
定期借地権付きマンションはお得?そのメリット・デメリットを徹底解説
・定期借地権付きマンションというのが安く売りに出ているけれど、普通のマンションとどう違うの?
・所有権付きマンションではなく、借地権付きマンションを買っても大丈夫?
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マンション購入を検討していて、そんな疑問や不安を抱いている方は多いのではないでしょうか。
「定期借地権付きマンション」とは、「マンションの物件は購入するが、土地部分は地主から期限付きで借りている物件」のことです。
土地とマンションを同時に購入する「所有権付きマンション」とはさまざまな点で違いがあります。
たとえば、
・所有権付きより価格が安い
・税金が安い
・土地を借りている地代を払わなければいけない
・期限が来たら土地を更地にして地主に返さなければならない
・住宅ローンが通りにくい
などです。
メリットもデメリットもあり、一概に得とも損とも言い切れません。
そこでこの記事では、定期借地権付きマンションについてわかりやすく解説し、そのメリット、デメリットを所有権付きマンションと比較していきます。
・定期借地権付きマンションとは何か
・定期借地権付きマンションと所有権付きマンションの違い
・定期借地権付きマンションのメリット、デメリット
・定期借地権付きマンションの価格目安
・定期借地権付きマンションを購入する際の注意点
などを知ることができます。
最後まで読めば、定期借地権付きマンションについてあなたが疑問に思っていること、不安に感じていることが解消されるはずです。
この記事をもとに、あなたは定期借地権付きマンションと所有権付きマンションのどちらかを買うべきか、納得して判断できることを願っています!
1. 定期借地権付きマンションとは?
マンション購入を検討していると、「定期借地権付きマンション」という物件を見かけますよね。
これは普通のマンションとはどう違うのでしょうか?
そもそも「定期借地権」とはどんな権利なのでしょう?
この章では、定期借地権、定期借地権付きマンションとは何かという疑問に答えていきましょう。
1-1.定期借地権とは何か
そもそも「定期借地権」とはなんでしょうか。
ひと言で説明すると、「期限付きで土地を借りて使用できる権利」のことで、平成4年(1992年)に施行された「借地借家法」によって定められました。
たとえば50年という期限付きで借り手と地主が契約すると、その間は借り手側がその土地で住んだり事業をしたりすることができます。そして50年経つと貸借契約は満了し、土地は地主側に返却されるわけです。
実はこの法律が施行される以前にも「借地権」はあり、契約期限も定めることができました。
しかし、従来の借地権では、期限がきても借りている人が希望すれば契約更新することができ、貸している地主側は何か正当な理由がなければ更新を拒否できない決まりになっています。
つまり、借りる側の権利が強く、地主側は一度貸したらなかなか返してもらえない、他の人に貸したり売却したくてもできない、という問題があったのです。
そこで、この問題を解決するために生まれたのが「定期借地権」というわけです。
定期借地権が従来の借地権と異なるのは、契約期限がきたら借地関係は完全に終了し、更新されることがないという点です。
たとえば50年の貸借契約を結んだ場合、50年後になったら借りた側がその土地を更地にして返さなければなりません。
これならば、地主側も安心して土地を貸すことができますよね。
また、この「借地権」は「地上権」と「賃借権」の2種類に分けられます。それぞれどんな権利かは以下の表を見てください。
【 借地権の「地上権」と「賃借権」】
借地権
●地上権
その土地を支配し、そこにある建物や樹木を所有する権利。
土地を借りてこの権利を持つ者は、地主の承諾がなくてもその建物などを第三者に貸したり売ったり、借金の担保にすることもできる。
土地を借りていることに対する地代の規定はなく、無償でもよい。
●賃借権
その土地とそこにある建物などを使用する権利。
そのかわりに賃料を支払う義務がある。
建物などを第三者に貸したり売ったりする場合には、地主の承諾をうけて承諾料を支払わなければならない。
同じ「借地権」でも「地上権」は非常に強い権利で、借りる側に有利になっています。
一方「賃借権」は地上権よりは弱い権利で、一般的な貸す・借りるの関係ととらえればいいでしょう。
ちなみに定期借地権について定めた借地借家法の条文も以下に挙げておきます。興味があれば目を通してみてください。
<借地借家法>第二十二条
存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
1-2.定期借地権には3種類ある
定期借地権は、そこに建っている建物の扱いによって以下のような3種類に分類されています。
①一般定期借地権:一般的な定期借地権。多くのマンションの場合はこれに当たる。
②事業用定期借地権:住居用ではなく事業用の建物に限った定期借地権。
③建物譲渡特約付借地権:借地権の期限がきたら、そこにある建物を地主が買い取る。
3つの違いを比較したのが以下の表です。
●権利の存続期間
一般定期借地権 50年以上
事業用定期借地権 ①10年以上30年未満 ②30年以上50年未満
建物譲渡特約付借地権 30年以上
●建物の利用目的
一般定期借地権 規定なし
事業用定期借地権 事業用のみ
建物譲渡特約付借地権 規定なし
●契約満了時の対応
一般定期借地権 更新はなく、借り手は土地を更地にして地主に返却する
事業用定期借地権 【1】更新はなく、借り手は土地を更地にして地主に返却する
【2】更新も可能で、借り手が地主に建物の買い取りを要求することもできる
建物譲渡特約付借地権 更新はなく、地主が借り手から建物を買い取る
●主な利用例
一般定期借地権 戸建て住宅、マンションなどさまざま
事業用定期借地権 コンビニなどの店舗、工場など
建物譲渡特約付借地権 アパート、マンション、店舗、オフィスなど
では、それぞれくわしく説明していきましょう。
一般定期借地権
一般定期借地権は、定期借地権の中でもポピュラーもので、借地権の契約は最短50年と長期にわたります。
たとえば使う予定のない土地を持っている地主さんが不動産開発業者に土地を貸し、業者がそこにマンションを建てて分譲するケースなどがあります。
この場合、地主側は土地を貸している地代を受け取ることができ、業者はマンションを売却したお金を得ることができるので、お互いWIN-WINの契約です。
ただ、契約満了時には借りた側が建物を壊し、土地を更地にして地主に返却しなければなりません。
もし借り手が希望しても契約更新はできませんし、建物を地主さんに買い取ってほしいと要求することもできないのです。
反対に地主側は、契約満了後にはその土地をまた別の人に貸すことも、売却することも自由です。
事業用定期借地権
店舗や会社、工場など、事業をする目的で土地を借りる際にのみ適用される定期借地権です。
事業用定期借地権は、契約期間によってその内容が以下のように異なります。
【1】契約期間が10年以上30年未満
一般定期借地権と同様の内容です。契約期間が満了したら、借りている側が土地を更地にして地主に返さなければならず、契約を更新することもできません。
【2】契約期間が30年以上50年未満
契約期間が満了しても、契約を更新することが可能です。もし契約を終了する場合には、借りている側から地主に建物の買い取りを要求することもできます。
そのため、あとあと売却したり別の人に貸したりしたい場合は契約期間を30年未満に設定し、ずっとそのままにしていても問題ない場合は30~50年に設定するとよいでしょう。
建物譲渡特約付借地権
住居用、事業用など建物の利用目的にかかわらず、契約期間が満了したらその建物を借り手側から地主側に譲り渡す契約になっている定期借地権です。
契約期間は30年以上と、一般定期借地権より短くなっています。
具体的にはどんなケースかというと、主に賃貸物件を建てる場合が想定されるでしょう。
たとえば地主が不動産開発業者に土地を貸し、業者はそこにマンションを建てて賃貸に出します。契約期間中は、地主には土地を貸している地代が入り、業者は賃貸料を得ることができます。
そして契約期間が満了すると、地主がマンションを買い取り、以後は地主が賃貸料を受け取ることができるというわけです。
マンションだけでなく、アパート、店舗、オフィスビルなど、さまざまな賃貸物件での利用が考えられます。
1-3.マンションの定期借地権と所有権との違い
ここまで定期借地権について説明してきましたが、実は定期借地権付きの物件は非常に少なく、ほとんどのマンションは「所有権」がついています。
「所有権」とは、その対象となるものを全面的に支配する権利のことです。
不動産でいえば、土地や建物が完全に自分の所有物になり、そこに自分が住むことも人に貸すことも、建て直すことも売却することも、すべて自由に行う権利があります。
定期借地権と所有権との違いを表にまとめてみましょう。
【マンションの定期借地権と所有権との比較】
定期借地権 所有権
●権利の存続期間
定期借地権 一般定期借地権で50年以上
所有権 期限なし
●地代
定期借地権 借り手から地主に地代を支払う
所有権 必要なし
●物件価格
定期借地権 所有権付きマンションの70~80%程度の価格で購入できる
所有権 定期借地権付きより割高
●税負担
定期借地権 土地に関する税はかからない マンションに関する固定資産税、都市計画税はかかる
所有権 マンションに関する固定資産税、都市計画税に加えて、土地に関する固定資産税、都市計画税もかかる
●転貸、譲渡など
定期借地権 地主の許可なくはできない
所有権 自由に行うことができる
●その他
定期借地権 借地権の期限満了時には更地にして地主に返却しなければならない→解体費用が必要
それぞれ説明しましょう。
定期借地権付きマンション
マンション自体は自分で購入するので自分の所有になりますが、土地は地主の者を借りている状態で、マンション購入者には所有権はありません。
そのかわり土地の所有権付きマンションよりも2~3割安い価格で売り出されることが多いのが特徴です。
ただ、借地権には期限があり、50年契約であれば、契約満了時には土地を更地にして地主に返さなければなりません。
そのためマンション購入費用以外にも、土地を借りている地代を支払い、将来の解体に向けての解体費用準備金を積み立てていく必要があります。
つまり費用の面では、
◎購入価格は所有権付きマンションより2~3割安い
◎土地の固定資産税、都市計画税はかからない
×地代、解体費用準備金を支払っていかなければならない
というプラス面とマイナス面があるのです。
所有権付きマンション
マンションの所有権とともに土地の所有権もついてくるので、期限なくいつまででもそのマンションを保有して住み続けることができます。
賃貸に出すこともできますし、リフォームしたり売却することも自由です。
そのかわり、定期借地権付きマンションより2~3割程度割高で、土地の固定資産税、都市計画税も支払っていかなければなりません。
これら費用面について整理すると、
◎地代がかからない
◎賃貸に出せば家賃収入が得られる
×購入価格は定期借地権付きマンションより2~3割高い
×土地の固定資産税、都市計画税がかかる
となります。
「定期借地権付きマンションと所有権付きマンション、どちらが得か?」と考えるとき、費用の面に限っていえば、上記のプラスとマイナスを加味して総支払額を算出し、それぞれを比較するといいでしょう。
2. 定期借地権付きマンションのメリット
定期借地権付きマンションの購入を検討している人は、まず「所有権付きマンションに比べて価格が安い」ことに惹かれるのではないでしょうか?
それもそうですが、定期借地権付きマンションにはほかにもお得な点があるのです。
ここではそれらのメリットについて挙げてみましょう。
2-1.所有権付きに比べて価格を7~8割程度に抑えられる
繰り返しになりますが、まず第一に定期借地権付きマンションは価格が安いことが挙げられます。
所有権付きマンションの価格は「マンション価格+土地価格」ですが、定期借地権付きマンションの場合は「マンション価格」のみです。
土地を購入しない分、2~3割程度安く購入できるのです。
ただ、土地を購入しない代わりに、住んでいる間は土地使用料=地代を支払わなければならないので、どちらが得かは総額を概算して検討する必要があるでしょう。
2-2.税金が安い
不動産を所有していると、
固定資産税:標準税率 1.4%
都市計画税:制限税率 0.3%
を支払わなければなりません。
※どちらの税率も、自治体によって異なる場合があります。
所有権付きマンションの場合、マンションと土地の両方に税金がかかりますが、定期借地権付きマンションならマンション分の税金だけで済むのもメリットです。
2-3.立地や付加価値によっては高く売却できる可能性がある
実は定期借地権付きマンションの中には、都心の一等地に建つ高級物件やタワーマンションもあります。
その場合、近隣の同レベルの所有権付きマンションよりも安く購入できるのは大きなメリットです。さらにそういう物件は価値が下がらず、ものによっては価格が上昇するケースもあるのです。
というのも、定期借地権で貸し出される土地の中には、
・自治体が所有している土地
・大使館など公的機関が所有している土地
・寺社仏閣の敷地
などがあるからです。
これらの土地は、非常にいい立地にある場合が多いものです。もし所有者が財政的に苦しくなった場合、売却すれば高額で売れるでしょう。
しかし、一方で大切な財産としてできれば売却はしたくないものでもあるわけです。
そこで、これらの好条件の土地は「定期借地権付き」という形でマンション用地として貸し出され、それを借りた不動産開発業者が分譲マンションを建てて販売しているのです。
こういうケースでは、購入希望者の数が販売戸数を大幅に上回るほどの人気物件になることもあります。
そのため、購入者が数年後に売り出してもすぐに買い手がつき、ときには購入価格よりも高く売却できる可能性も出てきます。
つまり定期借地権付きマンションは土地の権利がないからといって、一概に所有権付きマンションより価値が低いとは言い切れず、その価値は立地や設備次第なのです。
このメリットを生かして、
・憧れの一等地に安く住む
・数年後に高く売却してまた別の定期借地権付きマンションに住む
ということを繰り返して、長年都心住まいを続けつつ売却益を得ている人もいるそうです。
【CASE】一等地に建つ定期借地権付きマンションの例(シティタワー品川)
品川駅から徒歩10分、住所でいうと港区港南という好立地に都営住宅がありました。
東京都はその土地を定期借地権付きで貸し出し、2008年、タワーマンション「シティタワー品川」が完成しました。
地上43階建て、総戸数828戸、RC造のマンションで、定期借地権は72年(竣工から70年後に退去、72年後に更地にする)という長期契約です。
竹中工務店が設計・建設し、住友不動産販売が販売を担当、コンシェルジュサービスや共用のゲストルームなどの設備やサービスも充実しています。
にもかかわらず、当時の販売価格は、73.89㎡/2,247万円(1階・2LDK)~89.18㎡/3,633万円(43階・3LDK)と破格の安さで、購入希望倍率は数倍~50倍以上にもなったといいます。
10年以上経った2020年10月現在、中古物件として売りに出されている価格を見ると、
・84.26㎡/3LDK/43階:9,600万円
・89.87㎡/3LDK/11階:7,280万円
・73.89㎡/2LDK/28階:6,480蔓延
など、販売価格の数倍にも上昇しています。
この物件は、定期借地権付きマンションの中でも特に販売価格が安くて話題になったものですが、ここまで破格でなくとも近隣相場より安い物件が多いとされています。
3. 定期借地権付きマンションのデメリット
定期借地権付きマンションのメリットは、主に費用に関してお得であるという点にあります。
しかし、「やっぱり土地の所有権がない、数十年で退去しなければならないという点が不安」という理由で、購入をためらう人も多いようです。
そこでこの章では、定期借地権付きマンションのデメリットに焦点をあてて解説していきましょう。
3-1.期限になれば更地にして返さなければならない
まずもっともネックになるのは、やはり借地権の期限が満了すれば、土地を更地にして返さなければならないという点でしょう。
しかもこの期限は、「土地が貸し出されたとき≒新築時からの年数」であって、「入居してからの年数」ではありません。
つまり、同じ50年契約のマンションであっても、新築時に入居すれば50年間住むことができますが、たとえば築10年のときに中古で購入、入居した場合は、50年-10年=40年しか住めないのです。
この「40年」のように、「現時点であと何年借地権が残っているか」を「残存期間」といいます。
残存期間が短くなればなるほど、退去までの期間も短くなりますし、借地権付きマンションの価値は下がって売却しにくくなります。
もし30代の人が残存期間30年の物件を購入した場合、60代で退去しなければならないわけです。
また、「数年住んだら売却したい」「将来子どもが独立したら、売ってそのお金で小さいマンションに住み替えたい」などと希望している人は、残存期間が短い物件を購入するといざというときなかなか売れなかったり、売却額が希望より低くなったりする恐れがありますので要注意です。
そしてこの件についてもう一点のデメリットは、「更地にする際の費用がかかる」ということです。
借地権の期限が満了したとき、マンションを解体する費用は借り手側が負担しなければなりません。
そのため、多くの定期借地権付きマンションでは、居住者が毎月一定額を「解体費用準備金」として積み立てているようです。
これは所有権付きマンションでは不要な費用なので、「定期借地権付きマンションは月々コストがかかる」と言われる所以のひとつです。
3-2.住宅ローンが通りにくい
定期借地権付きマンションは、住宅ローンが通りにくいというのも大きなデメリットです。というのも、前述したように定期借地権付きマンションは売却しにくいからです。
金融機関が住宅ローンを貸す場合、担保となるのはその住宅です。
もしローンを借りた人が返済できなくなれば、金融機関は担保の住宅を売却することでローンの残債を回収します。そのため、売却しにくい物件=担保価値が低い物件となり、住宅ローンが通りにくいのです。
特に残存期間が短い物件の場合、この傾向が強まりますので要注意です。
3-3.地代を払い続ける必要がある
定期借地権付きマンションに住み続ける間は、その土地をずっと借りている状態です。
そのため、土地を借りている賃貸料=地代を支払い続けなければなりません。
これもまた解体費用準備金と同様に所有権付きマンションにはないコストなので、定期借地権付きマンションのマイナス面として挙げられます。
また、この地代は一定とは限りません。
契約内容にもよりますが、その土地の評価額が上昇すれば地代も上昇するケースがあり、そうなると年々マンションの価値は下がるのに支払う地代は上がっていくことになります。
この点も契約時に確認しておくといいでしょう。
3-4.売却しにくい
繰り返しになりますが、定期借地権付きマンションを購入後に売却したくなっても、なかなか売れない場合があるのも難点です。
その理由は、
・土地の権利がないこと、期限付きで退去しなければならないことに不安を感じる人が多い
・借地権の期間内に売却したい場合、借地権が「賃貸権」のマンションであれば、地主の承諾を得なければならず、承諾料が必要な場合もある
(*)「地上権」のマンションであれば、地主の承諾は必要ありません。
などです。
そのため、希望の時期に希望額で売却したくても、なかなか買い手がつかなかったり、売却金額が低くなったりする恐れがあるのです。
4. 定期借地権付きマンションの価格・費用
定期借地権付きマンションのメリットとしてまず挙げられるのは、価格の安さです。
では、実際には所有権付きマンションと比較してどれくらい安いのでしょうか?それは物件によってまちまちですが、おおむね所有権付きマンションの70~80%程度の価格だと言われています。
中には、2章で例に挙げたシティタワー品川のように、近隣相場の数分の一という破格の物件もありますが、それはレアケースです。同じような条件の所有権付きマンションと比較して、2~3割安ければ相場価格と考えていいでしょう。
また、定期借地権付きマンションには、所有権付きマンションの場合にはない費用が発生しますので、それも知っておいてください。
それらを以下の表にまとめました。
【価格と必要コスト比較】〇:必要/×:不要
●販売価格
定期借地権付きマンション 〇所有権付きマンションの70~80%程度
所有権付きマンション 〇
●地代
定期借地権付きマンション 〇
所有権付きマンション ×
●管理費
定期借地権付きマンション 〇
所有権付きマンション 〇
●修繕積立金
定期借地権付きマンション 〇
所有権付きマンション 〇
●解体費用準備金
定期借地権付きマンション 〇
所有権付きマンション ×
●不動産取得税
定期借地権付きマンション 建物部分にのみ〇
所有権付きマンション 建物・土地ともに〇
●固定資産税
定期借地権付きマンション 建物部分にのみ〇
所有権付きマンション 建物・土地ともに〇
●都市計画税
定期借地権付きマンション 建物部分にのみ〇
所有権付きマンション 建物・土地ともに〇
このようにそれぞれかかる費用が異なるため、もし「定期借地権付きマンションと所有権付きマンション、どちらが得か?」を考えるなら、以下のように総支払額を概算して比較する必要があるでしょう。
定期借地権付きマンション
マンション価格+(地代×残存期間)+(解体費用準備金×残存期間)+不動産取得税+(固定資産税×残存期間)+(都市計画税×残存期間)
所有権付きマンション
マンション価格+不動産取得税+(固定資産税×残存期間)+(都市計画税×残存期間)
5. 定期借地権付きマンションを買う際の注意点
ここまで定期借地権付きマンションのメリットとデメリットを考察してきましたが、それを踏まえて「やっぱり定期借地権付きマンションを購入したい!」という人もいるでしょう。
そんな人のために、購入時の注意点をいくつかお知らせしておきます。購入前には以下のことをよく確認するようにしてください。
5-1.残存期間を確認する
定期借地権付きマンションのデメリットは、借地権の期限がきたら退去しなければならないことです。そこで、まずは残存期間を確認して、短い年数の物件は避けるようにしましょう。
たとえば30代で購入する場合、残存期間が35年なら60~70代でマンションを出なければなりません。
「定年したら田舎に戻って実家に住む予定」とか、「他に賃貸に出している所有権付き物件があるので、ゆくゆくはそちらに自分が住むつもり」などという人であれば問題ないでしょうが、永住するつもりで購入する場合は、自分の年齢に残存期間を加算して、その時点で無理なく退去できるかを考えたほうがよいでしょう。
5-2.住宅ローンを組めるか確認する
定期借地権付きマンションは住宅ローンが通りにくいということは前述しましたが、金融機関によっては定期借地権用のローン商品が用意されている場合もあります。
ただそのローンにもさまざまな条件や制約がありますので、自分が購入したい定期借地権付きマンションがそれに当てはまるか、ローンを組めるかどうかを確認しましょう。
定期借地権向けローンの条件・制約には、以下のようなものが考えられます。
(1)担保価値が低いので、融資上限額が低い
定期借地権付きマンションは、土地の権利がない、住める期間の期限があるなどの理由で担保価値は所有権付き物件より低いものです。
そのため受けられる融資上限額も、低めに設定されている場合があります。
金融機関によっては「都心の一等地のマンションを買いたい」などという場合には足りないことも考えられるので要注意です。
(2)融資期間は残存期間以内
借地権の残存期間が短い場合、それを超える年数でローンを組むことができません。
というのも、住宅ローンは購入する物件を担保にするからです。
もし残存期間30年の定期借地権付きマンションに対して、35年ローンを組んでしまった場合、ローンを完済しないうちに借地権が切れてしまいます。
たとえば31年目にローンの支払いができなくなった場合、金融機関側は通常なら担保物件を売却して残債を回収しますが、この場合は借り手側の物件に対する権利はすでに消滅している上、物件自体も解体されて存在しないので回収不能に陥ってしまうのです。
そんなことのないよう、定期借地権付き物件に対するローンは、借地権の残存期間以内に設定されているわけです。
ですから自分が購入したいマンションの残存期間が短い場合は、その期間内でローンを完済できることが条件になります。
金融機関によっては、「残存期間10年以上」などと制限を設けているケースもあるので確認しましょう。
5-3.地主の承諾が必要な場合がある
住宅ローンの条件として、地主の承諾を求める金融機関も多いようです。
これが必要かどうかは金融機関によって異なるので、事前に確認し、地主の承諾を得るようにしましょう。
6. まとめ
いかがでしょうか?
定期借地権付きマンションとは何か、よく理解できたかと思います。
では最後に、この記事の内容を振り返ってみましょう。
◎定期借地権付きマンションとは
「マンションの物件は購入するが、土地部分は地主から期限付きで借りている物件」
◎定期借地権付きマンションのメリット
・所有権付きマンションより価格が安い
・税金が安い
・場合によっては高く売却できる
◎定期借地権付きマンションのデメリット
・期限になったら更地にして地主に返さなければならない
・住宅ローンが通りにくい
・地代を払い続けなければならない
・売却しにくい
これらを踏まえて、あなたが納得できるマンションに出会えるよう願っています!
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