
プロの設計士が自分の家を本気で設計したらこうなった。こだわりの”縁側モダン” 〜『10年愛♡の家』Vol.5〜
時を経ていくことでより愛情が深まる、永く愛せる家とは、それはどんな家なのでしょうか? そんな、たっぷりと愛情を注がれた家の魅力を紐解いていく連載企画。今回は日本特有の”四季”をたっぷり愛でることのできる、日本家屋ならではの”縁側”をモチーフに設計されたSさん宅をご紹介しましょう。それはお庭との一体感をより強めてくれる、大きなガラス戸と縁側廊下、ウッドデッキが新しくも懐かしさを感じさせるお家だったのです。
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郷愁を誘う”縁側”をモダンなスタイルで表現
その昔、日本の家の多くには”縁側”がありました。「外=自然」を「内=家の中」で感じさせてくれる、仕切りが曖昧な和風建築独特の考え方が如実に現れた様式といえばよいのでしょうか。家の外を眺めながら温かい陽だまりに包まれて草木を感じ、気がつくと自然とそこに家族が集まっている。一昔前であればそんな団らん風景も珍しくはありませんでしたよね。昭和生まれの方であれば、田舎の祖父母の家に行くと必ずそこで日向ぼっこをしたよ、そんな懐かしくも温かい思い出をお持ちなのではないでしょうか。そう、もしかしたら”縁側”には我々現代人が失いつつある「何か大事なもの」の一端が残されているのかも知れません。
都心からはほど近いものの、周囲には畑や緑が沢山ある、のどかな住宅エリアにそのお宅はありました。Sさん宅の敷地は例えるとまさに扇を広げたような形状で、丁度扇が向く方向が南向きだったこともあり、直角辺に合わせてL字型に家屋を設計。そのL字の内側から扇が向く方向に庭をレイアウトしました。そしてその日当りのいいお庭を堪能するために、現代的に解釈した”縁側”を作り出したお宅だったのです。
大きな大きなガラス戸と窓に沿ったL字の動線=縁側のある、たっぷりとしたリビング
リビングに入ると、そこはまるで屋外かと見紛う程の採光を有した、明るくて温かく、そして木の温もりがたっぷり詰まった開放的で居心地のいい空間が現れます。そしてなんといってもそのリビングのハイライトは「大きな大きなガラス戸&ガラス窓」。一枚で100kgを越えるという重量のガラスを使った2枚戸に加え、その直角に当たる壁面にはこれまた大きな一枚ガラスのはめ込み窓。南向きのL字に当たる二面をガラスで開口させることでこれ以上ない程のたっぷりの採光と庭の景観をリビングから楽しめるようになっています。そしてそのガラス戸とガラス窓に寄り添うように木の廊下を配することで、屋内の南側に開放的で気持ちの良い空間を確保しているのです。
そうです、これが現代風に解釈した”縁側”。ガラス戸の外側に配置をしたウッドデッキと一体となった楓の木は、秋になれば色付いて目を楽しませてくれ、更にその視線の先にはたっぷりの緑が続いています。どうですかこの眺め! 言い過ぎではなく、リビングからの眺めは我が国が誇る庭園文化の一端を垣間見せてくれているといってもいいでしょう。加えてガラス窓の方の吹抜けには階段も設置。これも光や空間の抜けが良い空間演出において重要な役割を握っているわけですが、実はこの設計には在来の木造建築ではなかなか実現が難しい秘密があったのでした。
理想の設計プランを実現する木造建築を探し求めて
Sさん宅は竣工は2008年。こちらのお宅にはもう7年半住まわれているそうです。施主であるSさんのお仕事は実は建築設計士。この土地は元々奥様のご両親が住んでいた土地でした。ここに二世帯住宅を建てる、というお話になった時に、前述した扇形の地形を上手に活かそうと、自宅の設計を自ら発案します。その道のプロフェッショナルのSさんとはいえ、さすがに自分にとっても、そして家族にとっても理想の家を設計するのは簡単ではなく、幾度ものトライ&エラーを繰り返したそうです。ようやく基本設計が固まった時に生まれたアイデアがこのL型家屋。そして南側を可能な限りガラスと空間で満たす、というものでした。
しかし問題は開口部の広い庭側に加え、吹抜けも作るとなると構造上、L字の内側に極端に空間が集中してしまうこと。特にL字の交点に面した部分を吹抜けにするということはL字の一辺が床で繋がらなくなるということを意味し、在来工法では不安が残ります。しかも木造にもコダワリを持っていたSさんは、この設計が可能な木造工法をリサーチします。そして見つけたのが「耐震構法 SE構法」だったのです。
構造計算が可能な木材を使う「耐震構法 SE構法」だからこそ、仕切りのない大きな空間が実現できる
「耐震構法 SE構法」は、強度計算が可能な集成材という木材を使用することで構造計算を可能にし、従来の木造建築では不可能と思われた大きな空間確保や、自由自在な間取りが実現できるもの。耐震が必須の我が国だからこそ生み出せた、未来の木造建築を担うといっても過言ではない構法なのですが、構造計算が可能だからこそ実現できる、その「自由度の高い設計」にSさんは注目したのです。
「この構法だ」と決まればそこからは行動です。SE構法の”重量木骨の家”はSE構法登録工務店の中でも、重量木骨プレミアムパートナーと呼ばれる全国から選び抜かれた64社の技術的にも熟練した工務店のみが建てる事を許されています。Sさんはそのプレミアムパートナーの中から、自宅エリアにある工務店をピックアップ。結果、「リモルデザイン」に施工をお任せすることに決めたのです。余談ですが、「リモルデザイン」に決定した決め手は「社長とウマがあったから」だそうで、施工事例を見学することもなく決めてしまったそうです。仕事柄、様々な工務店を見てきたSさんは良い工務店を見抜く”何か”を持っていたようですね。
2Fも同様に南向きL型空間を配置。お部屋のようなあったか廊下
さて、吹抜けには大きなガラス窓とともに2Fへと続く、鉄骨と木の踏み板で構成された大変モダンな階段が設置してあります。そこを上がるとご家族それぞれのお部屋が配置されています。通常は南向きに個々のお部屋を配置し、動線=廊下は反対側に配置するプランとなりがちですが、1Fの間取り同様に、つまり1Fの縁側廊下と同じ南向きに廊下を配しています。
但しここも一工夫あり、廊下側には南から注ぐたっぷりの陽の光を取り込むためにまたまた大きな大きなガラスのはめ込み窓を設置。加えて棚の設置やお部屋と地続きになるようにとカーペットを敷いたことで廊下とは名ばかりの、まるでお部屋のように使える暖かな印象のスペースとなっています。
Sさん夫妻にはまだ学校に通う娘さんがお二人いらっしゃるのですが、もっと小さい頃はこの陽だまりスペースに居る事が多かったそうです。なんて優しいアイデアなんでしょう。大きな窓から太陽の光をたっぷり浴びて、沢山の緑を臨みながら遊んだり、勉強したり…。実際にお子さん達のお友達がたくさん遊びに来ていたとのことで、お子さん達にとっては間違いなくお気に入りの場所だったのでしょうね。
玄関、キッチン、そして奥の和室…スペースは贅沢に、しかし効率的に
このお宅のもう一つの特徴は”メリハリ”が効いているということです。例えばリビングキッチン、吹抜けから玄関へと続く動線上は仕切りを最小限にすることで「一つの大きな空間」といった印象を与えているのに対し、前述した2Fの個々のお部屋や、縁側廊下奥にある和室などはしっかり区切ってスペースを確保。家族が行き交う「パブリックなスペース」は贅沢に。そして個々のお部屋のような「プライベートな空間」は効率的に、と用途に合わせてメリハリを付けて設計されているのが分かります。
たとえば玄関。ご家族はもちろん、この家を訪れる人々は皆が通るパブリックな場所です。しかも玄関の動線上には、2Fにある二世帯同居している奥様ご両親の1DKのお部屋へ繋がる吹抜けとは別の階段やバスルーム、トイレなどが配置されている関係で、たっぷりとした広い空間となっています。
しかも玄関の先にある引き戸を開放すれば、吹抜け階段と地続きになり、更にその先のリビングダイニングまで空間が繋がる工夫もされています。そしてその先にあるダイニングは、キッチンの後方に三畳ほどの納戸を備え、しっかり収納容量も確保するという効率の良さも見事です。
テラスと廊下の奥にある和室は家屋の南東側の端に当たるため、少し離れのような落ち着いた雰囲気を目指して設計されたそうです。中央には収納可能な掘りごたつも造作で設置し、大変和める空間となっています。また、このお部屋も収納式の引き戸でリビングと区切ることも出来ますが、開放状態にしておけばいわば”縁側効果”によって、リビングの延長となる大変考えられた設計なのです。さすがプロの設計士さんですね。
土地の形状と日当りの向きから生まれた”自然を、四季を、存分に楽しめる”お家
我が日本には四季というものがあります。四季の移り変わりがこれほどハッキリしていて、且つそこに住む人々がそれを意識し、風土にまで根差している国は日本だけとも言われています。そんな日本ならではの四季が存分感じられる”縁側モダン”なお家、いかがでした?
大きく開口されたガラス戸、そして窓からのぞく、四季折々の景観。春は咲き乱れる花々を愛で、夏はたっぷりの緑と日差しを全身で浴び、秋には色とりどりに色づく紅葉を楽しみ、冬には真っ白の銀世界を温かいリビングから眺める。それらを存分に楽しめるのは、外と内、自然と生活空間の境目をあえて曖昧にすることで自然との共存関係を築いてきた縁側を巧みに設計に取り入れたお家だからこそ。
もちろんそれを実現できたのは未来を担う耐震木造建築「耐震構法 SE構法」を採用した重量木骨の家、そしてSE構法を使いこなし、Sさんが想いを巡らせた設計プランを具現化してみせた担当工務店「リモルデザイン」の技術力と誠実さあったからに他なりません。毎年巡ってくる四季を楽しみに年を重ねる、そんな楽しみが詰まったお家だからこそ、永く愛せるのではないでしょうか。
Text:藤川経雄
Photo:塩谷佳史
設計・施工
リモルデザイン
神奈川県横浜市旭区笹野台1-1-27 3F
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