医療保険でタクシー代は支給される?保障されるもの、されないものを知ろう
病気やケガで入院すると、病院までの交通費がかかります。電車やバスで移動できる状態なら、交通費も安く抑えられるのですが、骨折などの理由で公共交通機関が利用できず、タクシー代がかさむ場合もありますよね。日本国民なら誰もが加入している医療保険(健康保険、国民健康保険など)では、タクシー代は支給されるでしょうか? また、民間の医療保険での扱いはどうなるでしょうか? 通院にかかる費用について確認していきましょう。
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通院に必要なタクシー代は医療保険で支給される?
公的な医療保険(勤務先で加入する健康保険や国民健康保険など)は、病院内で診察を受けるときに使えるだけでなく、ほかにもさまざまな給付を受けることができます。
そのうちの1つが「移送費」の給付です。病気やけがで移動が困難な患者が、医師の指示で一時的・緊急的必要があり、移送された場合は、移送費が現金給付として支給されます。支給を受けられる要件は次の通りです。
・移送の目的である療養が、保険診察として適切であること。
・患者が、療養の原因である病気やけがにより移動が困難であること。
・緊急・その他、やむを得ないこと。
支給額は「最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の旅費に基づいて算定した額の範囲での実費」と定められています。
タクシーを使っての移送が必要であり、やむを得ないと認められた場合には、移送費の支給が受けられる可能性があるということです。移送費は、受け取りたい人が申請しなければ給付されません。また、事前に保険者(健康保険組合など)に相談することや、医師の意見書など必要書類をそろえておかねばならないことに、注意してください。
民間の医療保険は?
民間の医療保険で支給される入院給付金や手術給付金、通院給付金は、「手術1度あたり○○円」「入院1日あたり○○円」という形で給付されますが、その使い道は支給された人の自由です。通院のためのタクシー代として使うこともできますし、他のことに使ってもかまいません。
病院までのタクシー代は節税になることがある?
「医療費を支払うと、医療費控除が受けられる」ことは、多くの人に知られています。どのような費用が医療費控除の対象となるのかを、今一度確認しましょう。
国税庁ホームページ(※1)には「医師等による診療等を受けるための通院費」が医療費控除の対象となると書かれています。そして、「病院に収容されるためのタクシー代(※2)」については、「一般的にはその全ての金額が医療費控除の対象となるわけではありません」としながらも、
・病状からみて急を要する場合(妊婦さんで突然の陣痛が始まった場合など)
・電車、バス等の利用ができない場合
には、その全額が医療費控除の対象となるという見解が示されています。
公共交通機関を利用できないようなケガをしていてタクシーを利用した場合や、子どもが幼い、体が弱いなどの理由で通院にタクシーを使うことを、医師から指示されている場合(指示書などで証明できる場合)も、医療費控除に含まれるでしょう。
●付き添う家族の交通費
子どもや高齢者など、患者を1人で通院させることが危険である場合には、付き添う人の交通費も含めて医療費控除の対象です。ただし、患者本人は入院していて、病院での世話のために家族が通う場合の交通費は、医療費控除の対象とはなりません。
●遠隔地の病院で治療を受ける場合
近隣の病院では治療ができず、どうしても遠隔地の病院まで行かなければならない事情がある場合は、その交通費も医療費控除の対象となります。
●領収書を必ず受け取る
通院のためにタクシーを利用したときは、必ず領収証をもらっておきましょう。タクシーを利用したという証明のために必要となります。タクシーの料金は、公共交通機関を使う場合とは違って、利用のたびに異なる場合もあります。医療費控除の対象となる金額を証明できるように、必ず保管しておきましょう。また、「タクシーを利用せざるを得なかった理由」も、後に確認できるよう書き留めておきましょう。
医療費控除の申請時に困らないために! 交通費の書き方って?
医療費控除を受けるためには「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書とともに提出することが必要です。
確定申告時に提出する「医療費控除の明細書」には、
1. 医療費通知に関する事項
2. 医療費(上記1以外の明細)
の欄がありますが、交通費に関しては2の欄に記入します。
(1)医療を受けた方の氏名:治療を受けた本人の氏名を記入します
(2)病院・薬局などの支払先の名称:JR、私鉄名、○○バスなど
(3)医療費の区分:「その他の医療費」にチェックを入れます
(4)支払った医療費の額:支払った交通費の額を記入します
国税庁が提供している「医療費集計フォーム」は、病院への通院回数が多い人には便利なエクセルの集計フォームです。病院から受け取った領収書の内容や、通院にかかった費用を入力するだけで、医療費控除の明細書に記入すべきデータを、まとめることができます。
また、「確定申告書等作成コーナー」の医療費控除の入力画面では、医療費集計フォームに記入したデータを、直接読み込んで確定申告のためのデータとして利用することができます。筆者自身も医療費集計フォームを利用していますが、確定申告時に病院名や金額を、改めて入力する必要がなくなり、便利です。
医療保険でタクシー代が支給される場合もある
通院にかかるタクシー代は、原則として公的な健康保険から支給を受けることができません。ただし、「医師の指示で一時的・緊急的必要があり、移送された場合」には移送費の支給を受けることも可能です。移送費は、受け取りたい人が申請しなければ、給付されませんので、ご注意下さい。
通院のためにかかった交通費は、医療費控除の対象となり、所得税や住民税の節税につながる場合もあります。ただし、タクシー代に関して医療費控除が認められるかはケースバイケースです。公共交通機関が使えないようなケガをしている場合や、妊婦さんが急な陣痛によりタクシーで移動せざるを得ない場合などに限って、医療費控除の対象となります。
医療費控除を受ける場合は、病院でかかった医療費と通院のための交通費を「医療費控除の明細書」に記入して確定申告時に提出しましょう。
プロフィール
河野陽炎
3級FP技能士資格を持つライター、コラムニストとして、生命保険や医療保険、金融、経済などの執筆実績が多い。次々と発売される商品や、改正の相次ぐ税制、法律が1人の生活者にどう影響を与えるかの視点を大切にする。
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