生命保険で相続税も基礎控除の対象に?生命保険の控除と対策、活用法

相続税を計算する際に基礎控除があることは、平成27年に相続税法改正が行われたときにさまざまなメディアで大きく取り上げられ、広く知られることとなりました。しかし基礎控除の他にも、相続税計算において生命保険金版「基礎控除」ともいえる非課税枠があることをご存知ですか? この生命保険金の非課税枠は、相続税対策に活用することもできます。生命保険金版「基礎控除」である非課税枠とは何か、そしてその活用方法とはどのようなものかについて、整理していきましょう。

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相続税が課税されてしまう場合とは?

相続税は、どんなときに課税されてしまうものなのでしょうか。まずは、相続税がどのように計算されるのかを改めて確認してみます。

①課税価格の合計額を計算する
相続財産の評価額を算定し、その金額を合計します。相続財産には、本来の相続財産(不動産や現金、預金など)の他に「みなし相続財産」(生命保険金や死亡退職金、弔慰金)があります。その合計額から、非課税枠財産(墓地、仏壇、仏具等)と債務・葬式費用を差し引いて、課税価格(相続税の計算対象となる金額)を算出します。なお、生前贈与財産や相続時精算課税制度を利用した贈与財産がある場合は、課税価格に加算します。

②課税遺産総額の算出
課税価格の合計額から、遺産にかかる基礎控除額を引いて課税遺産総額を求めます。遺産にかかる基礎控除額は、算式「3,000万円+600万円×法定相続人の数」から求めることができます。例えば、夫と妻、子ども2人の家族の場合に、夫が死亡したときの法定相続人は、妻と子ども2人の計3人。このケースでの基礎控除額は、3,000万円+600万円×3人=4,800万円と計算されます。

③課税遺産総額を法定相続人・分に応じて案分
②の計算により算出された課税遺産総額を法定相続人が法定相続分で取得したものとして分割します。(※もしも相続放棄した者がいた場合でも、放棄がなかったものとして、ひとまず分割します)

④③に対して、税率を乗じる
法定相続人毎に相続税の税率を乗じて、相続税の税額を求めます。

⑤相続税の総額を算出する
④で算出された相続税を合計して相続税の総額を出します。

⑥各相続人が実際に相続した遺産金額に応じて、⑤を案分
相続税の総額を、実際に財産を取得した者の取得割合に応じて案分し、各人の相続税額を算出します。

⑦納付税額の算出
各人の算出相続税額に加算(2割加算等)および個人の事情に応じた税額控除(配偶者に対する相続税額の軽減等)を行い、納付税額を計算します。

つまり、税額控除を考慮しない場合、相続税が課税されてしまうのは課税価格が遺産にかかる基礎控除額よりも多いときです。例えば、先ほどの夫と妻、子ども2人の家族のケースでいえば、課税価格が4,800万円以下であれば相続税は課税されないことになります。

生命保険にも基礎控除がある?「非課税枠」とは

課税価格が遺産にかかる基礎控除額よりも多いことが想定される場合、生命保険を活用して対策を講じることができます。相続財産には、本来の相続財産(不動産や現金、預金など)の他に「みなし相続財産」(生命保険金や死亡退職金、弔慰金)があることは先述した通りですが、「みなし相続財産」には非課税枠があります。

みなし相続財産のうち生命保険金の場合は、非課税枠を算式「500万円×法定相続人の数」で計算することができます。例えば、夫と妻、子ども2人の家族において、夫が妻に2,000万円の生命保険金をのこした場合、法定相続人の数は3人なので、生命保険金の非課税枠は500万円×3人=1,500万円となります。よって、課税価格には受け取った生命保険金から非課税枠を差し引いた500万円を算入すればよいことになります。

これが、現金や預金で2,000万円をのこしたということになれば、その金額がそのまま課税価格に算入されることになります。つまり同じ2,000万円をのこしても、生命保険金として残す場合には、課税価格を1,500万円も圧縮することができるというわけです。


では先ほどの家族の場合において、夫が妻に1,000万円、子どもに500万円ずつ生命保険金(合計2,000万円)をのこした場合はどうなるでしょう。優先的に、特定の法定相続人から非課税枠の適用をすることはできませんので、各人に適用される非課税枠は以下の様に計算をします。

・妻:1,500万円×(1,000万円÷2,000万円※)=750万円
・子:1,500万円×(500万円÷2,000万円※)=375万円
※2,000万円は、生命保険金の合計額。つまり、生命保険金の合計額のうち、どれだけの割合を受け取っているかによって、非課税枠を案分することになります。

よって、受け取った生命保険金のうち、妻は250万円、子どもはそれぞれ125万円、合計500万円を課税価格に算入することになります。つまり妻だけに生命保険金を2,000万円のこした場合と課税価格に算入する金額は同額になるのです。

しかし、妻は配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けることができるため、相続によって取得した財産が1億6,000万円以下であれば相続税がかかりません。その点も考慮すると、生命保険金でのこす配分を配偶者に多く配分しておく方が、相続税対策の効果が高いということができます。

また、生命保険金の非課税枠を活用できる生命保険契約は、契約者(保険料負担者)と被保険者がともに被相続人(亡くなった方)で、保険金受取人が法定相続人である契約に限られています。

生命保険を相続対策に活用しよう

現金や預金ではなく生命保険で相続財産をのこすことで、課税価格を圧縮ができるので相続対策に活用することができます。しかし、生命保険金の非課税枠を超える生命保険に加入しても相続対策にはつながらないのではないかと、新たな疑問を抱いた方もいらっしゃるかもしれません。

生命保険は、課税価格の圧縮の他にも、争族におけるトラブルへの対策、いわゆる争族対策にも有効です。相続財産に土地や建物のような分割が困難な財産がある場合には、代償分割(遺産の分割において相続人のうちの1人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の相続人の相続分を現金などで支払って分割を行うこと)の代償交付金として活用することもできます。

また、相続財産に評価額の高い土地や建物が多く、相続税の納税が生じる可能性が高いのに、納税資金が不足することが予想される場合には、納税資金の確保を講じておくこともできます。

生命保険で相続税を節税しよう

このように、生命保険を活用することでさまざまな相続対策を講じることができます。ただし、生命保険はいつまでも加入できるとは限りません。年齢を重ねると健康状態によって加入できない可能性も高まります。生命保険で相続対策を講じる場合には、現在の生命保険契約が有効な相続対策ツールとなっているかどうか改めて確認し、早めに契約の見直し等に取り組んでおくことをおすすめします。

プロフィール

キムラミキ
株式会社ラフデッサン代表取締役。外資系生名保険会社での営業経験を経て、FPとして独立。保険代理店のスタッフ指導を行うなど企業アドバイザリー業務に携わる他、保険や住宅ローンなど身近なお金についての執筆、講演も多数行っている。

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