【夏水組・坂田夏水さんインタビュー】DIYのトレンドはどうなる?ステップアップのアイデアとコツ

DIYブームが本格化し、プロ顔負けのテクニックでおしゃれにお部屋を演出する人が急増中。その火付け役といわれているのが、リノベーション事業、空間デザインを手がける「夏水組(なつみくみ)」代表の坂田夏水さんです。
その坂田さんに、今回は、リミアユーザーのDIY実例にみるトレンド傾向やDIYでさらにステップアップするためのポイントをお聞きしました!

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住まいは背景として見せる時代

——DIYブームが止まらない勢いですが、ここまで盛り上がった理由を坂田さんはどのようにお考えですか?

坂田夏水さん(以下、坂田さん):これまで日本の居住空間は、「寝起きできれば十分」といった捉え方をされてきたところがあるんじゃないかな、と思うんです。

——確かに、家族だけが使用する閉鎖的な空間だったかもしれません。ちょっと雑多でも他人に見せなければいいかな、という。

坂田さん:ところが最近はインスタグラムをはじめとするSNSの影響もあり、住まいはライフスタイルの“背景”になりました。それによって、見せる前提の家づくりを楽しんでいる方が増えているように感じます。

——「人に見てもらいたい」という思いは、DIYを始めるひとつのきっかけといえそうですね。

坂田さん:きっかけは何であれ、お気に入りの空間で過ごすと心が満たされて、ゆったりしますよね。居住空間も含め、暮らしそのものを充実させたいと願う人が増えているのはとてもステキなことだと思います。

DIYは料理に似ている!?

——リミアのユーザーのみなさんについては、どうでしょう。

坂田さん:実例を拝見していると、まずは既存のものに手を加えて楽しんでいらっしゃる方が多いのかな、と感じました。ラスティック・ハンドメイドのテイストがまさに象徴しています。ポイントは、一気にではなく徐々に手をかけ、ステップアップしていること。これってお料理とよく似ていませんか?

——DIYにお料理との共通点が!?

坂田さん:まずは簡単な料理から始めて、少しずつ難しいものにトライしてみる。おいしくできたらみんなに味わってもらう……。DIYでステキに生まれ変わった部屋にお友だちを招きたい、共有したいという感覚と同じなんだと思います。

——基本のレシピがあって、徐々にアレンジ上手になる。そういえば似ていますね!

本物を“ちょい足し”して次のステップへ

坂田さん:DIYを積み重ねていくと、「もっと楽しみたいのにもう手を加えるところがない」と思ってしまうかもしれませんが、まだまだ楽しめる領域はありますよ。小物に慣れたら、ぜひ壁や天井とステップを進めてみてください。

——面積が広くて大変そうではありますが……。

坂田さん:だからこそ、部屋の印象が大きく変わって楽しいんです。例えば壁を2トーンカラーにしてみるのはいかがでしょう。私が個人的におすすめするのは輸入壁紙。〈Liberty〉や〈William Morris〉、〈Cole&Son〉など、国産のものではなかなか見られない発色の美しさやデザインで、アクセントウォールにぴったり。2トーンにするなら、壁紙とペンキの異なる質感を一つの壁で楽しむのもいいですね。入居時の真っ白な壁紙のままにしておくなんて、もったいないですよ!
輸入壁紙は高いと思われがちですが、壁の一部に使用するならそれほど高額にはなりません。また、国産と違って生地のサイドに“ミミ”がないので、柄合わせがしやすい点も輸入壁紙の特徴です。

——輸入壁紙は高くて手の届かないものかと思っていました。のりが付いていなくて貼るのが難しくはないでしょうか。

坂田さん:上手に貼れるか不安という方は、一度ワークショップに参加してみるといいと思います。

——そういえば、最近はホームセンターなどでも初心者が参加しやすい規模のものが開催されていますね。

坂田さん:基礎を学んだら、いきなり一人でトライするのは大変なので、友だちを招いて一緒に貼ってみましょう。そのお返しに、次は友だちの家の壁紙の張り替えを手伝う……とステップを踏んでいけば、上達しそうじゃないですか? DIYをコミュニケーションツールと捉えれば、アイデアも共有できるし、もっと楽しくなるはず。

——自宅をやり尽くしても“友人の家”というフィールドが残っていました!(笑) 広げていけばみんなの家がおしゃれになっていくって、楽しいです。

家具は1点本物主義でいく!

坂田さん:大人の女性になった証しとして、ジュエリーにこだわったりしませんか? 若いころはチープなアクセサリーをたくさん集めていて、それはそれで似合うし楽しいけれど、もうワンステップ、階段を登りたい時期を迎えますよね。
まさに真珠のように、本物をインテリアに足すのも、次のステップアップに繋がります。輸入壁紙もそうですし、家具でいうなら鏡やチェストなどのアンティークをまずは1点、取り入れるのもステキですね。

——自分なりにDIYで手を加えた空間に“本物”を迎えると、部屋が一気にグレードアップしそうです!

坂田さん:欧米には「ハウスメンテナンス」の文化があり、壁紙の張り替えやペイントは自分たちでする家庭が多いんです。そこには「家を維持する」という意味も含まれています。日本でもそういった感覚でDIYに取り組んでもらえたら、できること、やれることの幅がもっと広がると思うんです。

——愛着のあるマイホームを大事に使うための DIY。視点が変わってチャレンジできることが増えそうです。ところで坂田さんご自身は、現在、どんなテイストに惹かれていますか?

坂田さん:現在は築80年程度の古民家に住んでいるのですが、家のメンテナンスも含めたDIYを楽しんでいます。洋館付加住宅といって、日本家屋に洋館様式が付加された住宅で、少しずつ手を加えながら自分らしい空間を作っているところです。この作業がやめられなくて、私、たびたび引っ越しをしてしまうんです(笑)。
古民家には、新築住宅では味わえない、古いものを活かしながら少しずつ暮らしを作りあげる楽しみがあります。そのときどきの気分やトレンドを取り入れながら、のんびり手がけていくつもりです。


次回の後編では、具体的なインテリアトレンドを坂田さんに解説してもらいます。夏水組とリミアのコラボ企画もあるのでお楽しみに!

(つづく)

【坂田夏水(さかたなつみ)】
1980年生まれ、福岡県出身。株式会社夏水組・代表取締役。武蔵野美術大学建築学科を卒業。08年に夏水組を設立し、リノベーション、空間デザインを手がける。DIY、インテリアアイテムを販売する店舗『Decor Tokyo』も経営。主な著書は『セルフリノベーションの教科書』(誠文堂新光社)、『夏水組のパリ風 手作りインテリア』(メディアファクトリー)など。

●聞き手 ねこりょうこ
●写真 柏木鈴代

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