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二川由夫の世界建築日記 モダニズム住宅の最高峰~チェコ・ブルノ~
GAシリーズの編集長を務める二川由夫氏の特別寄稿第三弾。
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晩夏のチェコ
チェコ第二の都市,ブルノに行く。
首都プラハが華やかな観光都市として世界的に人気があるのに対して,ブルノは一見地味な街であるが,古くからモラビア地方の中心都市として独自の文化を育んできた。街はドイツ,オーストリア文化の影響が色濃く,ウィーンをちょっと地方都市にしたような街並み。近代以降には繊維業を主とした工業が盛んとなり,人々の豊かな暮らしに沿って新しいモダニズムの建築が作られることとなる。
しかしその栄華は第二次大戦のナチス侵攻によって中断されてしまい,戦後,共産主義体制になり,華やかな文化は封印されてしまう。現在は共和国であり,見放されていた名作建築群は90年以降,その価値を見直され,修復,保存活動が進んだ。栄華の時代を偲ぶモダニズムの名作建築が街中に残されている。
世界遺産 トゥーゲントハート邸
今回の目的は近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエが設計したトゥーゲントハート邸の再訪。2001年に世界遺産になった名作住宅建築で,この街に残るモダニズム建築の最高峰である。
二度目の訪問となる今回,一般公開しない丸一日をもらい,再撮影することになった。家の前の道が大規模な工事の真っ最中で,道側全景の撮影はできなかったが,それ以外は完璧に撮影することができた。
前回来たのが1990年,当時住宅はそれまで様々な用途に使われてきて,やっと市の美術館の管轄になり,一般に公開され始めた直後であったが,まだ家具は無く,様々なディテールもオリジナルとは違う有様であった。しかし,その骨格の発散する揺るぎのない美しきオーラ,名建築のみが語りかけてくる「空間の真実」に感激したことは決して忘れることのないことの一つであった。
その後,可能な限りの竣工当時のオリジナルへの修復が行われ(今も続いている),家具や調度品も竣工当時にあったものが調達,復元されている。この住宅の建設コストは当時度外れたもので,パリ郊外に建つル・コルビュジエ設計の名作住宅=サヴォワ邸のさらに数倍といわれている。この戦前の住宅にはなんと冷房設備や電動で開閉する大窓などが備えられていたが,長い間壊れたままになっていた。今回,これらのエポックメイキングな諸設備も完璧に修理,再現されていたのには驚かされた。
広大な庭もよく手入れされ,街中とは思えない緑の様子,当時の大富豪トゥーゲントハート一家の豊かな日常を体験することとなった。
撮影のおわりに
無事に今回の撮影が終わり,街中に沢山あるビアホールの一つにくり出し,小さな祝杯をあげる。自分の仕事とこの名作建築に対して乾杯。
チェコは世界一ビールを飲む国だそうだが,その味に納得,昨今糖質ダイエットやらプリン体の問題に恐れる自分は久しぶりに杯を重ねることになった。ソーセージやハム,グリルした肉料理も大変美味だ。
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