医療保険は誘発分娩でも使える?費用の相場や出産での医療保険の活用について
出産予定日を過ぎても陣痛が始まらず、なかなか赤ちゃんが、生まれてきてくれないことがあります。予定日から1週間を超えてくると、赤ちゃんや母体に危険が及ぶ心配があるため、帝王切開や、誘発分娩(陣痛誘発)によって出産を行うことが一般的になってきています。
無痛分娩など計画的に出産を行う場合などを除けば、誘発分娩を行うのかは予定日を過ぎるまでわかりません。ただ、誘発分娩となるケースは、みなさんが思っている以上に多いようです。そこで今回は、誘発分娩について、その内容や費用、医療保険が使えるのかといった疑問を解消していきましょう。
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誘発分娩とは?
誘発分娩とは、陣痛促進剤を使って人工的に子宮収縮(陣痛)を促し、出産を進めること。陣痛経過に問題があり、妊娠を継続すると母体や胎児が危険な状態となる可能性が高い場合に実施されます(※無痛分娩など、計画分娩でも誘発分娩が行われますが、陣痛促進剤を投与する誘発分娩にはリスクも伴うため、十分な管理体制の下、本人や家族の同意を得て行われます)。
●誘発分娩が検討される主な原因
・予定日超過(妊娠42週以上):予定日を1週間以上経過した段階で検討されることが多い
・微弱陣痛:陣痛が始まったものの弱く、いつまでも出産に至らない状態
・前期破水:分娩開始前の破水
・妊娠に伴う合併症:妊娠高血圧症候群などで、早期の出産が望ましい場合
陣痛促進剤を投与して、どのくらいで陣痛が始まり、出産までどのくらいかかるのかは、個人差が大きいため、一概にどのくらいかかるとはいえません。早ければ出産まで数時間という方もいれば、24時間以上かかる方もいらっしゃるようです。
また、陣痛促進剤にはリスクもあり、投与量が多ければ、子宮収縮が強くなりすぎる「過強陣痛」が起こることもあります。もし、過強陣痛が起こってしまうと、子宮破裂や圧迫による胎児機能不全などの恐れもあり、陣痛促進剤の投与は母体と胎児の状態を常に確認しながら、慎重に行われます。
また、誘発分娩には陣痛促進剤を使わない方法もあります。
・卵膜剥離:赤ちゃんを包んでいる卵膜を、子宮から少し剥がすことによって、子宮口が開かせるなどして、陣痛を促す方法。
・ラミナリア:乾燥した海藻でできた棒状器具(ラミナリア)を子宮頸管に入れ、ラミナリアが体内の水分で膨張することを利用して、子宮口を開かせる方法。
・メトロイリンテル(バルーン):その形状からバルーンとも呼ばれる、水風船のような器具(メトロイリンテル)を、しぼんだ状態で子宮口に挿入し、中に滅菌水を注入していくことで子宮口を広げる方法。子宮口が少し開き、陣痛が始まっている段階で用いられる。
いずれかの方法で出産まで進むケースもあれば、陣痛促進剤を含めた複数の方法を組み合わせて行われるケースもあります。
誘発分娩の費用は一般的に、自然分娩にプラスして数万円〜20万円かかるのが相場。この費用は出産までの時間や、用いた方法、病院によっても差があり、出産までに時間がかかった場合や、複数の方法を組み合わせた場合に高くなります。
誘発分娩に保険(健康保険・民間の医療保険)は使える?
では、誘発分娩となった場合にかかる費用。健康保険や、民間の医療保険を使うことができるのでしょうか?
健康保険では、妊娠・出産は病気とはみなされず、保険は適用されません。ただし帝王切開など、医師が「疾病として」診察・治療を行った場合には、異常分娩として保険適用されるということになっています。保険が適用されれば、自己負担は3割、高額療養費制度も使えます。
また、民間の医療保険では、健康保険適用の入院や手術を保障対象としているのが一般的であり、異常分娩となれば、保険が下りる可能性が高くなります。
ただし、誘発分娩はというと、「異常分娩とならないための処置」として行わることが多く、その処置によって異常なく出産できれば、全体として自然分娩(正常分娩)とみなされます。そのため、一般的に健康保険は適用されません。
ただし、微弱陣痛や前期破水などが原因で誘発分娩を行った場合、健康保険が適用される可能性があります。それを判断するのは医師であり、医師が「治療」として誘発分娩を行えば、健康保険が適用されます。
民間の医療保険でも、病名がついているケースや、領収書の保険診療欄入院や手術に数字が入っているケースなどでは、異常分娩として給付金が支払われる可能性があります。
ただし、実際に給付金の支払い対象となるかは保険会社によって異なり、同じ保険会社でも、請求時に提出する診断書に記載された病名や、治療内容によって判断されます。微弱陣痛や前期破水を原因とする誘発分娩で給付金が支払われたケースもあれば、支払われなかったケースもあるため、一概に判断することはできません。
下りるかわからない保険を請求するために診断書代を払うのはもったいない、と思うかもしれませんが、もし保険が下りなければ、5,000円程度までは診断書代の実費を返金してくれる保険会社がほとんどです(返金されない保険会社もあるので、給付金の請求書を取り寄せる際に要確認)。
少しでも支払われる可能性があるのであれば、確認という意味でも給付金を請求してみて損はないでしょう(※支払い対象となるかを、請求前に確認できる電話窓口を設けている保険会社もあります)。
誘発分娩以外の帝王切開や切迫早産など、医療保険の保障対象となるものも多い
民間の医療保険では帝王切開をはじめ、切迫早産や鉗子分娩・吸引分娩、双子以上の出産(多胎分娩)など、多くの保険会社が保障の対象としています。
その一方で、誘発分娩は保障されないケースもあります。ただ妊娠・出産にはそのほかにもさまざまなリスクが伴います。これらを含めた備えとして考えれば、医療保険は有効な選択肢ではないでしょうか?
誘発分娩を保障する医療保険も。加入の検討を
保険が使えないと思われがちな誘発分娩ですが、場合によっては保険が下りる可能性も。必ずというわけではないものの、保険が下りる可能性があるということを知っておいて損はないでしょう。
ただし、妊娠がわかってから医療保険に加入しても、ほとんどの保険会社では、その妊娠・出産について保障されません。これから妊娠・出産を望んでいるのであれば、早めの加入を検討しておきましょう。
プロフィール
竹国 弘城
証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナー(FP)として独立。金融商品を販売しない独立系FPとして、企業の利益ではなく相談者の利益を第一に考え、その場しのぎで終わらない、自分のお金の問題に自分自身で対処できるようになるためのコンサルティングを行う。1級FP技能士。
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