万年青(おもと)の上手な育て方

万年青は冬でも枯れることなく青々とした葉が楽しめる、まさに万年(いつまでも)青(緑色)の観葉植物です。昔から縁起の良い植物として重宝されてきました。厄除け効果があるともいわれています。万年青の楽しみ方、育て方をご紹介します。

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徳川家康も愛した縁起の良い万年青

日本では昔から縁起の良い植物として親しまれてきた万年青(おもと)。いつも緑色で豊かな様子は、一家繁栄をイメージさせるのでしょう。万年青は日本原産の観葉植物です。沖縄や鹿児島など九州や、高知や愛媛といった四国の海岸部の産地に生息しています。

もともとはそういった野生種を採取して育てていましたが、古くから鑑賞用にと交配を続け、新しい品種の開発に取り組んできました。その歴史は長く、実に400年以上にもなるといわれています。

1. 華道の花材として栽培されるように
野生の植物として野に生育していたのを、華道の花材として万年青を使用するようになりました。ここから鑑賞用の万年青の栽培の歴史が始まります。室町時代には華道が成立したので、今から400年近く昔のことです。

江戸時代には園芸ブームから、この鑑賞用の万年青が大人気になります。めずらしい品種が途方もない高値で取り引きされることもあったようです。

2. 1鉢1億円!?江戸の万年青事情
万年青は、珍しい南日本原産の植物です。現在のように流通システムの整っていない時代、遠く離れた温暖な地域の植物を京の都や江戸で育てることは大変なことでした。珍しいので金銭的な面からも負担がかかったでしょう。

江戸時代、万年青は、旗本や御家人、武士の間で大流行を迎えました。豊かさの象徴として、珍しいものでは今の金額に換算すると、なんと、1鉢1億円という値のつくこともあったようです。美しい焼き物の鉢に植えられて、リッチな人たちの間で愛好されていました。

3. 徳川家康にまつわる万年青の縁起かつぎ
徳川家康が江戸城に入ったのは1590年のことです。江戸城はその後も増築を重ね、本丸が完成したのは1606年でした。このとき、本丸落成の記念に三河の長嶋長兵衛という家臣が徳川家康に献上されたのが、自ら栽培していた3鉢の万年青といわれています。

その後、長く徳川の世が栄えたことから、引っ越しに万年青は縁起が良いという話が生まれました。ちなみに、そのとき献上された3つの万年青の品種は、「永島」「吾妻鏡(あずまかがみ)」「タバコ葉」ともいわれ、現在でも入手することができます。

引っ越し祝いから開運まで!万年青の魅力

徳川家康の縁起話にならい、引っ越しや新居のお祝いとして万年青を贈る習慣ができました。不老長寿や裕福さの象徴である万年青は、プレゼントにぴったり。なんとなく古臭いイメージのつきまとう万年青ですが、実は開運にもつながるご利益観葉植物なのです。


1. 豊富な種類も万年青の魅力
400年以上も交配が繰り返されてきた鑑賞用植物です。万年青は種類の豊富さにも定評があり、大きく3つの系統に分けられています。

葉の長さが30~40センチにまで成長する「大葉系」は、ダイナミックな姿が運勢の上昇を感じさせます。「薄葉系」は、20センチ前後の中型サイズ。葉の先端がうねったようにカールする葉芸を愛でるタイプで、ユニークな形状が愛好者の興味の的。「羅紗系(らしゃけい)」は小ぶりな5センチ前後で、整然と整った葉の連なりを楽しみます。

万年青の上手な育て方

せっかくの開運シンボル、万年青を枯らせてしまっては大変です。でも、うれしいことにこの万年青、とくに育てるのに難しいこともなく、路地裏に放っておいてもたくましく成長してくれるほど強いのも魅力のひとつ。ただし、基本的な育て方はあるのでポイントを押さえておきましょう。

1. 控えめな水やりがポイント
万年青は、海からの風が山に吹きあげるような、比較的過酷な環境に生息する植物です。そのため、風通しの良い乾燥した環境が、万年青の生育に必要といえます。水やりは控えめに、鉢の中が乾いたらあげるイメージで良いでしょう。

水やりをするときは、鉢の中に注ぐのではなく、潅水(かんすい)という方法がオススメです。バケツやタライに水をたっぷり張り、そこに植木鉢を静めて水を吸わせます。鉢の中にしっかり水が行き渡るので、2日に1度程度、冬の休眠期なら5日に1度でも良いほどです。

2. 半日陰や室内の明るい場所
万年青は、路地裏が似合います。下町の入り組んだ路地に建つ家の軒先に、ずらっと並べられているイメージを持つ人もいるでしょう。実際、生育時の環境として、路地裏の半日陰はピッタリです。午前中は日光が当たり、午後からは日影に入るような場所に置きましょう。

ただし、南国生まれなので、冬場に霜が降りて凍るような寒い場所はNGです。そんなときは室内で育てます。部屋の中で育てるなら、カーテン越しの日光が当たるような窓辺がオススメ。床の間など部屋の奥まったところに置くなら、たまに日光に当ててあげましょう。

3. 乾燥を防ぐ昔ながらの知恵

水のやりすぎは禁物ですが、万年青は乾燥も嫌います。上手な水やりのタイミングを覚えると共に、湿度の管理も重要です。写真のように土の上を水苔(みずごけ)で覆って、乾燥を防ぐと良いでしょう。水苔は層になり、間に空気を含みます。そのため、冬場には保温効果も期待できる昔ながらの優れものです。

4. 増やすときは「割子」か「芋吹」で
万年青は、「割子」と「芋吹」の2つの方法で増やすことができます。品種によって向き不向きがありますが、大まかにいって薄葉系と大葉系は「割子」、羅紗系は「芋吹」が良いでしょう。

「割子」は、万年青の根元にできた子株を、親株から切り離して独立させ増やす方法です。「芋吹」は、親株の根元にできる小さな地下茎を切り離し、それを水苔にくるんで保湿しながら新しい芽を吹かせる方法です。いずれも経験が必要なので、お店の人や愛好家に相談しながら行ったほうが良いでしょう。

5. 1年に1度の植え替えで根詰まりを解消
ほとんど手入れの不要な万年青ですが、1年に1度を目安に鉢の植え替えをすることで根詰まりを解消させるのがオススメです。植え替えの時期は、春か秋。それぞれお彼岸のころが最適とされています。

ただし、一般的には秋の彼岸の植え替えが良いようです。万年青は夏に成長するので、秋に植え替えをしたほうが、根がすっきりと収まります。あらかじめ水やりを控え、鉢の中を乾燥させ、土が取れやすいようにしておくのがコツです。

6. 植え替えのポイント
植え替えは、単に大きい鉢へと植え換えればいいわけではありません。根の周りについた土はすべてきれいに取り除きます。こうすることで、根詰まりを防いだり病気を未然に防いだりすることができるからです。

根は水できれいに洗い、傷んだ根を切り取るほか、大きな根についた汚れは筆で丁寧になでて落とします。あとは、きれいな土を入れたひと回り大きな鉢に植えるだけ。根が鉢の中できれいに広がるよう、注意しながら行います。

万年青の花言葉

万年青は、上手に育てると葉の中心からパイナップルのような花芽がニョキッと出てきて花を咲かせます。花の時期は、4~6月。わりと地味な花ですが、一応、花言葉があります。

「長寿」「長命」「相続」は、一家繁栄につながるイメージですね。力強く葉が育つ様子や、冬でも枯れない生命力、長いものでは50年も生き続けることも反映されているようです。ほかには「崇高な精神」といった精神世界につながるものも。いずれにせよ縁起の良いものばかりで、これも万年青が400年もの長きにわたって日本人に愛されている理由でしょう。

1. 「母性愛」も花言葉のひとつ
「おもと」は現在では一般的に「万年青」と漢字で書かれますが、江戸時代には「老母草」という字が当てられ「おもとぐさ」と呼ばれたこともあったようです。赤い実を周囲の草が抱きかかえるようにしている姿を、母が我が子を守る姿に重ねたのでしょう。

万年青の花言葉のひとつに「母性愛」がありますが、もしかしたらこのような姿や漢字から来たのかもしれませんね。

2. 万年青には毒がある!

万年青は花が咲いたあと、鮮やかな濃い朱色の実をつけます。美しい色やつややかな様子から思わず手に取ってみたくなりますが、実はこれには少々注意が必要です。万年青の実や葉、根茎には、強力な毒が含まれているからです。

主にサポニンや配糖体ローデキシンという物質ですが、これは現在でも薬の成分として利用されています。強心剤、利尿剤などです。だからといって自分で煎(せん)じて服用するなどもってのほか。強い中毒作用を引き起こし、嘔吐(おうと)、頭痛、不整脈、血圧降下から呼吸循環器系の障害も出て、最終的には死に至る可能性大です。

引っ越し荷物の最初は万年青!

引っ越しをするとき、新居に家財道具を運び込みますね。その最初の荷物を万年青にすると、縁起が良いといわれています。友人知人へ引っ越し祝いとして贈るのはもちろん、新居での自分の開運のために万年青を購入するのもオススメです。

万年青の縁起をかつぐためには、タンスやテーブルといった家財道具に先んじて、何よりも早く新居に置いておく必要があります。引っ越し業者が到着するよりも早く、万年青だけ先に新居へ持ち込んでおきましょう。新居をきれいに掃除して、万年青を縁起の良い北東の方角や玄関にあらかじめ置いておけば開運効果もバッチリですね。

育てやすさも魅力!日本原産の万年青

万年青は日本原産の観葉植物です。それだけに日本で育てやすいのも大きな魅力です。水やりに多少のコツが要りますが、あとは放任主義で大丈夫。1年に1度の植え替えを目安に手入れをするぐらいでOKです。

400年以上も続く鑑賞用の植物だけに種類も豊富。葉の色や班の入り方などさまざまな品種が生み出されています。縁起が良く開運につながるだけでなく、ずっと青いままの葉も年間を通して楽しむ観葉植物としてもぴったり。古臭いなんて敬遠せずに、万年青を自宅で育ててみましょう! その奥深い魅力にハマってしまうかもしれません。

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