わかっちゃいるけど「怒り」がコントロールできない人の心の中

「無意識に部下に強く当たってしまう……」「簡単に怒りの沸点を超えてしまう……」そんな経験はありませんか? ビジネスにおいて、相手の気持ちに寄り添った円滑なコミュニケーションの大切さは誰もが理解していることでしょう。しかし、「そうとわかっていてもうまく感情のコントロールができない」という方も少なくないのではないでしょうか。そこで注目したいのが、心の知能指数と呼ばれるEQ(Emotio nal Intelligence Quotient)。EQとは、自分自身と他者を理解しながら、自分の感情をコントロールすることで、最適な行動を取ることができる力です。この記事では、拙著『心の知能指数を高める習慣』より、EQを高めることで、自分の感情をコントロールしてビジネスや人間関係がうまく回るコツをお伝えします。

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プロコーチが教える「心の知能指数」の高め方

「無意識に部下に強く当たってしまう……」
「簡単に怒りの沸点を超えてしまう……」

 そんな経験はありませんか? ビジネスにおいて、相手の気持ちに寄り添った円滑なコミュニケーションの大切さは誰もが理解していることでしょう。しかし、「そうとわかっていてもうまく感情のコントロールができない」という方も少なくないのではないでしょうか。

 そこで注目したいのが、心の知能指数と呼ばれるEQ(Emotional Intelligence Quotient)。EQとは、自分自身と他者を理解しながら自分の感情をコントロールすることで、最適な行動を取ることができる力です。この記事では、拙著『心の知能指数を高める習慣』から、EQを高めることで自分の感情をコントロールしてビジネスや人間関係がうまく回るコツをお伝えします。

ネガティブ感情は「悪者」ではない

 怒りをはじめとするネガティブな感情というものは、制御できずにそのままにしておくと破壊につながっていきます。一方、破壊が起こるということは、逆にいえばそれだけパワーがあるということです。感情は人間の中にあるとてつもないパワーソースなのです。

 EQという言葉の提唱者である心理学者ダニエル・ゴールマンは、「傑出したリーダーと並のリーダーの相違のほぼ90%は、知的な洞察力ではなく、感情に起因する」と言っています。リーダーが感情の奴隷にならず、破壊のパワーにも成り得る感情を創造のパワーへと変換するEQを持ち得たとき、成功への扉が開いていくのです。

「ネガティブな感情を創造のパワーに変えるというのはどういうことか?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。そこで、テスラやスペースXの創始者であるイーロン・マスクの例でお話します。彼が、ロサンゼルスの自宅からスペースXの本社に向かう30キロほどの道のりの間でひどい事故渋滞で足止めを食らったとき、彼のイライラと怒りはピークを迎えました。これは、個人的なイライラでもあり、現代の交通システムへの社会的義憤でもあります。

 しかし、この出来事は、世界の交通システムの変革をもたらすことに情熱を傾け続けるマスクの心に火をつけました。そして、その7カ月後には、ニューヨークとワシントンDCを29分で結ぶ、地下移動システムの開発許可を政府から得ることに至るのです。ハイパーループというこのシステムは、地下に掘ったチューブ状の空間を、列車が空気抵抗や摩擦がほとんどない状態で移動できるもので、理論的には1000km/h以上のスピードを生み出すことが可能と言われています。

 渋滞の中で味わった怒りが創造の力となり、交通システムに変革をもたらす。これも、ネガティブな感情を創造のパワーに変えている例のひとつです。

まずは自分の感情を「見える化」する

 感情をコントロールするためには、まず自分の感情を「見える化」し、自分を客観視できるようになる必要があります。

 感情を「見える化」する上で最も効果的なことは、「感情を書き出すこと」です。普段、あまり認識もせず出続けていた感情を、「書く」という振り返りによってきちんと認識できるようになります。

・なぜ怒っているのか?
・どう怒っているのか?
・その怒りが自分と周りにどう影響しているのか?
・どんなときに怒りが出ることが多いのか?

など、書き出すことによって詳細が明確化します。

 詳細に書くことができればベターですが、「あまり詳細には書けない」とか「ちゃんと書かなければいけないと思うと、続ける自信がない」という人は、

「今日、第一会議室でセールスイベントの進め方についてDさんと口論になった。いつもこうだ。本当に腹が立つ」

ぐらいの記述でも大丈夫です。後から記述を見ることで、そのときのシーンが回想されるきっかけとなるでしょう。あなたが感情の見える化を始めると、あなた自身の感情についてのデータが、日々あなたの脳にインプットされていきます。

 こうして文字化することによって、自分の心の中が「見える化」していきます。見える化することによって自分の感情に関する理解が深くなると同時に、文字を通して自分を客観的に見ることができます(自分を客観的に見えている状態を「メタ認知」と言います)。

 客観的に見ていると、その感情を出している自分との「切り離し」が起こってきます。切り離しが起こると「自分って、こう感じているのだな」というように、感情をむき出しにしている自分を冷静に見つめる自分が存在するようになっています。このことを毎日行うことによって、切り離しの感覚がどんどんと進んでいきます。

 さらに切り離しの感覚が進むと自分を客観視できるようになり、人によっては「行動する・感情を抱く自分と、それでいいと認める自分の2人がいる」とさえ感じられるようになります〈別図版1参照〉。

図版1 2人の自分(『心の知能指数を高める習慣』より)

アンガーマネジメントができない本当の理由

 一般的にいわれるアンガーマネジメントなどでは、「怒りが出てから6秒間やり過ごす」という方法があります。

 しかし、これができるかどうかには「あること」が関わってきます。

 それは、「切り離し」という土台ができているかどうかです。できていない人にとっては、こういったノウハウは「6秒......。わかっちゃいるけど、どうにもできないなぁ」というジレンマを深めることにもなりかねないのです。

 この切り離しは1回や2回の書き出しでは起こりませんが、繰り返すことによって、確実に進んでいきます。これはゆっくりに見えて、実はEQの向上にとって最速の効果を持つやり方なのです。

筆者の三浦将氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

感情というパワーソースを使いこなそう

 感情は、破壊にも創造にもつながるパワーソースです。ご紹介した方法を実践していただき、感情のパワーをうまく利用することができれば、ビジネスや人間関係がうまく回るようになるはずです。

 

■ 三浦将(みうら・しょうま)
人材育成・組織開発コンサルタント/エグゼクティブコーチ
株式会社チームダイナミクス 代表取締役
 英国立シェフィールド大学大学院修了(MSc : Master of Science 理学修士)。認知心理学、アドラー心理学、コーチングコミュニケーション等を基にした独創的な手法で、リーダーシップ研修、チームビルディング研修、習慣力研修などをはじめ、国内外の企業の人材育成をサポートしている。エグゼクティブコーチとして、企業経営層やオリンピック日本代表アスリートなど、クライアントのさらなるステージアップを次々に実現している。累計30万部を超える習慣力シリーズ『自分を変える習慣力』『相手を変える習慣力』(クロスメディア・パブリッシング)など、著書多数。

 

三浦氏の著書:

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