電力自由化で設置必須のスマートメーター!導入のメリット・デメリットは?
電力自由化により、私たちにとって身近なものになりつつあるスマートメーター。2020年代にはすべての家庭へ設置されることが予定されています。今回はそんなスマートメーターについて、導入のメリットやデメリットなどを解説していきます。
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■スマートメーターってどんなもの?
スマートメーターは電力の自由化にともなって導入が進められている電力量計測器で、いわゆる電気メーターの1つです。
スマートメーターの導入以前には2つのタイプの電気メーターを用いていたのですが、これら従来の電気メーターとスマートメーターにはどのような違いがあるのでしょうか?
【従来の電気メーターとの違い】
電気メーターの種類の1つに、アナログ式誘導型電力量計があります。
機械式でメーター内部に円盤が組み込まれていることが特徴です。
電力を使用すると電源からメーター内部にも電力が届き、円盤が回転します。円盤の回転数は電力の使用量と連動しているので、回転数を確認すれば電力の使用量を計測することができます。
また、電子式電力量計と呼ばれるタイプもあります。メーター内部に電子回路を組み込んだ電気メーターで、オール電化を採用しているご家庭で多く利用されています。
アナログ式のようにコイルや円盤、ギアなどはなく内部がすべて半導体で構成されています。より正確に計測できる、計測した電力使用量を複数表示できる、時間帯ごとの電力使用量を記録できる、といったアナログ式にはないメリットがあります。
スマートメーターとは、分かりやすくいえば電子式電力量計に通信機能が付加された電気メーターです。
しかしながら、30分単位で使用電力量を計測できるほか、電力会社とネットワークでつながっているため遠隔操作も可能であり、電子式電力量計に比べて格段に充実した機能が備わっているといえます。
【HEMSとの違い】
HEMS(ヘムス)は、より正確には「ホームエネルギーマネジメントシステム」といいます。HEMSはスマートメーターと仕組みがよく似ているので、ここで2つの違いに触れておきます。
HEMSとはご自宅のありとあらゆる電化製品を、ネットワークにつないで管理するシステムです。
30分単位で電力の使用量を計測・記録してくれる点はスマートメーターと同じですが、スマートメーターが計測するのは家庭全体の消費電力であるのに対し、HEMSはひとつひとつの電化製品の消費電力を計測することができます。
つまり、ご家庭にHEMSを導入すると「ある時間帯にどの電化製品がどれだけの電力を消費していたか」をこまかく知ることができるのです。
また、スマートフォンと連動させることにより、エアコンなどのオンオフを遠隔操作で行うことが可能になります。さらにより機能性の高いものでは、それぞれの電化製品を自動制御し、消費電力を一定に保つことができるものもあります。
スマートメーターはご家庭と電力会社をつなぐもの、HEMSは電化製品全体のまとめ役、と考えれば理解しやすいかもしれません。将来的には、スマートメーターとHEMSを連動させることが期待されています。
たとえば、スマートメーターが電力の使用状況を電力会社に送信し、電力会社はその情報に基づいた最適な電気料金プランを提供します。
そして契約している電気料金プランに沿って、HEMSが電化製品の稼働状態を管理していくといったことが可能になるのです。
■設置や交換にはどれくらいの費用がかかるの?
【導入に費用はかからない】
電気メーターは各家庭に備え付けられていることから、使用者のものだと思っている方も多いかもしれません。
しかし実は、電気メーターは電力会社が所有しているものです。そのため、スマートメーターを含むすべての電気メーターは無料で設置や交換ができます。
ただし、外壁不良などがあったときはスマートメーターの設置や交換の際に、ご自宅の修繕工事などが必要になることがあります。その場合は、工事費用は消費者が負担することになるので注意が必要です。
【導入までの流れ】
スマートメーターの設置や交換は基本的に、家を建てる、引っ越しをする、電力会社を切り替えるなどのタイミングで行われます。
電力会社を切り替える場合は、新たに契約する電力会社に申し込みをした後に地域の電力会社(「一般電気事業者」と呼ばれる、東京電力など各地域の電力会社のこと)が日程を調整のうえ設置や交換を行ってくれます。
家を建てたり引っ越しをしたりする予定がなく、引き続き地域の電力会社から電力の供給を受ける場合は、既存の電気メーターが10年の耐用年数を迎えたタイミングでスマートメーターへ切り替えることになります。
スマートメーターの導入といっても、電気メーターを変更するだけで電線を引き直すといったことはないので工事は短時間で済みますし、原則として立ち合いの必要もありません。
基本的には停電となることもありませんが、場合によっては電源を落として工事をすることもあるため、IT機器などをお持ちの方は事前に確認しておきましょう。
■どんなメリットやデメリットがあるの?
【メリット1】使用電力量の「見える化」で節電
現在使っている電化製品を省エネ性能が高いものに買い替えたり、電化製品の使い方を見直したり、電気の代わりにガスや石油を使う製品に移行したりなど、ご家庭で実践できる節電対策はたくさんあります。
しかし、これまでは電力会社から毎月送られてくる使用電力量の変動を見るくらいしか節電対策の効果を知る術がなかったのです。
スマートメーターを導入すれば、電力の使用量を数値として確認することができ、より効果的な節電対策が行えるようになります。
もちろん、スマートメーターだけではひとつひとつの電化製品の使用電力量まで計測することはできません。
しかし、30分単位という比較的短い時間で記録されるのでこまかくチェックしていけば、「どの電化製品の消費電力が大きいか」といったこともある程度把握することができるでしょう。
【メリット2】ライフスタイルと電気料金プランの適合
30分単位で記録された消費電力のデータを管理・分析していけば、どの時間帯にもっとも多くの電力を消費しているのかが分かります。
そのため、夜間が安いプラン、早朝が安いプラン、土日が安いプランなどライフスタイルに合わせて最適な料金プランに変更し、効果的に電気代の節約につなげることが可能です。
また、それぞれのご家庭でライフスタイルに適した電気の使い方を考えることは、結果としてピークシフト(電力の使用量がピークとなる時間帯を、別の時間帯や曜日に移行すること)にもつながります。
そのため電力の需要と供給のバランスが安定し、停電の発生を最小限に抑えることもできます。
【メリット3】人件費の削減
従来の電気メーターでは、電力使用量を人の目でチェックする必要がありました。
現代で電気をまったく使わないご家庭はほとんど0に等しいので、月に一度検針のために必要になる人件費も莫大なものになります。
一方で、使用した電力量が電力会社に自動で送信されるスマートメーターでは検針の必要はありません。
将来的には、削減された人件費が電気料金の割引に還元される可能性もあるかもしれませんね。
【メリット4】契約変更や手続きの簡略化
各家庭のスマートメーターは電力会社とネットワークでつながっているため、遠隔操作が可能です。
そのため、契約アンペア数の変更や引っ越しによる契約手続きの際にも、わざわざ電力会社の担当者に出向いてもらう必要はありません。
これにより立ち合いなどの手間と時間が短縮され、契約の変更や諸手続きは今よりずっと簡単になります。
【メリット5】メーターの精度や耐久性の向上
従来の電気メーター、特にコイルやギアなどを用いた機械式のアナログ式誘導型電力量計は、経年劣化により計測の精度が低下することが分かっています。
そのため、10年の耐用年数が設けられ、10年ごとにメーターの交換が行われていました。
一方でスマートメーターに使われている半導体シリコンは、熱に強く故障率も低いといわれています。
そのため、従来の電気メーターよりも耐久性が増し、計測の精度も向上すると考えられます。
【デメリット】消費者のプライバシーが侵される危険性
現代では日常生活において電気が果たす役割は大きく、こまかな時間帯での消費電力の状況は、家庭内でのライフスタイルに直結するといっても過言ではありません。
スマートメーターでは、30分ごとの使用電力量がデータとして逐一電力会社に送信されます。
そのため、通信環境や電力会社のデータ管理の方法によっては、個々人が意図しないところで個人情報が外部に漏れたり、プライバシーが侵害されたりする可能性も否定できないのです。
この点については国もスマートメーター導入における課題の1つとして認識しており、対策についての協議が進められています。
■すべての家庭に設置されるって本当?
【スマートメーターの導入は国が進める施策】
スマートメーターは、実は設置したい人が設置すればいいというものではありません。
スマートメーターの導入は、2014年に国が策定した「エネルギー基本計画」の一部として考えられたものです。
2020年代にはすべての家庭に導入されることが予定されており、現在も全国10ヶ所の一般電気事業者によって、各家庭への設置が進められています。
【導入の背景】
国の施策としてスマートメーターの導入を進める背景には、2011年に起こった東日本大震災の影響があります。
地震や津波により福島第一原子力発電所が大きなダメージを受けたことは記憶に新しいかと思いますが、その余波で全国各地のほとんどの原子力発電所は現在運転停止の状態です。これにより電力不足が深刻な問題となっているのです。
電力不足を解消するには、電力量の供給を増やすよりも全体的な需要を減らすほうが効率的です。
そこでスマートメーターを導入し、消費電力量を可視化することで、個々に節電の意識を高めてもらおうという狙いがあります。
また、東日本大震災以降は火力発電への依存が高まっており、電力の供給コストが膨らんでいることも大きな問題となっています。
国内の供給電力のうち、化石燃料である天然ガス、石油、石炭を利用した火力発電の割合は約87%(2013年現在)に及びます。
一方で、国内でまかなえているエネルギー資源はたった6%であり、発電に必要なエネルギー資源のほとんどは国外からの輸入に依存しているのが現状です。
そこで注目されているのが再生可能エネルギーです。代表的なものは風力や太陽光などで、これらは一度資源として利用しても比較的短い時間で再度生み出すことができます。
つまり、半永久的に枯渇することがない点で、エネルギー資源として大きなメリットがあるといえます。
しかし、これらのエネルギー資源には、天候によって電力の供給が左右されてしまうデメリットもあります。
そこで電力の供給量が不安定になった場合でも問題なく電力を届けることができるように、需要と供給のバランスを維持することが重要なポイントになります。
国はスマートメーターの導入に加えて、2030年には各家庭にHEMSを導入することも目標として掲げています。これにより、将来的には各家庭の生活状況に沿った、適切な時間帯別の料金プラン提供することができるようになります。
消費電力のピーク時間帯を分散させることができれば、電力の需要と供給のバランスの維持が可能になるでしょう。
【導入の現状】
現在、スマートメーターの導入は全国10社の一般電気事業者によって本格的に進められています。
2020年代の導入完了が目標として掲げられていますが、より具体的には東京電力で2020年度末、中部電力と関西電力で2022年度末、沖縄電力で2024年度末、それ以外の6つの電力会社で2023年度末の完了を予定しています。
しかしながら、2016年3月時点で東京電力ではすでに約10万件の遅れが出ています。
また、電力会社が負担している年間300億円にも上る設置費用について、今後どのように対応していくか、導入完了後に各家庭の個人情報をどのように管理していくか、といった課題も見えてきています。
■まとめ
いかがでしたか?スマートメーターの導入は、今後の私たちの生活に密接に関わってきます。導入によるメリットだけでなく、導入にいたった背景にさまざまな問題があることを知り、ひとりひとりが「限りある資源を大切にしながら、生活の質を向上していく」ことを意識していきましょう。
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