寂れた一本道にセンスのいいカフェが一軒できれば、「街」になる。-WELCOMEグループ横川正紀

〜 WELCOMEグループ代表 横川正紀氏インタビュー連載③ 〜

インテリアショップ「GEORGE’S(ジョージズ)」からスタートし、ライフエディトリアルストア「CIBONE(シボネ)」や食のセレクトショップ「DEAN&DELCA(ディーンアンドデルーカ)」、食とくらしのDIYを提案する「TODAY’S SPECIAL(トゥディズスペシャル)」などを経営し、様々な角度から多種多様なライフスタイルを提案するウエルカムグループ代表の横川氏に「暮らし」をテーマにインタビュー。連載として横川氏のライフスタイル論を掲載してきましたが今回が最終回。

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WELCOMEグループ代表 横川正紀氏 @CIBONE Aoyama

真似をするのではなく、優れているものから学ぶことが大切

日本人は人の真似をするというか「習う」という風習があると思うんですよ。みんなと同じってことより、自分が好きだって人の真似をするだとか、そういうのを受け入れる文化ですよね。それって本当に自然なことだと思うんですよ。感覚の合う人同士については、自分よりも優れてる人を真似してみたり…それを真似というより「学ぶ」というか、自分より丁寧な暮らしをしている人がいたら、その人から学ぶべきですよね。

その人が必ずしもプロフェッショナルだったり、資格を持っていたりしなくてもいいですし、例えばお漬物なら料理研究家よりおばあちゃんの方が絶対詳しいですから。そういう身の回りにある暮らし方の中の優れたもの、優れた話って本来だれもが持っているものなので、それを丁寧に編集してわかりやすくお届けするのが僕らの仕事なのかなと思うんですよ。

CIBONE Aoyama

暮らしって実は家の中だけではないんですよ

もともと自分が学生の時にマンションを選ぶ際、どのマンションも気に入らなかったんですよ。マンションのデザインとか間取りとか。予算も少なかったので仕方なかったんですが、贅沢な家には住めなかったんですね。そんな時に1階に小さな雑貨屋さんがあって、その横にカフェがある素敵な物件を見つけたんです。その瞬間に僕はこの家に住もうというより、この街に住もうと思ったんですよ。暮らしって家の中にあるものだけじゃなくて、自分が行動しているところ全てにあるもの、つまり「生活」ですからね。

店づくりは街づくりだと考えていて、僕らみたいな店、つまり「商店」が街の顔を作って人々の暮らしを支えていると思います。そこに駅がなくても、そこにバス停がなくても、寂れた一本の道にセンスの良いカフェができて、そのカフェに飾りたいお花を頼んでいたら、そのお花屋さんが隣にできて、そんなカフェに通う人が好きな本を売る本屋さんができて、その人達がそのカフェで使っているような器が好きだったから器屋さんができて…みたいな感性の合う物同士が一軒の店じゃなくても、もし道の空き家にできていったら、きっとこの道は凄くセンスのいい道になっていくだろうなと。そういうことが好きな人がこの周りに住み始めたら、自ずとバスは止まらなくてはいけなくなってバス停ができたり、そうなったら街に住みたい人が増えて家ができ、マンションができて公園ができたりして、街の価値も上がっていく。そういうのが本当の街づくりじゃないんですかね。

WELCOMEグループ代表 横川正紀氏 @CIBONE Aoyama

本質的な街づくりは「下町」が教えてくれている

心地よい街づくりは既に昔の下町が教えてくれていて、なんだかよくわからないけど、ココいいよねっていう。そういう街って大体、計画的に作られていなくて、でも感覚の合う人が集まっていて、自然とできたものなんですよね。料理人が都会で働いていたんだけど、独立するときには自分が住んでいた街の商店街でやりたくなるみたいな。そういうことが段々織り成していって、なんかいいよねこの街、みたいなことに繋がっているように思いますね。

昔よりも人はインターネットを通じて、デザインとか色々な食文化とか、音楽のジャンルもそうだし、インテリアのこともそうですけど、より多くの世界的な情報が手に入るじゃないですか。そうやってせっかく知恵がついたのに、行動パターンは昔よりもとっても窮屈なんですよ。ここでしかやっちゃダメだとか、こんなことはしたらダメだとか。大型商業施設の中にギュウギュウ詰めにされて、大きな駐車場にみんなで車停めて、そこでみんな同じ買い物してるって…あんなにみんな個性個性って言ってたのに、どこにいっちゃったんでしょうか。インターネットの世界ではあんなに自由に飛び回れるのに、リアルな世界ではなんでそんなに窮屈な行動するんですかって。それをどこかでみんな感じているんじゃないでしょうか。僕らはこういうお店作りを通じて、予定調和じゃない新しい出会いとかを提案していきたいんです。自分が欲しいと思っていたものだけじゃなくて、気付きもしなかったことに出会ってしまったりする、そういうハプニングって、ゆとりがないと起きないんですよね。

僕は東京の国立に育ったんですが、大学通りという並木道を中心に程よく広がった街並みには歩くのに丁度よい距離感がある。公園もたくさんあったし、自転車とか歩きで巡るのが楽しい街だったんですよね。路地裏に入るとJAZZ喫茶があったり、古本屋さんがあったり骨董品屋さんがあったり、30年前から有機野菜の自然食料品店もあったんですよ。
そういう街に育ったんで、そういうものが自分の中のベースにあるんじゃないかなって思います。感覚のいい人達が住んでた街で自然と感性を磨いていたのかもしれません。
僕らは今、そういう街を作っていかなければならないと思っているんです。

Photo:木下誠
Text:小久保直宣(LIMIA編集部)

◆取材協力
WELCOMEグループ

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