【漫画】「天上天下唯我独尊」の意味知ってる?住職とヤンキーの会話から仏教を学ぶ

仏教やお経と聞くと、少し堅苦しいイメージを持つ人も多いのでは?そんななか近藤丸さん(@rinri_y)の漫画「ヤンキーと...

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仏教やお経と聞くと、少し堅苦しいイメージを持つ人も多いのでは?そんななか近藤丸さん(@rinri_y)の漫画「ヤンキーと住職」が、「おもしろくてタメになる」と話題だ。今回は現役の僧侶(浄土真宗本願寺派)兼漫画家になったきっかけや、作品に込めた思いなどを聞いてみた。

漫画を描くきっかけは仏教の授業

近藤丸さんは以前、仏教の学校で勤務していたそう。そもそも漫画を描こうと思ったきっかけは、何だったのだろう。

「浄土真宗の宗門校などで宗教科の教員として働き、中高生たちと共に仏教を学んでいました。教員の仕事にやりがいも感じていたのですが、新たなことにチャレンジしたいと2020年3月で退職。やりたいことの1つだった漫画を描き始めました」

漫画で仏教を伝えようと思った背景には、教員時代の経験も影響しているという。

「私は漫画や絵が好きで、授業中黒板に絵を描きながら説明することも。すると、普段は仏教に興味のない生徒が絵に食いついてくれることがあったのです。そこで、得意な絵を生かして仏教を伝えるのがよいのではと考えるようになりました。若い人や一般の方は、仏教の『教えの内容』を知らないことが多数だと思います。でも、仏教の話をしたら興味を持ってくれる生徒や、『聞けてよかった』と言われることも多くて。私自身仏教に助けられてきた経験もあったので、より多くの人に知ってもらう方法の1つとして、難しいお経の話をわかりやすく漫画で伝えてみようと思いました」

仏教の学校で教師をしていた頃の思い出を描いたエッセイ漫画も執筆/仏教高校で朝一番に出会うもの1
多くの人にとってあまりなじみがないからこそ、反響も大きかったそう/仏教高校で朝一番に出会うもの2

「ヤンキーと住職」誕生の背景

仏教の教えをより多くの人に広めるべく、教員から漫画家に転職した近藤丸さん。2020年10月に電子書籍として発売された「ヤンキーと住職」について、詳しく教えてもらった。

「この漫画はヤンキーがめちゃくちゃ仏教好きで、住職に逆に教えるという構成になっています。住職は仏教に詳しいけれど、どちらかと言えば、頭でっかち。それに対してヤンキーは、知識はないものの実直な性格で人生経験も豊富。むしろ住職より仏教を素直に理解する。そんな二人がお互いに仏教を学び合う話になっています」

仏教に造詣が深いヤンキー/卑下慢4

通常なら住職がヤンキーを仏教で導きそうだが、そうではないのがこの漫画のポイントだ。また、記念すべき第1話の背景にも、学校での授業が関わっているそう。

「お釈迦様の話で、お釈迦様は生まれた時に『天上天下唯我独尊』と叫んだとの伝説があります。言葉の意味は様々な解釈がありますが、『俺が一番偉い』ということではなく、『私の命はかけがえのないもので、これほど尊いものはないのだ。皆の命がそのように唯一の無上のものなのだ』という意味です。高校の授業でよく『暴走族の特攻服に“天上天下唯我独尊”と刺繍が入っているけど、意味を誤解しているんじゃないかな?でも、もし暴走族が本当にその意味を知っていて、あの刺繡を入れているとしたら、凄いですね』と話していました。これをそのまま漫画にしたのが、『ヤンキーと住職』の第1話です」

天上天下2
天上天下3
天上天下4

登場人物には自身と重なる部分や憧れを投影

漫画に登場するのは、基本的にヤンキーと住職の2人のみ。それぞれにモデルはいるのだろうか。

「ヤンキーは想像上のキャラクターです。住職も特にモデルはいないのですが、自分を重ねている部分がありますね。頭でっかちで、人付き合いが苦手な部分など…。一方でヤンキーは、自分でも憧れるような正直でいいヤツにと思いながら描いています」

一見コワモテながら、実はいいヤツなヤンキー。人の中身は見た目でわからないことを教えられる/天上天下9

仏教に対するリスペクトを込めて漫画を描く

仏教といえばなんとなく厳格なイメージだが、漫画にするうえでのルールやこだわりについて聞いてみた。

「仏教のことを漫画にするのは、非常に危ないところもあると思うんですね。人間の生死に関わるような問題を扱った、大切な教えだと思っているので。仏教の開祖である釈迦は、老病死という問題に本当に悩み、道を求めました。仏教は、人の悲しみから生まれた教えなのです。そして2500年ずっと悲しみの場で読まれてきたのが、お経です。だから、人間の苦悩や悲しみにずっと寄り添ってきた仏教を『ネタ』に漫画を描くのではなく、自分が仏教を通して学んだことなど大切な部分を見極めて、リスペクトを込めて描きたいです。あるあるネタやおもしろおかしい話は、別に私が描かなくてもいいのでは?と考えています」

「卑下慢」は現代人にとって、よく当てはまる煩悩の一つ/卑下慢2
人と比較して卑下することすら自己主張だと、仏教は指摘する/卑下慢3

仏教を扱った漫画を描くうえで、自身の学びや仏教の本質を描きたいという近藤丸さん。しかし、わかりやすい漫画には落とし穴もあるという。

「浄土真宗では『知的に理解することでわかったつもりになることが一番危ない』とも言われます。浄土真宗の開祖である親鸞聖人も書物の中で、『感動で救われたり、わかって救われるのではない』との主旨を書かれているように、わかりやすさというのは非常に危ないものであり、ただ感動で終わってはいけないのです。ここが仏教の厳しさでもあります。漫画はこの、『わかりやすさの落とし穴』という部分でリスクがあり、教えや他者の言葉を描く時には慎重にならないといけないとも感じています」

現在新刊の執筆中!浄土真宗の経典もいつか漫画化に挑戦!?

今後の予定を聞いたところ、新刊の発売に向けて絶賛執筆中とのこと。

「2022年発売予定の本に向けて、『ヤンキーと住職』の続編を描いています。人生で折に触れて読み返してもらえるような、いい作品を完成させることが今の目標です。今後も『ヤンキーと住職』を中心に、基本は楽しく、時に真面目に、仏教を伝える漫画を描いていきたいです。もちろんまだまだ漫画の技術も、仏教の勉強も不足しているので、両方修行していきます。そしていつの日か、浄土真宗の主たる経典である『無量寿経』の教えの漫画化に挑戦したいです」

また、現代社会が抱える問題についても発信していきたいそう。

「今、自殺者が増加していることがとても悲しいですし、大きな社会課題だと考えています。仏教を学び教えを伝えるのはもちろん、人々と共に悩んでいきたいです。何ができるかわかりませんが、社会の問題に目を向けて自分なりに勉強したり、興味を持ったりして、発信していきたいです」

仏教高校で朝一番に出会うもの6
仏教高校で朝一番に出会うもの7
仏教高校で朝一番に出会うもの8
仏教高校で朝一番に出会うもの9

2500年もの間、人間の悲しみや苦悩に寄り添ってきた仏教には、悩み多き現代人に応える言葉も多数。堅苦しいことは抜きにして、「ヤンキーと住職」で仏教やお釈迦様に興味を持ってみては。人生のヒントが見つかるかもしれない。

「ヤンキーと住職」が生まれた原点の作品/天上天下1

取材・文=石川知京(関西ウォーカー編集部)


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