
生命保険の保険金を受け取るときの贈与税はどのくらい控除される?
生命保険の死亡保障などの保険金を受け取るときに気になるのが、税金がかかるのかどうかということですよね。保険金の受け取りには受け取り方によってさまざまな税金がかかってきますが、中でも気をつけたいのが「贈与税」です。贈与税は一般的に税率が高いといわれていますが、実際のところどうなのでしょうか。今回は、生命保険の保険金に贈与税がかかるケースと控除額、そして他の税金との比較をしていきたいと思います。
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生命保険で保険金を受け取ったときにかかる贈与税って?
贈与税とは、生きている人から財産を受け取ったときにかかる税金です。会社などから受け取ったときには所得税なので、個人から受け取った場合のみが対象となります。
生命保険の保険金の場合、「被保険者」「契約者」「保険金受取人」の名義によっては贈与税の対象となります。それぞれの定義は以下の通りです。
・被保険者:保険の対象となる人
・契約者:保険料を支払う人
・保険金受取人:保険金を受け取る人
保険金の受け取りは贈与税の対象?
保険料を負担していない人が保険金を受け取ると、「保険料を負担した人から生命保険金の贈与があった」として贈与税が発生します。贈与税の対象となるのは例えばこのような場合です。
●生命保険の死亡保障金
・被保険者:夫
・契約者:妻
・保険金受取人:子
死亡保障金では、契約者と保険金受取人が異なると贈与税の対象となります。このケースですと「生きている妻の財産を子が受け取った」ということで贈与税の対象となるというわけですね。
●生命保険の満期保険金
・被保険者:妻
・契約者:夫
・保険金受取人:妻や子
満期保険金では、受取人が契約者以外だと贈与税の対象となります。このケースでは「夫の財産を妻や子が受け取った」ということで贈与税の対象になるわけです。
つまり保険金受取人が受け取った保険金が他者からの贈与によって取得したとみなされると贈与税の対象となるわけです。その他者が死亡している場合は相続税となります。
主に贈与税の対象となるのは死亡保障金と満期保険金ですが、年金も毎年の受け取りは所得税の課税対象ですが年金開始時は贈与税の対象となり、この場合ももちろん受取人が契約者以外の場合です。
特例贈与と一般贈与
贈与には「特例贈与」と「一般贈与」の2種類があります。贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上の子や孫などの直系卑属への贈与なら「特例贈与」、それ以外は「一般贈与」です。
特例贈与にあてはまるのは例えば、祖父から20歳以上の孫、父から20歳以上の子などへの贈与です。それ以外、例えば兄弟間、夫婦間、未成年の子への贈与や、夫の父からの贈与などは一般贈与。もちろん他人からの贈与も一般贈与となります。
表は2018年7月現在の贈与税の税率です。表をみて分かるように、一般贈与より特例贈与の方が税率と控除額において優遇されています。もし贈与するなら妻や未成年よりも20歳以上の子や孫にした方が有利だということですね。
保険金に贈与税がかかるときの控除について
先ほど説明した通り、生命保険に関係する贈与税は、契約者と保険金受取人が異なる場合の死亡保障金や満期保険金などに対して発生します。しかし、これにあてはまる場合でもすべての保険金に贈与税が発生するわけではありません。
贈与税には「基礎控除」が設けられており、110万円までは非課税となります。詳しく説明すると、贈与税は1月1日〜12月31日までの1年間に受け取った額から基礎控除として110万円を差し引いた残りの額に対して課税されるということです。もし受け取った保険金が110万円以下なら贈与税の申告も必要ありません。例をあげてみましょう。
●生命保険の死亡保障金:100万円が給付
・被保険者:夫
・契約者:妻
・保険金受取人:子(20歳以上)
夫が亡くなり、子に100万円の保険金が給付されたとします。すると基礎控除額の110万円以内なので贈与税の対象とはならず、申告の必要はありません。
●生命保険の死亡保障金:500万円給付
・被保険者:夫
・契約者:妻
・保険金受取人:子(20歳以上)
夫が亡くなり、子に500万円の保険金が給付されたとします。この場合、贈与を受けるのが20歳を超える直系の子なので「特例贈与」です。
課税価格=500万円ー110万円(基礎控除)=390万円
課税価格が「400万円以下」なので税率は15%、控除額は10万円です。
贈与税=390万円(課税価格)×15%(税率)ー10万円(控除額)=48.5万円
●生命保険の死亡保障金:500万円給付
・被保険者:夫
・契約者:妻
・保険金受取人:子(20歳未満)
夫が亡くなり、子に500万円の保険金が給付されたとします。この場合、贈与を受けるのが20歳未満なので「一般贈与」です。
課税価格=500万円ー110万円(基礎控除)=390万円
課税価格が「400万円以下」なので税率は20%、控除額は25万円です。
贈与税=390万円(課税価格)×20%(税率)ー25万円(控除額)=53万円
基礎控除額は一般贈与と特例贈与のどちらとも110万円と同じ額ですが、税率や控除額が違うために贈与税の額が異なります。
贈与税と他の税の控除のどちらが効果的?
生命保険の保険金に対してかかる税金として「相続税」というものもあります。相続税は亡くなった人から財産を受け取ったときにかかる税金のことです。生命保険の死亡保障金の場合ですと、契約者と被保険者が同一で、保険金受取人のみ異なる場合が相続税の対象となります。例えば、
・被保険者:夫
・契約者:夫
・保険金受取人:妻
ですと、夫が保険料を支払って築いた財産を、亡くなった夫から妻に渡すことになるので相続税の対象ですね。
他の税の控除も併せて確認してみましょう。
1. 基礎控除
保険金だけでなく相続した財産に対しては「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除が設定されています。
2. 生命保険非課税枠
死亡保険金には遺された人の生活を保障する役割がありますので、「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。
3. 配偶者の非課税枠
配偶者の場合は1億6,000万円の非課税枠があります。
4. 債務控除
被相続人の借金や葬儀費用も控除できます。
例えば、夫+妻+子2人という家族で夫が亡くなって配偶者である妻が相続するときのことを考えてみましょう。この場合の法定相続人は3人なので、
基礎控除額=3,000万円+600万円×3=4,800万円
生命保険非課税枠=500万円×3=1,500万円
配偶者非課税枠=1億6,000万円
非課税枠の総額=4,800万円+1,500万円+1億6,000万円=2億2,300万円
となります。死亡保障金を合わせたすべての相続金から葬儀費用や借金などを引いた額が2億2300万円を超えなければ非課税です。
法定相続人の数が多ければ多いほど非課税枠も増えますし、よほど大きな相続でない限りは贈与税よりも課税額は少なくなるケースが多いかと思います。
生命保険の保険金も、非課税枠までは税金が控除されることを知っておこう
贈与税でも相続税でも、決められた非課税枠までは税金が控除されます。生命保険の契約を考えるときには必ず「被保険者」「契約者」「保険金受取人」を誰にするのか、額はどのくらいにするのか、他の資産と合わせてよく考えて決めましょう。
■プロフィール
学生時代にアジア滞在中、現地で感染症を患い生死をさまよう。奇跡的に生還するも保険の大切さを痛感し、卒業後は保険の代理店窓口等で働く。趣味は懲りずにアジアの発展途上国を訪れて刺激をもらうこと。犬好きのアラフォー女子。
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