R指定のヒーロー映画、過激描写以外のメリットは ─ 『LOGAN/ローガン』監督「物語に縛りがなくなる」

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ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンの最終作『LOGAN/ローガン』(2017)は、コミック映画としても革新的な作品だった。『

』のイメージを打破する残酷描写は、同じくR指定コメディ『

』(2016)を大ヒットさせた20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)が、“大人向けヒーロー映画”を真逆のベクトルに振り切った成功例だ。

脚本・監督を務めたのは、『フォードvsフェラーリ』(2019)『3時10分、決断のとき』(2007)などのジェームズ・マンゴールド。米

では、映画をR指定で撮ることのメリットが語られている。『LOGAN/ローガン』を「R指定にできるなら」という条件で引き受けたという監督は、「R指定にするのは、ただ単に暴力的にしたいからではありません。そういう側面は確かにあるけれど」と話しているのだ。

「R指定の映画にするということは、もはや9歳や10歳の子どもをターゲットにしないということ。そうすると、舞台裏に変化が生じます。つまり、スタジオが家族で楽しめる映画を期待しなくなる。家族向けの映画を求められないのであれば、物語の縛りがなくなります。汚い言葉だとか、性的だとか、暴力的だとかいうこととはまるで別の話です。さらに高い読解力を求めることができる。シーンを長くできるし、しっかりと停滞させられるし、テーマを複雑に、大人向けにすることもできます。サービスをする必要がないからです。」

確かに『LOGAN/ローガン』は、容赦のない暴力表現だけでなく、全体を貫くハードなトーン、西部劇の影響も色濃いストーリーテリングなど、“大人向け”の仕上がりとなった。こうした作風と物語が実現できたのも、本作がR指定だったからこそなのだろう。一方でマンゴールドにとっては、それこそ自分が表現したいコミックの世界だったらしい。監督は「ひとりの少年として、コミックの子どもっぽくないところに惹かれていた」という。

「ロマンスやセクシャリティ、復讐、喪失感、幼少期のトラウマ、精神的ダメージ、というテーマに共感していたし、とても興味深いと思っていました。とても複雑なことがコミックで描かれていて、それが魅力のひとつだったんですよ。子ども向けのテレビやアニメにはないものがあった。きわどいところがあって…今になって思えば、バッグス・バニーも同じように見ていたんですが。きわどさが大好きだったんですよね。」

ちなみにマンゴールド監督は、『LOGAN/ローガン』をR指定で作るため、ある戦術をもってフォックスに臨んでいる。本人の言葉を借りれば、それは「予算と引き換えにしてでも自由を手に入れる」こと。R指定を提案した際、「収入が3~4割減る」と主張したスタジオに対し、監督は「それならコストを3~4割減らしましょう」と応じたのだ。『デッドプール』の大ヒット、そして監督いわく「スーパーヒーロー映画を作ることに創造的な行き詰まりがあった」というスタジオの空気がこれを後押しした。当時、スタジオ側には“このままではいけない、変化が必要だ”という意識があったそう。あらゆる条件と状況が重なって、『LOGAN/ローガン』の完成度は担保されたのである。

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