二川由夫の世界建築日記 台中国家歌劇院(オペラハウス)のグランド・オープニング~台風とともに~

GAシリーズの編集長を務める二川由夫氏の特別寄稿第四弾。
10年越しで完成した台湾の最新建築「台中国家歌劇院」の情報を、貴重な写真とともにお届けけします。

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台湾1日目|嵐の前の静けさ

台風が向かっている先の台湾に行く。

台北に着くと快晴,この3日後に起こる大変な様子は全く想像すらできない天気に,撮影のスケジュールをこなしていく。台湾に来るのが初めてのアシスタントと一緒なので夕食はお約束の飲茶レストラン=鼎泰豐 (ディンタイフォン)へ。撮影場所から近いSOGOデパートの地下のお店は本店同様に大混雑で1時間ほど待足されての入店。小籠包をはじめ,一通りの飲茶を食す。新宿の高島屋にもお店はあるが,台北本店の方が美味しいと思う。

初めて来たこのSOGO店,味は本店に近いが,何やら蒸したての強烈な熱さが無い,小籠包の中のスープの温度が少し低いような,蒸し立てがテーブルにすぐ来てないような感じ。それを差し引いても十分満足の夕食。

台湾2日目|台北101へ

やはり天気は下向き,テレビの天気予報が台風が向かっていることを刻々告げている。曇りがち,そしてにわか雨の中撮影をこなす。
空き時間にスタッフを台北名所=台北101に案内。この超高層ビルは台湾の重鎮建築家李祖元さんの設計,判りやすく言ってみれば中国版のポストモダン建築であり,デザインのモチーフは中国の伝統建築から引用されている力強いタワー。李さんは30年ぐらい前からの知り合いだが,彼の一貫した姿勢は,今や中国本土の人々にも共感され,多くの仕事を向こうでも手がけている。

台湾3日目|台風直撃とホテル幽閉

3日目。
ついに台風が台湾直撃。台中に移動する予定は早々に諦めて,ホテルオークラに宿を移す。こういう時はどこにも出かけられないので大きなホテルにいるのが一番,中にレストランも数軒あるし,何より建物が頑丈。15階の部屋の窓を一晩中暴雨風が叩きつける。メインエントランスの大扉は風圧で空いてしまうらしく,長いかんぬき3本で閉められている。

台湾4日目|台中国家歌劇院(オペラハウス)へ

翌日,風が治るも曇天の台北,高鐵=新幹線はまだ運行していないので,バスで台中へ移動する。鉄道で1時間のところ,バスは2時間をかけて台中へ入る。バスは意外と快適。
今回の旅行の主目的である台中国家歌劇院=オペラハウスの撮影。設計は伊東豊雄さん。コンペから実に11年かけてのグランドオープニング。早速現場に行ってみると,周囲の木々はなぎ倒され,建物は吹き飛ばされた緑の葉の破片がびっしりと張り付いていて,オープン2日前とは思えない惨状が広る。その日は絶望的な気持ちで無人の内部を撮影する。

台湾5日目|嵐の後のオペラハウス

オペラハウス2日目,相変わらず天気はすぐれないが,オープニング・イベントに向けて着々と準備,復旧,清掃が進められていることに少し安心する。まず倒れていた木々が立て直され,汚れたリフレクションプールは綺麗に掃除される。着々と仕事がされている。この国の人たちの真面目な姿勢。同時にイベントのためのステージや音響がどんどん設営されて,撮影の障害になってきた。杮落としの演目のゲネプロを撮影する。

オープニング当日,オペラハウスは大勢の人々で賑わい,夕方からはセレモニーが行われ,いよいよグランド・オープン。多くの人で賑わっていた。特別な場所,閉鎖がちなオペラハウスというビルディングタイプを日常に人の集まる場に変えてしまった伊東さんの建築。

オープニングの翌日,何よりも驚いたことは,セレモニーのための様々なもの,仮設ステージやセット,プロジェクションや音響機器が朝には全て撤収されて建物内外は綺麗になっていたこと。晴天の下,撮影することができた。これで任務完了。

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建築書籍/雑誌=GA DOCUMENT, GA HOUSES, GA JAPAN発行人・編集長/評論/写真家。1962年東京都生まれ。早稲田大学理工学部機械工学…

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