【専門家監修】火災保険の保険料は、確定申告で保険料控除の対象になる?

確定申告をするとき、保険料控除の欄に記入したことがある人も多いでしょう。生命保険料や地震保険料など保険料控除の対象となるものもありますが、火災保険の保険料はどのような扱いになるのでしょうか? そもそも、所得控除とはどのような理由で設けられた制度なのでしょうか?今回は、所得税と保険料の関係について、大切な知識をご紹介します。なお、所得税の納税手続きや税額など個別具体的なご相談については、税理士や弁護士などの資格を持つ方にご相談ください。

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火災保険料の確定申告時の取り扱いは?

所得控除とは?

所得税をはじめとする税は「担税力に即して課税されるべき」という考え方があります。担税力とは「個人や企業などが実際に税を負担することができる能力」のことを言います。

簡単に例を挙げると、同じ年収を得ていても、1人暮らしでお金を自由に使うことができる人と、扶養家族が何人もいて家族の生活費まで負担している人は、税金を支払うことができる能力も異なるだろう、と考えられます。

担税力の違いを、税額の計算に反映させるための仕組みの1つとして所得控除が設けられています。国の施策を反映して、所得控除の内容が変更される場合もあり、扶養控除や配偶者控除の変更はその最たる例です。地震保険料が控除の対象となっているのは、国としても地震保険への加入者を増やしたいという思惑があるのかもしれません。

火災保険料は所得控除の対象になるか?

現在、火災保険料は原則として所得控除の対象になりません。しかし、例外もあります。

平成18年まで、損害保険料控除が設けられていて、火災保険料も損害保険料控除の対象になっていました。しかし、平成19年からは火災保険料が所得控除の対象外となった代わりに、地震保険料控除が設けられました。基本的に地震保険は単独で加入するのではなく、火災保険の特約として加入することになるため、地震保険料に該当する部分の保険料のみ、地震保険料控除の対象となります。

続いて、例外的に火災保険料が控除の対象となるケースについてご説明します。

火災保険が旧長期損害保険に該当する場合は控除の対象となる

加入している火災保険が「旧長期損害保険」に該当する場合は、その損害保険料は地震保険料控除の対象となります。

国税庁「タックスアンサー No.1145地震保険料控除」によると、下記の要件を満たす場合に、控除の対象とすることができます。

(1) 平成18年12月31日までに締結した契約(保険期間又は共済期間の始期が平成19年1月1日以後のものは除く)
(2) 満期返戻金等のあるもので保険期間又は共済期問が10年以上の契約
(3) 平成19年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないもの

地震保険料控除の金額は?

1. 地震保険料
●年間の支払保険料の合計が5万円以下……支払金額
●年間の支払保険料の合計が5万円超……5万円

2. 旧長期損害保険料
●年間の支払保険料の合計が1万円以下……支払金額
●年間の支払保険料の合計が1万円超2万円以下……支払金額÷2+5千円
●年間の支払保険料の合計が2万円超……1万5千円

3. 1と2の両方がある場合……それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高5万円)
ただし、1つの保険契約で地震保険料と旧長期損害保険料の両方を支払っている場合、地震保険料または旧長期損害保険料のどちらか一方の控除を、納税者側が選んで受けることになります。

火災保険の多重契約を気を付ける。火災保険と確定申告

ここまでご紹介したように、火災保険への加入が大幅な節税効果につながることは、残念ながら少ないです。火災保険に少しでもお得に加入するためには、節税効果に着目するよりも、契約内容をしっかりと確認し、必要以上の補償額や補償内容を確保しようとしないことのほうが、重要です。

本当に必要な補償額はいくらか?

火災や風水害などの不測の事態が起こり、自宅建物や家財が損害を受けた場合に、損害額に応じて補償が受けられるのが火災保険です。

建物や家財が失われてしまった場合、建物を再建したり、家財を再調達したりするには、どのくらいのお金がかかるかを、よく検討しましょう。また、預貯金が十分ある人は、失われた建物や家財の全額を、火災保険の補償にたよる必要がないかもしれません。

保険金額を設定する時点で「再建や再調達にどのくらいのお金がかかるか?」「預貯金などでどのくらい損失をカバーできるか?」を正しく見積もり、火災保険で必要以上の金額を設定しないようにすることが大切です。

多重契約になっていないか見直す

以前に賃貸物件に入居した経験がある、知人との付き合いがあって火災保険契約を結んだことがある、という人は火災保険の多重契約になっていないかを見直してください。

火災保険は、「損害を受けた金額分だけ補償を受けることができる」という商品であり、多重に契約を結び、多額の保険料を支払っていても、損害額を上回る補償が受けられるわけではありませんので、注意しましょう。

必要以上の特約は解約する

損害保険にはさまざまな特約がありますが、利用する機会のない特約をつけ、特約保険料を支払い続けるのは、無駄なことです。本当に必要な特約のみを選び、必要のない特約は解約しましょう。ただし、

1. 複数の保険契約を結んで補償を受けられる範囲を広げる
2. 1本の主契約に特約をつけて補償を受けられる範囲を広げる

の2つを比べた場合、2のほうが保険料の総額を抑えられることが多いです。また、不測の事態が起こったとき、損害保険会社に連絡する時間や労力が少なくてすむのも2です。特約のすべてが不必要なものというわけではなく、必要な補償を把握し、必要な特約だけを選ぶことが大切なのです。

火災保険と確定申告の関係をよく理解して、お得に利用しよう

火災保険料は、原則として所得控除の対象とならず、火災保険に加入したからといって、節税効果が高いとは言えません。でも、火災保険に加入する本来の目的は「不測の事態によって失われた建物や家財などの補償を受け、生活を再建できるようにする」ことで、本来の加入目的を忘れないことのほうが節税効果以上に大切です。

少しでもお得に火災保険を利用するためには、「必要な補償を把握すること。不測の事態が起こったときに必要以上の補償を受けようとしないこと。預貯金など他の資産とのバランスも考えて補償金額を設定すること」を心がけましょう。

このアイデアの監修者

河野陽炎
3級FP技能士資格を持つライター、コラムニストとして、生命保険や医療保険、金融、経済などの執筆実績が多い。次々と発売される商品や、改正の相次ぐ税制、法律が1人の生活者にどう影響を与えるかの視点を大切にする。

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