ブルースタジオ/石井健が提言する今後のトイレのあり方とGROHE”SENSIA ARENA”にできること

ドイツ生まれの水栓ブランド、GROHE(グローエ)から発表された、まったく新しい概念のトイレ、SENSIA ARENA(センシア アリーナ)を様々な視点から紐解いていくこの企画。今回はリノベーションを多く手掛ける建築家のブルースタジオ/石井健氏を迎えて、住環境におけるトイレ空間の変化と、その変化の中でSENSIA ARENAがどんな役割を担えるのか、どのような存在となるのかを語って頂いた。

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GROHE
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プロダクトとしてのセンシア アリーナの位置付けとは

まず第一印象として陶器としての存在感、安定感を感じましたね。衛生的にも陶器の表面硬度もあって、非常に安心感がありますね。それと線の数が少ないのが特徴的ですね。現在のシャワートイレは機能が多いのでどうしてもパーツの集合体になってしまって、やもするとゴテゴテしていってしまう傾向があると想うのですが、そう見せないよう非常に気を使われていますね。スマートデザインが主流になりつつある家電や家具のような方向性を感じます。

近年の大きな流れとしてプロダクトと住環境スタイリングとの距離感がより近くなってきていて、密接に繋がり始めています。床、壁、天井がどういう素材、どういう方向性でデザインされていて、というような入れ物としての生活空間と、そこに置かれるもの、家具や家電を始め、雑貨や小物に至るまでがデザイン的な面でも実用性の面でも繋がってきて、より密接な関係性が生まれてきています。 プロダクツ一つとってもライフスタイルそのものと照らし合わせて考えたりこだわる機会が昔より増えていっているということですね。その大きな流れの中で生まれるべくして生まれたプロダクツがセンシア アリーナなのではないかと考えます。

住空間プロダクトのあり方の変化に呼応してデザインは進化する

今までのこういったプロダクトのデザインは、実はいかに量販店のような場所で目立つか、ということと直結している部分が大きかったんです。実際、今まではなんでこんなにデザインが良くないんだろうと思っても、実際の販売の現場ではそれが目に留まりやすかったり、そういう方向性でプロダクトがデザインされていた側面があったんですね。しかし今では人々がモノを購入する場所、手段が徐々に変化しつつあって、その結果購入を決定する動機も変わってきてます。お店でセールスされるのと、例えばショールームで自らチェックして最終的にネットで購入するのでは、購入するプロセスが違いますし、最終的な決定要因も変化しているということです。つまりプロダクトに対してデザイナー及びメーカーが持ってる距離感とユーザーが感じている距離感が良い意味で近付いている。

要するに今までは実際に購入してもらう為に売る、買う、という要素が不可欠で、つまり”売るための”デザインという考え方の方が強かった。ですが今はそういった”ユーザーにとっては”余計なプロセスが無くなりつつあって、ユーザーが本当に使いたいデザインを選べる時代になってきている。それに呼応してこういったプロダクトデザインもスマート志向に進化していってるというのをアリーナを見てより強く感じましたね。

例えばこんな話があります。業種は全然違うのですが、LCCのジェットスターのウェブサイトはフライト予約以外の機能や情報が全くない。デザインはシンプルながらも購入欲を刺激するものになっていますが、セールスや販促情報は一切排除されています。つまり欲しい人にキチンと訴求させる、必要とされているサービスを一直線に提供することを第一に考えているわけです。

間の余計な要素が排除されていってコンシューマーとサプライヤーの距離感がどんどん近付いている時代なんですね。とはいえそんな状況であったとしても家電などは大量生産しなければいけない。その限界がある中でいかによりよい商品を作っていくかっていう気持ちが非常にデザインに現れています。

トイレ空間の変化に対して先頭を走ることの出来るポテンシャル

こういった変化はプロダクトだけでなく住空間に対する考え方にも現れ始めています。ユーザーさんの要望からも水まわり空間を生活空間にしていこう、という考え方がかなり浸透してきているのを感じますね。住空間には表と裏というのがあって 、例えばマンションなどでは玄関、廊下、脱衣場、トイレなどは従来では裏、つまり隠れた(隠す)場所と認識されてきました。最近ではキッチンなどは表に出てきてますが、総じて水まわり空間は住空間においてのバックヤードのような存在だったんです。人が来たら隠すというようなね。

それが近年少しずつ変化していて、特に都市部の中古住宅などを購入したユーザーに見られるのですが、狭いスペースをどう活用して、住宅のどこにいても住空間として気持ちイイスペースにしたいという発想の方が増えてきています。例えば廊下を無くして広く活用するとか、玄関も広くとって靴を脱ぐだけではなくて多目的な空間にするとか、洗面所を廊下におく方も増えていますし、その中でトイレも快適に出来る住空間の一つとして捉える人が多くなったと感じています。例えばトイレ空間にアクセントカラーを付けたりだとか、自分達の写真を飾ったりだとか、例えばテーマを決めて空間として演出するような、そういう考え方は確実に浸透していってますね。

真横から見れば一目瞭然だが、フタ部分と便座部分が同じ軸で構成されているため、フタのラインにキッチリと便座が収まる。このスマートさがセンシア アリーナのこだわりだ。

日本では昔から脱衣所と風呂場、トイレは別に区切るカタチが定着していますが、今後は欧米のようなトイレのある広い空間が住環境として成立していくような方向性も確実に生まれてきます。例えば、人口密集地ではなかなか難しい実態もありますが、今までの日本のように一つのお風呂、トイレを家族で使う、というような使用方法から脱却して、一人に一つ、というようなカタチが許される環境であれば、トイレを含めたバスルームという存在は充分に住環境の一つとして発展していけるのではないかと考えています。

そういったムーブメントの中でもセンシア アリーナはトイレプロダクトとして先頭を走るような商品であるのは間違いないと感じています。そういった方向性を根源的に内包しているヨーロッパのデザインと日本独自の技術が融合したというのは非常に大きいですよね。

そのポテンシャルとは、両極化したユーザーの”志向”に応える「懐の広さ」

センシア アリーナのポテンシャルとは、最先端且つ洗練されていながら、幅広いユーザーに訴求できる可能性を持っている点です。多機能化というものには終わりが無いもので、特に現在ではマスというものが崩壊していてユーザーの需要が多岐に渡っていて、求める人はもっと機能を増やして欲しい、となる。メーカーとしてはそれに応えて多機能化を推し進めていくのは自明の理ですよね。但しその一方でテクノロジーが進化した弊害として情報過多な部分が顔をのぞかせている側面もあるんです。ゴテゴテとしていていかにも多機能、といったものは敬遠されがちであったりとか、カタチもシンプルなものの方が受け入れられる傾向が変わらずに根強い。

そんな両極化した中でも、スマート志向の強いセンシア アリーナであれば、双方に受け入れられる可能性を秘めていると感じます。機能的には、”何が出来る”という部分では日本のシャワートイレ技術の粋が詰まっていますし、”どうやって”の部分でもBluetoothでの通信コントロール機能の採用など、多機能でありながらスマートというのを具現化しています。デザインはもちろん非常に手が込んでいるのは分かりますが、一見シンプルな筐体はテクノロジーアレルギーの方でも充分受け入れられる懐の深さを持っていると思います。

先頭を走る”設計発想”に寄り添える”トップランナー”

無駄の無い曲線と直線で構成されながらも、シャワートイレとしての最先端性能を盛り込む。必要以上に機能を感じさせないスマートデザインと誰もが納得する多機能を両立させている。

センシア アリーナはリノベーションデザイナーとしても非常にやりがいのあるプロダクトです。極論を言うと、家屋の外などにあってもいいですよね。いまはガーデニングやテラスを作って、というような外と中の空間の境界を曖昧にすることによって周りの環境との一体感を作っていく、そんな方向性を持ったリノベーションも多くなってきたので。もういっそのことバルコニーとかにトイレがあってもいいのかな、と考えたりもしますね(笑)。アクティビィティというか、家の外で楽しむというようなライフスタイルも増えていますので、純粋に便利だからという理由で外にあっても良いのかなとは思いますね。

先ほども話に出ましたが、トイレが一人に一つというような前提が考えられるのであれば、例えば自分の部屋からしか見られない中庭があって、そこにトイレがあるような。そんなトレンドの先頭、道無き道を進むような極端な事をしてもプロダクトとして浮かないデザイン力を持っています。建築家としては腕が鳴るプロダクトですよ。

石井 健
1969年福岡県生まれ。1992年武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。ブルースタジオ執行役員/建築家・不動産コンサルタント。日本のリノベーション・シーンの黎明期より数多くリノベーションデザインを手掛け、その傍らメディアへの露出、執筆活動も行うなど、活動内容は多岐に渡る。
GROHE SPALET
SENSIA ARENA

床排水仕様:¥380,000(税抜価格)
床上排水仕様:¥400,000(税抜価格)

Interview&Edit:藤川経雄
Photo:木下 誠
取材協力:ブルースタジオ

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