に大きく関わるのが「等級」です。保険の契約期間中、無事故で満期を迎えると次回の更新で等級が上がり、等級に応じた保険料の割引を受けることができるようになります。特に保険に入りたてで等級が低い人は、一刻もはやく等級を上げて割引を受けたいところでしょう。
自動車保険の等級は、保険加入のタイミングからカウントが始まり、満期をもって反映されます。つまり、自動車保険を満期前に解約すると、等級のカウントがリセットされてしまうのです。等級が上がって保険料の割引を受けられるのは、新しく加入した保険が満期となる一年後になるでしょう。
では、割引を受けられない期間の保険料を出費として具体的に計算すると、差額はどの程度になるでしょうか?等級割引はすべての保険会社で共通して、以下のように設定されています。
・6等級…19%
・7等級…30%
・8等級…40%
・9等級…43%
たとえば6等級で100,000円の保険に加入する場合、6等級と7等級の差は11%、つまり11,000円です。保険の満期前乗り換えによって等級のカウントがリセットされると、この割引が受けられなくなります。等級は満期のたびに1つずつしか上がらないため、翌年以降も影響は続き、4年単位で見ると24,000円ほどの差が出ます。さらに、万が一事故を起こしてしまったときの、等級ダウンによる保険料値上がりの影響も大きくなるでしょう。
「速やかに保険を乗り換えたい、ただし等級アップも急ぎたい!」という場合は、乗り換え先の保険に「保険期間通算特則」という特約があるかを確認しましょう。この特約をつければ、等級のカウント期間を通算できます。乗り換え前の保険が満期になるタイミングに合わせて新保険を短期契約することで、乗り換え先での等級アップを最速化できます。
自動車保険を中途更改したときの扱いは?等級の引き継ぎはどうなる?
自動車保険を満期前に中途更改した場合、それまでの等級は引き継がれます。ただし、解約前の等級によって、引き継がれる期間や条件が異なります。以下で詳しく見ていきましょう。
【ケース1】等級が6以上の場合
6等級以上の「割引等級」の場合は前契約を解約した後、7日間に限って等級の引き継ぎができます。8日目以降の新規加入は基本的に「6等級」にリセットされてしまいます。無事故無違反の状態で長期間自動車を運転し、最高の20等級で割引を受けていた人でも、特別な手続きをせずに無保険状態が7日間を過ぎると、次の契約からは6等級になってしまいます。
それでは、20等級から6等級にリセットされた場合、割引率の違いによる保険料の差はどの程度になるでしょうか?
6等級の割引率は19%、20等級の割引率は63%です。100,000円の保険に加入する場合、6等級の場合の支払い金額は81,000円、20等級の場合は37,000円です。その差額は44,000円であり、実に2倍以上の差になります。
また、等級は1年に1つしか上がりません。6等級から20等級に戻るためには、最短でも14年間は無事故で更新を続ける必要があります。その間の出費をずっと20等級で割引を受け続けた場合と比較すると、トータルの差額は246,000円にもなります。
日頃から生活の中でクルマを使っている人は、無保険期間を作らないためと等級引き継ぎを確実に行うため、現在の保険の解約日と新しい保険の契約日を必ず揃えましょう。
【ケース2】等級が5以下の場合
5等級以下の場合、解約後7日を過ぎても6等級へのリセットはされません。保険解約後13ヶ月間は履歴が残り、他社の保険に乗り換えるときも引き継がれます。14ヶ月目以降には悪い等級の履歴が消えるため、6等級に戻って新規で保険に加入することができるようになります。
悪い等級を引き継ぎたくない場合は、13ヶ月間車に乗らないことを検討してみましょう。
【ケース3】7等級以上の特別な処置「中断」
7等級以上のドライバーで「海外への長期赴任」や「車を手放す」といった事情のある方に向けて、保険会社は「中断証明書」を発行しています。中断証明書とは、名前の通り「保険の一時中断」を証明する書類です。
中断証明書は保険を解約する時点で、保険をかけていた車が「車検が切れている」「すでに売却済み」などの理由から乗れない状態になっていることを条件に、保険解約から13ヶ月以内の申し込みによって発行されます。
中断証明書の有効期限は10年間です。発行から10年以内に車を買い替えれば、中断されていた等級からの保険加入が可能になります。
自動車保険を満期前に解約してメリットがあるケース
以上から、自動車保険の解約はよほどのことがない限り、満期で契約更新をするタイミングに合わせたほうが良いことが分かります。しかし、上記のペナルティを受けたとしても、中途更改によってメリットが生じる場合もあります。では、どのようなメリットが生じるのか詳しく見ていきましょう。
【その1】見積の結果、とても大きな差が出た
返戻金の短期率や等級アップの遅れによる損を考えても、トータルの出費が抑えられるのであれば、それは乗り換えても全く問題のない「お得な保険」です。目安としては、概算見積で現在の保険料から15%以上の値下がりがある場合は、満期前の乗り換え検討をしても良いでしょう。
6等級(19%割引)で中途更改した際、等級アップが遅れて20等級(63%割引)になるまでに支払うおおよその差額は、年額保険料のおよそ45%となります。返戻金の短期率にもよりますが、乗り換え後の保険料が15%以上安くなれば、その契約を3~4年程度継続することで中途更改のコストをペイできる計算になります。
なお、満期前に乗り換えることで、保険契約やその後の対応に差が出ることはありません。「高いけれど、お世話になってきた保険会社に申し訳ない…」といった人情は、この際忘れてしまいましょう。
【その2】車を買い替えた
車の買い替えで新車を購入した場合、保険乗り換えのメリットが増します。新車は大切に乗る人が多いことから事故率が低く、保険の使用率も抑えられています。新車ドライバーは保険会社にとって優良な顧客ということになり、保険会社によっては「新車割引」がつきます。
新車割引は「購入後25ヶ月以内の保険契約」を対象にしているので、車の購入と同時に保険契約をすれば、最長で3年間の新車割引を受けることができます。細かい内容は保険会社によって異なりますが、5~10%程度お得になります。車の乗り換えに合わせて、保険の乗り換えを検討してみても良いでしょう。
【その3】等級が高い、満期が近い
現在の等級がすでに充分高く、等級アップを焦らなくても良い場合は、保険乗り換えのハードルが下がります。目安としておすすめしたいのは、11等級(47%割引)以上です。
11等級(47%割引)から19等級(55%割引)までは、割引率の伸びは1%ずつになります。100,000円の保険に加入したとすると、11等級から19等級まででお得になるのは「年間1,000円」ずつ。11等級で保険を乗り換え、20等級(63%割引)まで無事故で等級が上がったときの差額は16,000円です。これは10年間かけて等級が上がったトータルの差額なので、実際に負担を意識することはほとんどないはずです。
また、等級の高い人は前払いしている保険の金額も低いため、短期率の影響を受けにくいようにできています。例として、18等級(54%割引)の人が100,000円の保険に入り、6ヶ月(短期率70%)で解約したときのケースを計算すると、以下のようになります。
・支払い金額…46,000円 (100,000円の54%引き)
・返戻金…13,800円 (短期率70%)
・短期率による出費…9,200円 (6ヶ月分の実質保険料-返戻金)
・等級アップ遅延による割引額の差…10,000円 (2年間トータル)
・合計の負担額…19,200円
この程度の差額であれば、乗り換え先の保険料によっては充分に元が取れてしまうのではないでしょうか?
まとめ
以上、満期前に自動車保険会社を乗り換える際のデメリットと注意点について解説しました。テレビCMやネットの一括見積などで様々な自動車保険を目にしますが、目先のお得感につられて予想外の損をしてしまわないように気をつけるようにしましょう。
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