
【専門家監修】火災保険と火災共済との違いは?選ぶときに覚えておきたいメリット
火災共済は、火災保険とよく似た制度です。火災保険よりも支払わなければならない金額が安い傾向にあり、一見するとお得にも感じられる火災共済ですが、実は、その中身を見るとさまざまな点で違いがあるのです。これを知らずに、安いからという理由で火災共済を選んでしまうと、かえって損をしてしまうこともあります。そこで今回は、火災共済と火災保険の違いから、選び方のポイントまでをわかりやすく整理してみます。ぜひ、火災保険、火災共済を検討するときの参考にしてください。
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火災共済とは。火災保険との違いは?
火災共済は、火災保険と同じように、一定の金銭を支払うことで、火災が起きたときに補償を受けられるサービスです。火災保険と名前が違うだけのように思えますが、この2つにはさまざまな点で違いがあります。
運営団体と目的
火災保険は、保険会社が営利目的で運営しています。一方、火災共済は農林水産省や厚生労働省、生活協同組合などが、非営利で運営しています。
火災保険は誰でも加入できますが、火災共済は共済の組合員やその家族しか加入することができません。住んでいる地域や職域、生協に加入しているかどうかなどで、入れる共済は違ってきます。
契約内容の自由度
火災保険の契約は、契約者と保険会社が1対1で取り交わします。ですから、火災保険に特約として他の補償をつけたり、反対に、いらない特約を外したりといったことが比較的自由にできます。補償の内容を自分に合わせてカスタマイズしやすいということです。
それに対して火災共済は、ひとつの制度を、加入者みんなで支え合うというような形式をとっています。「私の家に何かあったら助けてください」というのが火災保険で、「誰かに何かあったらみんなで助け合おう」というのが火災共済というイメージです。そのため、契約の内容をカスタマイズすることはできません。
対応している災害
火災保険は、「住宅総合保険」ともいわれるように、住宅に損害を与えるいろいろな災害をカバーしています。火災以外には、台風や洪水などの水災、雹や雪による災害、盗難や水濡れ、衝突などによる日常災害などが挙げられます。先ほども説明したように、これらの特約は外すこともできます。
ところが火災共済は、その名のとおり火災のみが対象です。水災などについても心配だという場合には、別途、自然「災害共済(※)」に入らなくてはなりません。
この自然災害共済には水災などのほか、地震共済も含まれています。それに対して保険の場合は、地震保険のみ単体になっていることがほとんどです。火災と自然災害がセットで、地震がバラ売りなのが保険、火災がバラ売りで、自然災害と地震がセットなのが共済と考えるとよいでしょう。
※共済によって名前が異なる場合があります。また、JA共済の場合は、火災共済に加入すると自然災害共済も自動的に付帯されます。
契約金額の決め方
契約金額にも違いがあります。火災保険は、耐火性の有無、建築費や平米数などから算出されますが、ある程度幅が設けられています。建物のデザインや材料などにお金がかかっていればその分高く設定できますし、反対に、保険料を安くしたいと思えば安く設定することもできます。
対して火災共済では、木造か非木造か、平米数はいくらかという条件から算出されます。また、共済は細かな金額の調整はできません。共済の金額は、一口いくらと決められていて、加入するときには口数を選ぶことになるからです。掛金を抑えたいと思ったら、加入口数を減らすしかありません。
支払われる金額
実際に災害に見舞われたとき、火災保険は、保険料を上限に、全額が補償されます。しかし、共済では支払った分も受け取れないことがあります。
先ほど解説したように、共済は「みんなで支え合う」システムです。災害があったときには、誰が支払った分なのかは関係なく、必要としている人に支払われることになっています。そのため、その年に災害が多かった、あるいは大規模な災害が起きたといったことがあると、共済金を使い切ってしまい、それ以上は支払われなくなってしまうのです。
反対に、災害が少なかった年などには共済金が余ることがあります。そのときには、割戻金といって、加入口数に応じた金額が戻ってきます。
言葉の違い
火災保険と火災共済では、使われる言葉にも違いがあります。保険会社に支払うお金のことは「保険料」といいますが、火災共済で共済組織に支払うお金は「(共済)掛金」といいます。また、災害にあったときに受け取るお金は、火災保険は「保険金」、火災保証は「共済金」です。
その他、火災保険では「補償」といいますが、火災共済では「保障」という言葉を使います
火災共済に加入するメリットは?
比べてみると意外と違いの多い火災保険と火災共済。では、火災共済を選ぶメリットはあるのでしょうか。
火災共済でなければならない理由はない
結論からいうと、火災共済を選んだほうがいいといえるほどのメリットはありません。
その理由は、契約内容の自由度が低いこと、火災共済だけではカバーできない範囲が広いこと、全額保障されるとは限らないことなどがあります。わざわざ制約が多く、保障に不安の残るサービスを選ぶ必要はないでしょう。
唯一のメリットは掛金が比較的安いこと
唯一、火災共済のメリットといえるのが、掛金の安さです。多くの火災共済は火災保険と比較すると掛金が安く、できるだけ出費を抑えたいというときには助けになるかもしれません。
しかし、掛金が安いのは、火災のみの保障だからともいえます。火災保険ではカバーできる災害がカバーできない分安くなっていると考えると、支払うお金が少ないからといって、安いとは言い切れないでしょう。
火災保険・火災共済を選ぶポイント
火災保険や火災共済を選ぶときのポイントは、次のとおりです。
● カバーできる災害、補償(保障)される内容
● 支払う金額(保険料、掛金)
● 被災したときに支払われる金額(保険金、共済金)
保険や共済によって細々とした違いがありますから、いくつか見積もりをした上で比べてみるとよいでしょう。
火災保険か火災共済かといった点でいえば、ここまでも見てきたように、火災保険の方が安心できるといえます。カバーできる災害の幅が広く、その内容を選択できる自由度が高いこと、支払った分だけきちんと保険金が支払われるというのがその理由です。
もし、土地柄、水災の可能性が低く、火災のみの対策で充分で、かつ費用を抑えることを第一に考えるのであれば、火災共済も考慮に入れてみてもよいかもしれません。
火災保険 / 火災共済。本当に必要な備えを検討しよう
火災共済は、火災保険と似た制度ながら、その内容にはさまざまな違いがあります。支払わなければならないお金(掛金)は火災保険に比べて比較的安い傾向にありますが、対応しているのは火災のみで、保険のように水災や日常災害は保障されません。
掛金が安いからお得と安易に判断せず、本当に必要な備えは何なのか、本当にその内容で充分なのかをしっかりと検討した上で選ぶようにしましょう。
このアイデアの監修者
清水みちよ
学生時代にアジア滞在中、現地で感染症を患い生死をさまよう。奇跡的に生還するも保険の大切さを痛感し、卒業後は保険の代理店窓口等で働く。趣味は懲りずにアジアの発展途上国を訪れて刺激をもらうこと。犬好きのアラフォー女子。
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